くまドン旅日記

写真が趣味です。自然の風景、旅行、歴史に興味を持って撮影を続けています。

名所江戸百景265 水鳥が消えた葛西臨海公園(3)

2016年03月31日 22時00分24秒 | 名所江戸百景
こんにちわ、「くまドン」です。

 今回も、前回の江戸川区の葛西海浜公園(葛西臨海公園の海側にある領域)の問題の続きです
 前回は、葛西沖の周辺の土砂が移動させて造られた人工干潟により、毎年の冬には多くのスズガモなどの水鳥が越冬する葛西沖の生態系(自然環境)が破壊された結果、水鳥が激減した話をしました。
 今回は、海底の土砂が浚渫(しゅんせつ、海底の土砂を削る)側の生態系の破壊について話を続けます。

 下の写真は、2年前の平成26年2月に撮影した、西なぎさと陸側の葛西臨海公園の間にある水路の風景で、多くの水鳥がエサを採る為に潜水したり、羽を休めている風景が普通に見られました。


 今年・平成28年2月初めに撮影葛西臨海公園と東西なぎさの間の水路です。以前は、普通に見れた多くの水鳥の姿を、ほとんど見る事ができませんでした。

 船の航行を名目に過度におこなれた土砂の浚渫(海底の土砂の削除)が原因と考えています。

 この問題を考える為に、前回も書きましたが、海底の土砂の浚渫(しゅんせつ)作業が、海域の生態系にどのような影響を与えるのかを書き並べます。

(1)砂地の生態系は、砂の中や表面にいますので、浚渫船が海底の土砂を削り取り、運搬船に積み込むと、砂の中の生態系は、運搬船の中で生き埋めになり、今までの生態系は破壊されてしまいます。土砂を削り取った残された海底は、生態系も何もない不毛の地となってしまいます。

(2)さらに土砂の削り方が大きく、海底が2~3mの窪地(くぼち)になっただけで、その場所は、海水(汽水)の流れが無くなり、生命が全く住めない無酸素層が発生し易くなります。特に夏から秋にかけて、風向きの変化などにより、この無酸素層が周囲に流れだし、青潮(あおしお、名古屋では苦潮)と呼ばれる)現象が発生します。青潮の発生した海域は、酸素が無くなりますので、海底の微生物から魚貝類まで、逃げられない生物は全て死滅するという悲惨な結果になります
 (青潮の問題については、話が大きくなるので、別の回にさせていただきます。
 ただし、東京湾の青潮問題を考える時に、過大な浚渫作業の問題が顕在化してくるのですが)


(3)浚渫船が土砂を運搬してきて、海底に土砂を流し込めば、今までの砂の海底は新しい土砂に埋められて、元の砂の中に住む微生物や貝類、ゴカイ、カニ、シャコなどの生物は生き埋めになり、その場所の生態系は死滅します。その上に流し込んだ土砂には生態系も破壊されていますので、不毛の砂地になってしまいます。

(4)一直線の干潟による潮流の変化や下流部への大量の土砂の流入による二次的被害

 下の写真は、2年前の平成26年2月に撮影した、西なぎさと陸側の葛西臨海公園の間にある水路で行われていた海底の浚渫(土砂の削り取り)作業です。
(絵画調)

 奥の方にある水上バスの乗り場前でも同様の浚渫船が作業をしていますが、この時は、水上バスが通る為に必要な水深を確保する為の浚渫作業と聞いていたので、あまり気にしていませんでした。
 この年だけだろうと思っていたら、翌年も、同様な浚渫作業を行っていました。東京都の計画などは知りませんでしたので、「何故、何年も続けて、同じ場所を浚渫するのか?」不思議に思っていました。
 本来、船を通す為の浚渫であれば、適度な深さと幅を確保できれば問題ないはずです。公共事業を行う為や予算獲得の為に、海底の生態系を破壊していく過度の浚渫は止めて欲しいです。

 下の写真は、2年前の平成26年2月に撮影した、西なぎさの東側先端付近から南の葛西沖に向かって撮影した写真ですが、現在の葛西沖にある人口干潟の付近で作業する浚渫船が写っています。すでに2年前から、周辺の海域の土砂を削って、葛西沖の海底を土砂で埋める計画を進めていたのでしょうか?


