くまドン旅日記

写真が趣味です。自然の風景、旅行、歴史に興味を持って撮影を続けています。

名所江戸百景264 水鳥が消えた葛西臨海公園(2)

2016年03月29日 23時27分51秒 | 名所江戸百景
こんにちわ、「くまドン」です。

 今回も、前回の江戸川区の葛西海浜公園(葛西臨海公園の海側にある領域)の問題の続きです
 まず、問題としては、毎年の冬には多くのスズガモやカンムリカイツブリ、ハジロカイツブリなどの水鳥でにぎわうはずの葛西臨海公園の海側エリアですが、今年・平成28年1月頃は、ほとんど水鳥のいない海域に変貌(へんぼう)してしまいました。(2月頃には鳥類の数も増えてきましたが、例年に比べれば少ないです。)
 前回、昨年・平成27年の秋頃に、公共事業で浚渫船(しゅんせつせん)が、葛西海浜公園周辺の川や河口部から削った土砂を大量に移動させた人口干潟が、今回の問題の最大の原因ではないかと、葛西臨海公園の野鳥撮影者の間で話が出ている話をして、「くまドン」も、いくつかの事例から同意見だと言いました。
 
 下の写真の手前にある砂浜と岩の護岸は、葛西海浜公園の「西なぎさ」です。すぐ左に水路を挟んで、「東なぎさ」が見えています。
 東なぎさの護岸の先にスズガモとカンムリカイツブリの群れが横に広がって見えます。(黒い点々ですが)
 1月上旬頃は、わずかな数しかいませんでしたが、2月頃からは、少しずつですが、昔のように水鳥が戻ってきてはいます。(上の写真は、平成28年2月末頃の撮影です)
 そして、2月とはいえ、大潮の干潮(かんちょう)時間帯近くですので、その先に、葛西沖の環境破壊の原因となっている干潟が見えています。これが問題の原因となっている干潟です。
 (満潮時は水面下ですが、春の大潮の時は水面より上に出て干潟になるそうです。)
 昨年・平成27年の秋頃に、公共事業で浚渫船が、葛西海浜公園周辺の川や河口部から削った土砂を大量に移動させたそうです。
 状況から判断して、浚渫による土砂で葛西沖の海底を埋めた事が、葛西沖周辺の生態系を破壊していき、カモ類やカイツブリ類のエサ場やねぐらを奪った事が最大の元凶と考えています。

 以前、このブログで、葛西沖の浅くなだらかに広がる海域は、水中のプランクトンや海底の海草、砂中の微生物や貝類が海の汚れの成分を養分として吸収してきました。そして、ゴカイやカニ、エビ、小魚が生きる為の環境を作りだし、その食物連鎖(しょくもつれんさ)の頂点に大きな魚や鳥類が存在するという、自然の浄化装置だという話をしました。
 この土木作業の目的の為か、安易な考えによるものかは不明ですが、「自然保護」とか「潮干狩り」などのいい加減な名目で造られたのでしょう。この過剰な埋め立てによって、人口干潟によって、葛西沖の生態系は大きく破壊されたのです。

 より広い範囲を撮影したのが、下の写真です。東西のなぎさと水平線の中間に干潟が一直線に続いているのが分かりますでしょうか。完全に東京湾側と葛西臨海公園を分断しています。
(絵画調)

 余談ですが、西なぎさの護岸に多数の撮影者がいますが、今年・平成28年2月頃からは、希少種のヘラサギとクロツラヘラサギが1羽ずついて、2羽一緒に行動して、西なぎさでエサを探すのが話題になっていましたので、その2羽を撮影に来た人達です。

 もう一度、整理して話しますが、
 昔、「名所江戸百景154 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(2)」でも書きましたが、
 下の写真のように、東なぎさには、大潮の干潮時には、大きな干潟が広がっています。

 この場所は、葛西臨海公園の沖には、荒川や旧江戸川から流れ込んだ砂が堆積し、三枚洲(さんまいす)と呼ばれる広大な面積の自然の干潟(ひがた、約64万平方メートル)と浅瀬(あさせ)が広がっています。同時に多くの貝類や微生物により、海水の汚れはきれいになっていきます
 そして、この三枚洲を含めた浅い海が葛西沖になだらかに続いていることが、この海域の多くの魚貝類を育て、野鳥を含めた複雑な生態系を作りだしている源(みなもと)なのです。葛西沖の自然や環境を維持していく上では、必要不可欠の領域なのです。

