暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

文庫版オツイチの雰囲気

2005年03月16日 23時40分04秒 | 尊敬人
[まえがき]
 私は今年二月、乙一氏の文庫本を全て読み終えた。本来、その時点でこういった感想文を書いておくべきなのだが、すっかり忘れて、単行本『ZOO』を読み始めていた。そして今、かなり反省してしまっている。
 というのも、『ZOO』を読んでいて、私はとてもビックリしてしまったのだ。文庫本とは明らかに雰囲気が違っている。
 どう違っているのかは次回感想文まで内緒である。「いやらしいヒト」などと言わないでほしい。どうしても気になるようであれば、『ZOO』を手に取って読んでみればいい。おのずと理解できるはずである。
 まぁ、そのようなわけで急遽、この感想文を書く。事情により手元に本がないが、当たり障りない程度に書くから大丈夫である。
 それよりも前回の感想文で「感慨」という言葉を使ってしまったことが悔やまれる。あのとき私はまだ乙一氏と出会ったばかりで、懐かしい要素などみじんもなかった。つまり「感慨」という言葉は不適切だったわけである。日本語がダメな筆者をお許し下さい。
[文庫版オツイチとは]
 前回の感想文では単行本『失はれる物語』収録の書き下ろし『マリアの指』についても語ったが、今回は純粋に文庫本での作品のみを取り扱うことにする。ちなみに、角川スニーカー文庫における『ホラー・アンソロジー』や『ミステリ・アンソロジー〓』にも、氏の作品が収録されているから、この二作品も含めることにする。なお、光文社文庫における『キネマ・キネマ』に、『ZOO』が収録されているようだが、それは次回語りたいので除外する(というか、その本見たことない)。
[全体を通しての雰囲気]
 前回の感想文から考えると、私の「乙一レベル」は桁違いに上昇した。作品を多く読んだ、というのもあるが、インターネットでいろいろ調べてみたりしたのである。
 そのようなことをやっていると、こんな単語が現れる。「黒乙一」、「白乙一」。つまり、なんかちょっといい話系の作品は白乙一、暗黒系の作品は黒乙一、という読者の勝手な分類である。
 まぁたしかに、他に分類のしようがないよなぁ、とは私も思う。しかしよく考えると、その分類もまた曖昧であることに気付く。例えば『暗黒童話』はどうだろうか。設定は明らかにグロい。しかし、ハッピーエンドでちょっといい話、とも言えなくはない。
 私が考えるに、白乙一・黒乙一の分類は、グロいかグロくないか、の一点だと思う。しかしそれもまた曖昧で、例えば『傷』などは、見た目はグロいはずなのに、白乙一なのである。
 結局のところ、私のような新米乙一ファンにはよく分からないのである。そういうわけで、私の感想文ではこの分類法は用いないことにする。
 分類に重きをおかず、ムード・雰囲気といったものにスポットをあてていこうと思う。

 私の定義する「文庫版乙一作品」は、以下の22作品である(初版発行順)。
・夏と花火と私の死体
・優子
・しあわせは子猫のかたち
・失踪HOLIDAY
・Calling You
・傷―KIZ/KIDS―
・華歌
・A MASKED BALL―及びトイレのタバコさんの出現と消失―
・天帝妖狐
・死にぞこないの青
・SEVEN ROOMS
・暗いところで待ち合わせ
・階段
・未来予報 あした、晴れればいい。
・手を握る泥棒の物語
・フィルムの中の少女
・失はれた物語
・石ノ目
・はじめ
・BLUE
・平面いぬ。
・暗黒童話