 知識も力も不足している「くまドン」ですが、結論としては、前回も話ましたように以下のように考えます。
(1)葛西臨海公園の生態系を壊している、公園周辺部の過大で不要な浚渫工事を止めて欲しい。
(2)過大に土砂を堆積させた沖合の人口干潟を削り、元のなだらかな海底に戻す(逆に削り過ぎて、青潮の発生する溝は作らないで欲しい)と共に、その土砂を過大に削った葛西臨海公園の周辺部に戻して欲しいと思います。
 (公共事業の二度手間で税金のムダですが、基本的に元の工事自体がまともに自然や環境を考えていない甘い計画だったのが最大の問題です。)


 下の地形図は、前回も見せましたが、陸側の葛西臨海公園の東側沖にある黄色の丸印付近に三日月浜はありました。三日月浜周辺は、浅い海域が広がっていた為、多くの生き物がいる為、ここも野鳥観察のポイントでした。
 「国土地理院ホームページ掲載のデジタル標高地形図画像データ(図名等)を使用しました。」

 下の写真は、2年前の平成26年2月に撮影した、葛西臨海公園の東側の岸から撮影した写真です。南側の江戸川河口の方を撮影しています。本来手前の水域には「三日月浜」と呼ばれる浅い海底領域がある為、野鳥が多く見られる場所でした。
 ここも、水路の風景で多くの水鳥がエサを採る為に潜水したり、羽を休めて寝ている風景が普通に見られました。

 下の写真は、3年前の平成25年2月に撮影した、葛西臨海公園の東側の岸から西側の護岸を撮影した写真です。カモ(鴨)だけでなく、シラサギやカモメ、シギ類が多く見られる場所でした。

 2~3年前に、この付近で、昔の事を知っている人から、「この付近は、以前は歩いて海に入れる程、浅い海で、よくアサリを採れた。冬はもっと鳥も多かった」という話を聞きました。すでに、この時には船の航行を名目に三日月浜のような浅瀬は浚渫作業により削られて、壊されていたのかもしれません。

 下の写真は今年・平成28年2月初めの葛西臨海公園の東側から西側を撮影した写真ですが、全く鳥の姿がありませんでした。右奥に見えるのが水上バス乗り場で、左奥が西なぎさです。

 2年以上にわたる浚渫作業の結果、海底が削られて、生態系が壊されていった結果と思います。

 下の写真は、旧江戸川の東京湾に出るすぐ手前の最下流部で、葛西臨海公園の東側の川岸の写真です。後ろに見えているのはJR京葉線と湾岸道路の橋です。ここは、ウミアイサやホオジロガモなどが見れるポイントなのですが、

 毎年、冬になると、江戸川河口でも、下の写真のように多くのハジロカイツブリが、盛んに潜水して、エサのカニやシャコを採る姿を見るとことができましたが、今年・平成28の1月には、ほとんどいない状態でした。工事により、海底の土砂を大量に浚渫した為、エサが無くなったのが原因と考えられます。

 他の野鳥撮影者から聞いた「ここも、年々、鳥の姿が少なくなっていくね・・・」という言葉が、葛西臨海公園を取り巻く水域で行われている環境整備が名目で、公共事業を行う事が目的の環境破壊行為の一端を表しているようでした。
 本来であれば、川から流れてきた土砂が、時間をかけて、ゆっくりと葛西沖に流れ込み、豊かな葛西沖の浅瀬を造りだしてきたのです。

 今年・平成28年の1月の初めに行った時の写真ですが、今年も沖合で浚渫による生態系の破壊がおこなわれているようです。このような海の環境(生態系)を破壊し続ける公共事業は中止して欲しいです。

 今年・平成28年2月の末に、春の大潮で、葛西沖合に一直線に横切るように海面から現れた人口干潟を苦々(にがにが)しく見ていると、浚渫船がなぎさ手前の水路を横切って行きました。
(絵画調)

 今日も、どこかで海底の浚渫作業が生態系を破壊しながら、進められているのかと思うと、「くまドン」は感情的には、気が重かったです・・・・

 3月は葛西臨海公園の状況を確認行く時間はありませんでした。3月のカモ・カイツブリの群れの数が回復したかどうか確認できていませんが、2月末の時点で、例年どおり、北の地へ戻る冬鳥が葛西臨海公園に集まりだしていましたので、自然の回復力で状況が改善されていて欲しいと思います。
 しかし、今回のような自然環境も考えない工事・予算獲得目的の公共事業が二度と行われないことを望みます。
 ただし、河川や海底の土砂の削除による生態系の破壊は、この葛西臨海公園の周辺だけでなく、東京湾全体や日本各地でも行われています。今後は、その方向で話を進めていきます。その前に、今回の葛西臨海公園の話に合わせて、次回は、葛西臨海公園の西側に流れ込む荒川放水路下流部の問題に触れさせていただきます。