 昨年までの葛西臨海公園周辺海域の水の流れを地形図に赤い矢印(→)で示しました。
 「くまドン」の記憶では、こんな感じでした。
 「国土地理院ホームページ掲載のデジタル標高地形図画像データ(図名等)を使用しました。」

 葛西臨海公園の東西のなぎさ(渚)は、川の流れに対して発生する沖合の反転流が葛西臨海公園に向かうことを利用して、東西なぎさの砂浜の維持と、なぎさ(渚)や陸側との間にある水路の水が淀まないように、水路に流れが発生するように設計されています。ただし、実際には、潮の満ち引き(干満)により、水路の流れも周期的に方向が変わります。
 江戸川区や葛西臨海公園周辺の地形を縮小した模型に、実際に水を流して、東西なぎさの形状が設計したという話を記憶しています。(葛西臨海公園が平成元年(西暦1989年)ですが、公園自体のレイアウト設計は、さらに昔ですから、現在のようにコンピュータシミュレーションによる解析は未明の時代です。)

 下の写真は、東なぎさと西なぎさの間にある水路の写真ですが、現在はカキ礁(しょう)が発達して、葛西臨海公園の生態系を支える上で重要な役割の一つとなっています。


 この問題を考える為に、海底の土砂の浚渫(しゅんせつ)作業が、海域の生態系にどのような影響を与えるのかを書き並べます

(1)砂地の生態系は、砂の中や表面にいますので、浚渫船が海底の土砂を削り取り、運搬船に積み込むと、砂の中の生態系は、運搬船の中で生き埋めになり、今までの生態系は破壊されてしまいます。土砂を削り取った残された海底は、生態系も何もない不毛の地となってしまいます。

(2)さらに土砂の削り方が大きく、海底が2~3mの窪地(くぼち)になっただけで、その場所は、海水(汽水)の流れが無くなり、生命が全く住めない無酸素層が発生し易くなります。特に夏から秋にかけて、風向きの変化などにより、この無酸素層が周囲に流れだし、青潮(あおしお、名古屋では苦潮)と呼ばれる)現象が発生します。青潮の発生した海域は、酸素が無くなりますので、海底の微生物から魚貝類まで、逃げられない生物は全て死滅するという悲惨な結果になります。(青潮の問題については、話が大きくなるので、別の回にさせていただきます。)

 下の写真は今年・平成28年2月初めに撮影葛西臨海公園と東西なぎさの間の水路です。以前は、この場所にも水鳥の姿が見れたのですが、船の航行目的の浚渫を続けているので、エサを供給する生態系が破壊されていった結果、水鳥の姿を、ほとんど見る事ができませんでした。当然、東なぎさを住処にしているシギ・チドリもエサが激減した為、姿を見る事ができなくなりました。


(3)浚渫船が土砂を運搬してきて、海底に土砂を流し込めば、今までの砂の海底は新しい土砂に埋められて、元の砂の中に住む微生物や貝類、ゴカイ、カニ、シャコなどの生物は生き埋めになり、その場所の生態系は死滅します。その上に流し込んだ土砂には生態系も破壊されていますので、不毛の砂地になってしまいます。

(4)さらに、土砂の移動の結果作られた、一直線の干潟による潮流の変化や下流部への大量の土砂の流入による二次的被害もあるようです。

 この土砂の移動の結果作られた一直線の干潟により、干潮時には水の流れを遮断し、満潮時においても流れが悪くなるので、東西のなぎさ周辺への供給される栄養素や動植物プランクトンの供給を妨げると同時に、海水が同じ場所に滞留する時間が長くなるので、水質悪化の原因となります。
 「国土地理院ホームページ掲載のデジタル標高地形図画像データ(図名等)を使用しました。」