 これらの作品のほとんどに言えるのは、ハッピーエンドであるということ。無論、『優子』などの悲劇も中にはあるが、全体を包む雰囲気として、淡い幸福が感じられる。
 また、乙一氏の作品に言える特徴として、「ヘンな話」というのがあると思う。角川スニーカー文庫ではその傾向が少なく、集英社においては強い傾向を示しているように思う。スニーカー文庫では「せつなさの達人」、集英社では「ホラー界の新星」と呼ばれるように、出版社ごとに氏の作品の色が違うのは明らかであろう。それはいいとして、氏の作品が、どこかしらヘンであるのは誰もが認める事実である。
 しかしながら、私は読書を始めてまだ一年ほどのヒヨッコであり、またライトノベルばかり読んでいるため、小説のもつ本来の在り方・概念といったものを知らない。つまり、堅苦しい小説っぽい小説を、よく理解していないのである。
 そんな私だから、乙一氏の作品が飛び抜けてヘンだとは思っていない。こういうのもアリでしょアリ、と大いに納得している。頭の固い諸先生方は、もっと柔軟な頭に取り替えるべきではないですか? と思う。
 というのも、氏の日記にこういった記述がある。
『それにしてもすごい先生方がいらっしゃった。いつ怒られるのかとびくびくした』
 これは某有名作家の某賞授賞パーティーの二次会での話である。氏の誇張表現だとは思うが、たしかにオツイチなら怒られそうだな、という気がしてしまった。実際に怒る人などいないだろうが、あまりよく思っていない先生がいらっしゃるような気はする。私の気のせいであってほしいと願うばかりである。そういえば、単行本『ZOO』の帯に、北上次郎先生の言葉が載っていた。
「何なんだこれは。(略)なぜこんなにもヘンな話をこの作家が書くのか(以下略)」というような言葉だった。私は北上次郎先生について全く知識がないのだが、これは驚きすぎだと思う。それこそ私の危惧している、頭の固い先生ではないかと思ってしまった。
 しかし一方で、私はものすごく期待させられている。また氏がものすごいことをしでかしてくれているのではないか、という期待である。おかげで『ZOO』を買ってきてしまった。感想文はこの春公開予定である。
[ひとこと感想文(ネタばれアリ)]
 さて今度は、読了順に感想を述べてみたいと思う。目指すは一作品につきひとことである。
『しあわせは子猫のかたち』
 私はもう三度も読み返してしまった、三度のメシより美味い作品である。
『失踪HOLIDAY』
 おなかがトンネル開通したりカントリーマアムが携帯を潰したりといったメルヘンの中に犯人のアイディアが光る爽快作。
『夏と花火と私の死体』
 書いた本人が「思い入れもなかったし面白いとも思っていなかった」と語る可哀想な作品。
『優子』
 我孫子武丸先生がデビュー作に比べてインパクトが足りないと言っていたが、私はこの作品の展開に圧倒されてしまった。
『A MASKED BALL』
 最も私の爆笑を誘った作品。
『天帝妖狐』
 化け物となってしまったかわいそうな男(の子)の苦悩が味わい深い作品。
『SEVEN ROOMS』
 弟が初めて読んで面白いと言った作品。
『階段』
 少女をいじめていたオヤジが死んでくれるハッピーな作品。
『暗黒童話』
 長ったらしい気もするが、犯人の異能力に興味が尽きない作品。
『死にぞこないの青』
 編集者が「なんでもいいのでなにか書いて下さい」と頼んで乙一氏が「本当になんでもいいのですね」と念を押した末に生まれた、どうでもいい作品。
『未来予報』
 氏のセンスに驚嘆したせつない話。
『手を握る泥棒の物語』
 氏も私もお気に入りのバカな作品。
『フィルムの中の少女』
 全編ひとりの少女の語り、という異色作。
『失はれた物語』
 闇に落つる作品。
『Calling You』
 私が最も号泣した作品で、バケツいっぱい泣きましたという嘘をつきたくなる作品。
『傷』
 氏が間に合わせで書いた未熟児。
『華歌』
 叙述トリックが憎たらしい作品。
『石ノ目』
 鏡や写真に恐怖するやまいにかかってしまう有害作。
『はじめ』
 はじめははじめだからはじめなんです。
『BLUE』
 材料工学系の知識があればラストシーンが鮮明に浮かんでくる作品で、私は工学系の学生だったのでよく理解できた、得した気分、な作品。
『平面いぬ。』
 文庫版の中では最もヘンな作品だと思われるが、いい話だった。
『暗いところで待ち合わせ』
 待ち合わせは暗いところにかぎるなぁ、と思う作品。

 こうして感想を書いてみて思ったが、氏の作品はその内容だけでなく、それを読んだ読者の感想もユニークである。

[あとがき]
 なんとも中身のないお粗末な感想文になってしまった。しかし言いたい放題できたので私は満足である。
 次回取り上げるつもりである『ZOO』という単行本から、五作品が映画化され、大ヒット上映中である(三月十九日~)。
 『ZOO』はもう読了したが、あれを映像作品に仕上げるのは相当に困難だったことと思う。小説からの変更点が多々あるだろうなと勝手に想像している。ちなみに、その真偽は私には永遠に分からないだろうと思われる。私は乙一氏のファンなのであって、映画監督のファンではない。私が知りたいのは小説の世界──氏の作り上げた100%の世界だけなのだ。とか思っているわけではなく、ただ単に金がないのだ。
 氏の作品はどれも味わいがある。そのうち、一つの作品で、つらつらと語りたいものである。
「いや、その前にオマエは、賞を獲れるような作品を書け」
 私の真面目な部分が、そう忠告している。ここはひとつ、そろそろ執筆に専念しようか……

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