こんにちわ、「くまドン」です。
先月の9/10に台風18号、翌日の9/11に台風17号が日本列島に近付いてきて、関東の鬼怒川(きぬがわ)水系では、50年に一度と言われる大洪水になってしまい、関東では30年ぶりに大きな河川での破堤が発生する事態となり、その他にも日本各地に洪水が発生する状況となりました。残念な結果となりました。
「くまドン」も、今回の洪水に関して、治水に関する話をしようと思いましたが、洪水に被害にあったばかりの方もいるので、しばらく待つことにしました。とりあえず、堤防の復旧や排水処理が完了したようなので、ブログを作らせていただきます。
治水関連のブログを作成を考えていた時に、「くまドン」の頭を横切ったのは、被災者は大変だったと思うのですが、「また、今回の洪水など災害による悲しみを利用されて、公共事業などの予算獲得の為に利用されたくない」という気持ちでした。
小さな個人ブログである「くまドン旅日記」ではありますが、ブログの内容が曲解(きょくかい)されて、ダム建設などの自然破壊に利用されるのは、お断りなのです。結構、治水に関する話の内容に悩みました。
「くまドン」は素人とはいえ、治水・利水の歴史を過去から現代まで興味を持っていたので、それなりには治水・利水の知識があります。その内容を長々と話している間に、公共事業の利権に群がる集団が、廃止したダムの建設論や過大な治水政策へ予算要求が出てくるかもしれません。「くまドン」は、このような事態は避けたいので、今回の洪水に関する治水の話を短くまとめて、現在の治水に関する常識の矛盾を攻撃しておく必要があります。この為、被災された方や、必死にダムの放水管理をしていた方には申し訳ありませんが、厳しい言葉も出てる事をご理解ください。
(これとは別に、10日間程、仕事や個人的用事でブログを作る時間が無いという制約もありますが・・)
(1)まず、過去に廃止したダムの建設復活や、公共事業の予算目当ての新規ダム計画・建設には反対します。
「くまドン」はダムの治水・利水の効果と限界があることは、それなりに理解しています。
今回のようにダムの下流側で多量の雨が降れば、ダムの治水に対する効果は小さくなります。
ダムの洪水対策は、放水量の抑止であり、下流側に洪水が発生していも、洪水放水量と呼ばれる水量を下流側に流しています。
鬼怒川下流部で破堤による洪水が発生した時間帯は、上流でも大雨が降り、五十里湖(いかりこ)には1000立方m/秒を超える水量がダムに流入してきています。この時間帯に下流に放流していた洪水放水量は約448立方m/秒(約161万立方m/時間)になります。
さらに、今回のように上流側にも大量の雨が降り、ダムの有効貯水量に対する貯水率が100%に近づくにつれて、放流量の調整能力を無くしていきます。さらに、ダムが満水になれば、放水量の抑止も不可能になり、流入量をそのまま放流することになるわけです。
ダムの洪水調整としては、流入する洪水時の流入量に対して放水量を一定にするのことが基本操作(ある意味マニュアル通り)ですが、当然、下流で洪水が発生しているのだから放水量を減らせないのかという疑問が発生します。今回は、台風が18号・17号が2日連続で日本に近づき、上流の鬼怒川水系の4ダムの貯水余力が少なくなっていたのが災いしています。
「ダム管理の操作担当者が何とかしようと必死にダム操作を行っていた。」のは分かります。ただし、今後のいたずらなダム建設論を防止する為に、あえて、厳しい意見を言わせていただければ、「こんなに大きなダムは要らない」と悪口を言われた大きな湯西川ダムが完成しても、結局、洪水は防ぐ事はできなかった分けです。
下の写真は、栃木県・鬼怒川水系にある五十里湖(いかりこ)です。鬼怒川水系4ダムの一つ五十里ダムによって造られた人造湖です。正面に会津鬼怒川線(あいづきぬがわせん)の鉄橋が架ります。撮影日は平成21年(西暦2009年)10月です。
(2)今回の様な洪水に対しては、上流側のダムの対応としては、事前放流などのダム管理のソフト運用で対応して欲しいと思います。(堤防などのハード部門は短期間に造れませんが、ソフト運用のデータに基づくマニュアルなどが整えば、翌年からの対応も可能です。)
事前放流により貯水量に余裕を持たせ、下流側に洪水が発生する可能性が高くなった場合に、その放水量の余裕分を、下流部が危険な状態になった時のダム洪水放水量減少に使用できるようにして欲しいと思います。