 満潮時間帯でも、この干潟部分だけ浅くなっていれば、水の流れが、かなり妨げられているはずです。
 さらに、悪い事に、これだけ大量の土砂を積み増せば、水の流れや波により、北側(地形図上部)にある東西のなぎさに向かって、大量の土砂が流れ込む現象が発生した事が考えられます。結果的になぎさの所まで、大量の土砂が流れ込み、上記(3)の土砂の埋没による生態系の破壊が行われたと考えれば、なぎさ周辺の生態系は、ほとんど破壊されていた事になります。

 下の写真は、1月の初めに言った時に撮影した東なぎさの写真ですが、冬は余り潮が引かないので、干潟が出ないのにも関わらず、大きく干潟が広がっていました。そのわりにはシラサギらしき鳥が1羽いるだけで、干潟をエサを探す鳥がほとんど見られなかったのです。

 人工的に大量に盛った砂浜から大量の土砂が東なぎさに流れ込んだとすれば、今冬に葛西沖を埋め尽くすかのように飛来したカモ・カイツブリの大群が、1月上旬には、ほとんど見られなかった理由も説明がつきます。大量の土砂に埋めらた不毛の砂浜にエサはありませんし、砂に埋められて、水深が無いので、落ち着いて寝る事もできないのですから、昨年の晩秋に葛西沖を埋め尽くすかのように北から渡ってきた鳥たちは、あきらめて他の場所に移動したと考えることができます。

 それでも、自然には回復力がありますので、2月頃になると、なんとか壊された生態系が少しずつ復活してきて、ある程度のカモやカイツブリが住める所まで戻ってきたと考えるべきでしょう。
 今年2月初めに、葛西臨海公園の「鳥類園Ⅱ」のブログにスズガモが来たと書いてあったのを見て行った時の写真です。なんとか東なぎさにスズガモの群れが戻ってきました。ただし、例年に比べれば、かなり少ないです。例年であれば、テトラのかなり先まで、スズガモの群れ続きます。

 例年より数が少ないのは、水の流れも変ったり、今回の土砂の移動による生態系の破壊が、あまりに大きく、以前のレベルまでは回復できないようです。
 2月末頃になると、大分数が増えてきました。毎年、春が近付くと北へ帰るカモ類やカイツブリ類が集まってくる時期でもあるのですが、それでも例年(このブログの先頭の写真)より鳥の密度(数)が、かなり少ないです。
 さらに、昼間起きているカンムリカイツブリやハジロカイツブリも、昨年のように潜水して、エサを採る行動があまり見られませんでした。さらに沖合の人口砂浜付近には、群れがいないという状態です。


 下の地形図で、赤く塗った領域が、例年、カモ類やカイツブリ類の大群がいるエリアです。鳥類保護区の東なぎさ中心に西なぎさにかけて、馬蹄型(ばていがた)のエリアを形成していました。
 「国土地理院ホームページ掲載のデジタル標高地形図画像データ(図名等)を使用しました。」

 ところが、今年は、公共事業の土木工事(浚渫作業)による土砂の移動を行った結果、沖合のオレンジ色の一直線の干潟が造られました。
 そして、1月上旬に見た時は、ほとんどカモ類とカンムリカイツブリの姿は消え、わずかに西なぎさの内側と、東西なぎさの間にある水路に姿が見えるだけという有様でした。
 2月初め頃は、カモ類のいる場所が、上の地形図の緑の枠のエリアのみに限られていて、例年の大群を見なれていると、とても少なく感じました。この時は、カンムリカイツブリは、ほとんどいませんでした。魚・カニ・シャコなどのエサになるゴカイやエビなどのエサが不足している事や、水の流れが悪くなった事により、動植物プランクトンが減少した可能性が考えられます
 2月の初めに葛西臨海公園の鳥類園のブログでスズガモが、やっと1万羽程度飛来したという記事を見たので、行ってみました。下の写真は沖合も入れた写真ですが、例年であれば、テトラの向こう側から水路の沖合を経由して、鳥の群れが西なぎさに向かって、三日月形に広がっています。

 テトラの向こう側には、スズガモの群れがいますが、沖合に続くはずの群れは全くなく、東西両なぎさの間の水路にもハジロカイツブリが1月同様に少しいただけで、例年に比べ、寂しい限りの状態でした。
 下の写真も2月初め頃の西なぎさの水路の護岸から葛西沖を撮影した写真ですが、全くいませんでした。潮が引いていなかったので、浚渫(土砂の移動)によって造られた人工干潟は、水面の下で見えません。

