月の海

月から地球を見て
      真相にせまる

イン・ザ・ファインダー 35

2020年05月26日 01時58分01秒 | イン・ザ・ファインダー
 もしかしてこのキーホルダーはメモリーかも知れない。
私は直ぐにパソコンを立ち上げてパソコンにキーホルダーを接続した。
写真閲覧ソフトが立ち上がりキーホルダーの画像がパソコンに取り込まれた。
私はその画像を見て今日香に何があったのかがやっと分かってきた。
今日は平日、時計を見ると須藤の勤務時間は終わっている頃だった。
私一人より須藤に相談した方がいいと思い直ぐに須藤に電話をした。
 「直ぐに会えませんか。」
 私の緊張した声に須藤は気付いた様だ。
 「今からですか分かりました。場所はどこで。」
 「会社以外でパソコンがある所はありませんか。」
 「僕のアパートならパソコンはあるけれどシェアハウスで同居人も一緒です。」
 「他にパソコンがある所はありませんか。」
 「ネットカフェなんかは。」
 「ネットカフェ?そうですね。」
 私は須藤の行った事のあるネットカフェの場所を教えてもらった。
もう夜になっていたけど電車に乗って新宿に向かった。
新宿のネットカフェの前には須藤が先に来ていた。
 「こういう所は良く来るんですか。」
 「取材で一度来た事が。」
 「仕事で遅くなった時に泊まったりとか。」
 「編集部の仕事は不規則なので会社に簡易ベッドとか用意してあって
そこで寝てます。」
 「そうなんですか、今日香も泊まったりしたんですか。」
 「たまに。」
 ネットカフェは原則個室なので一部屋でよかったけど
二部屋分の料金を払って入った。
個室のドアを開けると中は狭く椅子は一つしかない。
二人で入るのはきつい感じだった。須藤は私に椅子に座るように言った。
私は椅子に座りパソコンを起動した。須藤はその横に立っていた。
さっそくパソコンに鍵の付いたキーホルダーを接続した。
 「これは今日香が亡くなる前に、お台場の売店の人に預けた物です。」
 「それはこのあいだ見せてもらった鍵ですね。」
 「そうです。この鍵はアクセサリーで今日香は鍵ではなく
キーホルダーのメモリーを預けたのです。」
 私はネットカフェのパソコンに入っていたOSの画像閲覧ソフトを起動した。
そして私達は画像を確認し始めた。
最初の画像は夜のお台場を撮ったものでそれを見た須藤が言った。
 「ライトアップされたレインボーブリッジか綺麗に写っている。」
 「このあたりはお台場から夜景を撮っていた様です。」
 私は何度も画像を送りながら言った。
 「始めの数十枚はお台場の夜景の写真が続いています。」
 「結構良い写真だ。」
 さらに次の画像を出した。
東京湾の芝浦のビル群の灯りの前に松がシルエットになっていた。
それを見た須藤は。
 「松があるのは第三台場だから、これは第三台場から東京湾を撮っている。」
 「そうです。問題なのは次の画像です。」
 私は次の画像を出した。
 「露出が暗くて分かりづらい。」
 須藤が言ったので私は。
 「遠くから撮っているので小さくて分かりにくいけど、
よく見ると一人の男がスーツケースの様な物を引っ張っています。」
 「あぁ、そうだ。」
 そして次の画像を出した。
 「これも小さくて分かりにくいけど、その男が穴を掘っている様に見えます。」
 私がそう言うと須藤が直ぐに言った。
 「そういう事か。これはちょうど中川梓さんが埋まっていた辺りだ。」
 「多分そうです。これが中川さん事件の真相。」
 私はさらに次の画像を出した。今度は須藤が先に言った。
 「これもはっきりは分からないけどスーツケースから遺体らしき物を
取りだしている。ただ、この写真からは遺体かどうかは分からない。」
 「そうですね。ここで今日香はカメラのレンズを望遠レンズに
付け替えた様です。望遠で撮ったのがこの一枚です。」
 私はそう言って次の画像を出した。
男が穴を埋め戻している様な動作の画像を望遠で撮っているため
今迄の画像より拡大されて写っていた。
 「その男は今日香が撮影している事に気が付いたのか、
この写真にはこちらを向いている男の顔が写っています。」
 この男は以前、私が夜、第三台場へ行った時に私を見て
逃げていった男だった。
私はあの時、あの男が何となく中川梓さんを殺した犯人では
ないかと思ったけどやはり当たっていた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