(必要な場合は、洪水操作のマニュアル改善や法令改善を行う。「くまドン」も変な事を言いますが、ダム管理者もマニュアルや操作許可がなければ、勝手な操作はできないでしょう。逆に改悪はお断りします。)
この事前放流や洪水放水量抑止のソフト運用を可能にするのは、最近の気象予報の精度上昇です。
(a)台風進路の早期予測と制度向上、さらに前線刺激による日本各地の前線の動きの予測
(b)雨雲の発生・移動の計算による日本各地の長時間にわたる雨量予測の精度向上
となります。
(c)ダムから放流しても、すぐ海に流れ出す分けではありませんので、関東の鬼怒川水系では台風が来る前の3~4日程前に事前放流しておく必要があるでしょう。上流と下流の雨のピーク時間帯が予測できれば、余裕のできた事前放水量を、有効に洪水放水量の減少に役立てることができるでしょう。(海まで流れる日数は水系により異なります。)
ただし、「くまドン」は、かなり離れた愛知県に上陸した台風18号と、1日遅れで日本の東海上を離れて通過する台風17号の組み合わせが、ここまで関東に大雨を降らせるとは思っていなかったです(初めて見るパターンです)。
ここで、ダムは治水だけでなく、利水(都市部の水道水、農業用水、工業用水)や発電の役割もありますので、7月~8月は毎日多量の水を計画的に放水する必要がありますので、水不足にならないように不必要に貯水量を減らせないという問題があります。
今年・平成27年は雨量が豊富で、渇水期(かっすいき)にあたる8月も全く貯水量が減らず、水が夏季制限貯水量の90%程度で安定的に貯水していました。(ある意味マニュアル通りです。そして、台風18号・17号の台風2個分の雨をギリギリで貯水できたも事実ですし、下流に洪水放水量を流し続けざるをえなかったのも事実です。そして、ダムが増えても根本的問題は変わりません。)
毎年、8月のお盆を過ぎると、電力発電需要のピークが過ぎ、9月5日頃になると田んぼの稲の穂が実り、田んぼへ農業用水量が不要となりますので、一日に必要な水需要が急に減少して行きます。
つまり、平成27年のように豊水の年は、この時期のダムの夏季制限容量に対して、かなりの余裕があるのです。
(一応、鬼怒川水系も8月後半から9月の間は夏季制限容量が960万立方m程減らしているのですが)
この事を考えると、8月後半から9月の台風シーズンには、台風の進路が早めに分かれば、事前放流で貯水容量に余裕を発生させる判断が比較的楽にできると思います。
逆に、6月~7月の梅雨時(台風による前線活発化→台風襲来)は、夏休期間の渇水対策で、不要に貯水量を減らせないので、判断が難しい所があります。
(3)治水対策などの災害対策は長期計画で、限られた予算を計画的に使って行くのが基本です。
川沿いにあった太陽光発電設備の設置で、自然堤防が3mも削られて、川の水が越流する原因になったのは、問題外にひどいですが、今後は似たような問題は起きて欲しくないです。
今回、破堤した鬼怒川の堤防箇所は、「10年に1回レベル」の洪水に対応する為の工事の為、用地買収の段階で工事は未着手とのことでした。新聞のニュースによると、「全国の河川のうち、治水工事が整備目標に達している事例は「ほぼない」(国交省)といい、整備の優先順位に頭を悩ませている」とのことです。
ここで少し冷静に考えて欲しいのですが、今回の堤防破堤箇所は、「平成24年に他の地域で発生した調査時には補強対象にならず、平成26年の調査で「10年に1回レベル」への備えが必要な区域となった」ということは、工事対象個所は調査のたびに増え続けるということです。さらに、堤防が古くなると補修が必要になってきます。
つまり、どんなに整備を進めても、治水工事が整備目標の100%達することは無いだろうということです。
さらに、厳しい事を言えば、10年に1回レベルの堤防があっても、30年に1回の洪水が起きれば対応できないのも事実です。
それでも、今回の「50年に1回水害」と呼ばれた鬼怒川の洪水で、前回の「150年に1回の水害」と呼ばれた昭和61年(西暦1986年)の洪水で堤防が決壊した小貝川(こかいがわ)が破堤しなかったのは、29年間という長期間の治水対策の結果とも言えます。
(どうやって「○○年に1回」が決まるのか基準が良く分からない所がありますが・・・)