 例年であれば、この時期、スズガモ(夜行性)が昼寝をし、カンムリカイツブリの泳ぐ姿やハジロカイツブリがエサを採る為に潜水する姿が、大群で見れた場所です。公共工事が目的で、自然の生態系や環境をろくに考えない浅はかな工事の結果、海中の生態系が破壊されて生じた無残な光景です。

 今回は(3)と(4)の影響を中心に話しましたが、長くなりましたので、次回は(1)(2)の海底の土砂を浚渫(削り取られた)方の問題を話します。それから、申し訳ありませんが、急いで作ったので、不備・誤字も多いかと思います。

 結論としては、葛西臨海公園の生態系を壊している、公園周辺部の過大で不要な浚渫工事を止めさせ、過大に土砂を堆積させた沖合の人口干潟を削り、元のなだらかな海底に戻す(逆に削り過ぎて、青潮の発生する溝は作らないで欲しい)と共に、その土砂を過大に削った葛西臨海公園の周辺部に戻して欲しいと思います。
 (公共事業の二度手間で税金のムダですが、基本的に元の工事自体がまともに自然や環境を考えていない甘い計画だったのが最大の問題です。)


 念の為、この問題に対して、「くまドン」と同様に問題を感じても、葛西臨海公園の鳥類園スタッフに苦情を言ってもムダです。鳥類園にいるスタッフほとんどが人の良いボランティアやアルバイト(?)ですし、困らせるだけですので、止めておきましょう。
 また、西なぎさの管理者に苦情を言ってもムダです。止めましょう。公園を管理している人と、公園の整備を計画する人は、同じ役所でも別の組織ですから、どうする事もできません。同じ役所内では、思っている事も自由に言えないでしょう。(ある意味役所の縦割り構造の問題ですが・・)
 このような苦情は、直接、東京都や国土交通省の役所、または、政治に訴えるしかないようです!

 正確に言えば、この公園は、陸側の「葛西海浜公園」は、東京都の建設局が所管)で、海側の「葛西海浜公園」や東京湾は東京都の港湾局が所管になります。さらに、公園の東西に流れている旧江戸川(きゅうえどがわ)、荒川(あらかわ)放水路と中川(なかがわ)放水路は、一級河川ですので、国の国土交通省の管轄になります。
 申し訳ありませんが、河口部における国(川)と東京都(東京湾)の管理の境界部が良く分かりません?
 さらにややこしい事に旧江戸川は東京都と千葉県の境にありますので、川の両側で管理自治体が違うのです。


 「名所江戸百景263 水鳥が消えた葛西臨海公園(1)」
 「名所江戸百景264 水鳥が消えた葛西臨海公園(2)」 (今回分です)
 「名所江戸百景265 水鳥が消えた葛西臨海公園(3)」

 昨年までの、葛西臨海公園の状況の理解の為に、以前、作成したブログは、以下の通りです。
(1)スズガモやカンムリカイツブリの写真は、
 「名所江戸百景215 冬の葛西臨海公園(4) ダイシャクシギ 写っていました」
 「名所江戸百景155 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(3)」
 「江戸百景154 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(2)」
 「名所江戸百景183 5月の葛西臨海公園(2) 夏羽のカンムリカイツブリ」
(2)シギ・チドリを撮影した時の話は、
 「名所江戸百景216 冬の葛西臨海公園(5) シギ・チドリの群れ」
 「名所江戸百景156 第71景 利根川ばらばらまつ 葛西臨海公園(4)」


 今回は、これで終わりとさせていただきます。

 桜の花が、皇居の外濠(市ヶ谷付近)で咲き始めました。1週間もたてば、東京のあちらこちらで、桜の花が満開の姿が見れそうです。
 色々と用事が増えて大変ですが、なんとか、空いた時間にブログ作成をして、やっと、葛西臨海公園(葛西海浜公園)の問題の2回目ができました。長くなったので、2回で終わらず、残りの部分が、3月末までにできるか微妙になってきましたが、努力してみます。

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