 念の為、今回も再度書きますが、
 この問題に対して、「くまドン」と同様に問題を感じても、葛西臨海公園の鳥類園スタッフに苦情を言ってもムダです。鳥類園にいるスタッフほとんどが人の良いボランティアやアルバイト(?)ですし、困らせるだけですので、止めておきましょう。
 また、西なぎさの管理者に苦情を言ってもムダです。止めましょう。公園を管理している人と、公園の整備を計画する人は、同じ役所でも別の組織ですから、どうする事もできません。同じ役所内では、思っている事も自由に言えないでしょう。(ある意味役所の縦割り構造の問題ですが・・)
 このような苦情は、直接、東京都や国土交通省の役所、または、政治に訴えるしかないようです!

 正確に言えば、この公園は、陸側の「葛西海浜公園」は、東京都の建設局が所管)で、海側の「葛西海浜公園」や東京湾は東京都の港湾局が所管になります。さらに、公園の東西に流れている旧江戸川(きゅうえどがわ)、荒川(あらかわ)放水路と中川(なかがわ)放水路は、一級河川ですので、国の国土交通省の管轄になります。
 申し訳ありませんが、河口部における国(川)と東京都(東京湾)の管理の境界部が良く分かりません?
 さらにややこしい事に旧江戸川は東京都と千葉県の境にありますので、川の両側で管理自治体が違うのです。

(青字追記)
 以前、ブログで使用した画像ですが、大田区の東京港野鳥公園のネーチャーセンターに展示されていた航空写真です。ある程度の区分けは分かるかと思いますので、参考程度に載せておきます。(古い写真ですので、現在と異なる所もあるかもしれません。)


 真中の東西なぎさを含む領域が葛西海浜公園です。南にヨットの練習水域があります。

 念のため、誤解しないように書いておきますが、下の写真(2年前に撮影)の右奥に写っている、葛西沖から、さらに遠くの沖合で行われている作業は、中央防波堤外側地区・新海面処分場(要するに東京都のゴミ処分場)の工事ですので、一緒にしないでください。(冬は空気の透明度が高いので、近くに見えて誤解しやすいです。)

 最も、青潮の話をする時に、また話にでてきますが・・・・

 前回までの話は、
 「名所江戸百景263 水鳥が消えた葛西臨海公園(1)」
 「名所江戸百景264 水鳥が消えた葛西臨海公園(2)」
 「名所江戸百景265 水鳥が消えた葛西臨海公園(3)」 (今回分です)

 昨年までの、葛西臨海公園の状況の理解の為に、以前、作成したブログは、以下の通りです。
(1)スズガモやカンムリカイツブリの写真は、
 「名所江戸百景215 冬の葛西臨海公園(4) ダイシャクシギ 写っていました」
 「名所江戸百景155 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(3)」
 「江戸百景154 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(2)」
 「名所江戸百景183 5月の葛西臨海公園(2) 夏羽のカンムリカイツブリ」
(2)シギ・チドリを撮影した時の話は、
 「名所江戸百景216 冬の葛西臨海公園(5) シギ・チドリの群れ」
 「名所江戸百景156 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(4)」

 前回、都心部でも桜の花が咲き始めたと伝えましたが、翌日から暖かい日が続き、あっという間に家の近くでも桜の花が咲き始めました。
 重い話ばかりでしたので、季節外れになりましたが、2月末に撮影した梅の花とメジロの写真を最後に入れておきます。(メジロの移動がすばやく、やっと撮影できた一枚です・・・・・)


 今回は、これで終わりとさせていただきます。

 今月の初め頃に倒れた母親も、順調に回復して、リハビリ病院に移りましたので、ほっとしています。
 なんとか、葛西臨海公園(葛西海浜公園)の問題が3月までに終わりましたが、予想よりも量が多く、ブログ作る時間も少なく、結構きつかったです。

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