(4)渡良瀬遊水地や利根川・鬼怒川合流点にある調整池は、今回のように関東平野部に大雨をもたらした洪水に対して効力を発揮しましたが、用地取得などの問題があるので、環境にも配慮しながら、長期的視点で整備して欲しいです。
今回の洪水で破堤した鬼怒川の上流部でも、調整池の計画があるのですが、「被災したばかりの地権者の所が困っている所に、交渉担当の役人がなんとかしなければと思ったのか、いきなり用地取得の話を持って行って、怒られた。」というニュースもありました。
それから、利根川・鬼怒川合流点にある稲戸井の調整池の容積拡大は自然保護の視点だけでなく、地面掘り下げによる湿地帯化すると、寄生虫などの発生源になる可能性があるので、止めて欲しいのです。さらに下流部に調整池を造る場合も、同様の理由により無理して湿地帯を作らないで欲しいです、
(5)ここでも厳しい事を言って、申し訳ないのですが、自治体側の洪水対策も堤防などのハード面だけに頼らず、洪水に対する平時の対応や避難対策を検討して欲しいと思います。
日本は台風や集中豪雨による洪水の多い国ですから、長い年月をかけて治水能力を整備してきました。
結果として、内水氾濫(ないすいはんらん、堤防内で水があふれる)を除けば、「30年ぶり破堤」という言葉の通り、長い年月大きな水害も無く、安全だった地域も多いかと思います。
今回の洪水では、避難所自体が水害の場合は使用不可の場所も多かったです。
10年に1度の水害に備える堤防があっても、50年に一度、100年に一度、想定外(400年に一度)の水害では被害を受けてしまうでしょう。それにも関わらず、水害の被害の大きい地域に無防備な住宅を建てて、水害時の避難箇所も避難ルートもなければ、どうすることもできないのも現実です。
極端な例ですが、下の写真は、岐阜県・海津市の木曽三川(きそさんせん)公園センターにあった輪中(わじゅう)の農家の水屋(みずや)の写真です。
周囲が低地なので、家の大事なものを高い場所に置いて水害から護るために造られた小屋です。
【ダムと遊水地の補足説明】
今回の大雨で五十里ダムの貯水量は、9/10 12:00時点で、3442万立方mまで上昇しました。
この時点で、五十里ダムの有効貯水量は4600万立方mですから、有効貯水量約75%に達したことになります。(夏季制限容量1120万立方mは軽く超えていますが、有効貯水量との差分は、洪水対策用ですから、この点は問題は無いです。)
この時間帯に五十里ダムに流入する水量は約442立方m/秒となり、ピーク時に五十里ダム下流に流していた洪水放水量約448立方m/秒を下回った為、下流への放流量も段階的に減らすことができたようです。
五十里湖には9/9 22:10から翌9/10 6:20までの間、1000立方m/秒(約360万立方m/時間)を上回る水がダムに流入しています。流入量のピークは、五十里湖の平均雨量が0mmとなった4:20の約1419立方m/秒です。この間に下流に放流していた洪水放水量は約448立方m/秒(約161万立方m/時間)に固定しています。
厳しい話ですが、この事は、ダムの洪水対策効果と限界を両面を示しています。
下の写真は、道の駅の「湯西川」の写真です。撮影当時は、湯西川ダムが完成していなかったので、代わりに載せています。
(1)9/9から9/10の2日間で、五十里ダムだけで約3000万立方mもの水量を貯水し、上流にある湯西川ダムも約2450万立方mの貯水分も併せて、洪水を抑制した。
(2)洪水のピーク(下流部で堤防の決壊・越流が発生)の時間帯でも、下流向かって洪水放水量・約448立方m/秒(約161万立方m/時間)を放水していた。
つまり、下流側で破堤や越水が発生しても、完全には水を止められない。
湯西川ダムも貯水量が有効貯水量に近づくにつれて、下流の五十里ダムへの放水量が増し、最大約90立方m/秒(約32万立方m/時間)の放水を行っていた。
(3)五十里ダムの貯水量がピーク段階でも有効貯水量約25%(約1100万立方m)を余裕を残していた。
雨のピークは過ぎても、その後の降雨量が予測できない側面もあるが、下流側への放水抑制に使用できた可能性も考えられる。
ただし、上流の湯西川ダムの有効貯水量は約94%に達し、約6%(約435万立方m)の余力しかなくなっていたが、雨のピークが過ぎて、ダムの流入量が下流の五十里ダムへの洪水放水量(約92立方m/秒)を下回るようになった。
(4)逆に、五十里ダムが満水(有効貯水量100%)になった場合は、洪水放水量を超える大きな水量が流入して生きた場合は、そのまま同量の水量を下流に放流せざるえなくなる。
(正確には五十里ダムの総貯水容量は5500万立方mですから、ダムを越流するまでは900万立方mの余裕があります。湯西川ダムの総貯水容量は7500万立方mで、有効貯水量との差は300万立方m)
(5)鬼怒川水系の4ダムは、水系に対して2並列・2直列の組み合わせになっている為、今回の台風2個分の水量をなんとか洪水放水量の範囲内で貯水できたが、もし、水系に対して4並列であった場合は、満水になったダムが流入した水量を、そのまま放水する為、ダム下流部の被害が甚大になっていた。
(6)実際のダムの洪水調整量は、(ダムの有効貯水量-その時点のダムの貯水量)となる為、ダムの調整能力には限界がある。(ダムは夏場の利水目的もあるので、不要に低く設定できません。)
台風が来る前の9/9 0:00時点での洪水貯水能力は以下の通りです。
五十里ダム :(4600万立方m-543万立方m)=4057万立方m
湯西川ダム :(7200万立方m-3974万立方m)=3226万立方m
川治ダム :(7600万立方m-3776万立方m)=3824万立方m
川俣ダム :(7310万立方m-4586万立方m)=2724万立方m
夏季洪水対策として、夏季制限容量を低くしている。五十里ダムを除けば、有効貯水量の半分以下です。
鬼怒川水系の隣にある利根川水系の渡良瀬遊水池(わたらせゆうすいち、有効治水容量=1億7068万立方m)は、普段は水が流れ込まない第一調整池まで、渡良瀬川水系からの水が背割堤(調整池に水を流し込む為に、わざと低くした堤防)を通して流れ込んて満水だそうです。
渡良瀬遊水池の堤防上にある「道の駅きたかわべ」の方に聞いた話では、「渡良瀬遊水池の第一調整池は、大きな台風が2連続して大雨を降らせないと第一調整池には水が流れ込まないので、2~3年に一度ぐらいしかない」と聞いたことがあります。
(この時に渡良瀬遊水池に行った時の写真は無かったので困りました・・・・・)
利根川と鬼怒川の合流点にも、両河川からの水の合流による滞留を防ぐ為に、田中・菅生・稲戸井の3調整池(有効治水容量=1億0840万立方m)がありますが、こちらも調整池に流入したそうです。他の方のブログによれば、5年ぶりの流入だそうです。(普段は農地やゴルフ場に使用しているので、相当危険な状態になるまでは水を入れない場所です。稲戸井の調整池はゴルフ場の除く場所で、そこにある木や土などの自然を排除して容積を増やそうとしたので、自然保護と衝突しているみたいです。今回の洪水が乱開発に利用されない事を祈りますが・・・)
渡良瀬遊水池は、利根川水系最大の貯水量を持つ八木沢ダム(やぎざわダム、1億7580万立方m)と同容量、
田中・菅生・稲戸井・3調整池の合計は鬼怒川水系の湯西川ダム(ゆにしがわダム、7200万立法m)より大きいです。しかも、実際のダムの治水容量は(有効貯水容量-洪水調整前の貯水量)しかありませんので、この2つの遊水池や調整池は中流部の洪水緩和にかなり貢献したようです。
今回は、災害を利用しての公共事業予算拡大を見るのが嫌になり、治水関係者に厳しい言葉となってしまいましたが、今回の水害ではダム管理者などは洪水抑制に努力していたと考えていますし、河川行政はムダなダム予算を削り、比較的限られた予算で長期計画で事業を続けている方です。(甘い事を言うと、ダム(コンクリート)行政復活になるので、注意しています。)
「くまドン」は、「消費税増税反対。8%にしたのもダメで、5%に戻せ!国民に負担を押しつける法人税減税反対です!」が以前からの主張で、今も変わりありません。最近では、消費税増税をごまかして行う為の変な税制案を出して、国民から叩かれて当然かと思います。
被災者や弱者を前面に出して、予算獲得や国民の税金の使用に走る行為も、目立ちます!
インフラ関係では、道路と防潮堤関係の予算の使い方がひどいです。東日本大震災の被害を理由にして、過大な道路工事が全国で行われるようになってしまいました。実際には、それまで税金のムダ使いとして、道路工事予算が抑えられていたのを、「震災対策で道路が必要だ!」と勝手な理屈で、日本全国に道路を造り続けているのですが、増やす前の道路工事予算に戻してほしいですね。
高速道路の建設も不採算路線を過大に建設するのも止めて欲しいし、収益増大目当てに都市部の高速道路代を値上げもお断りです。過大な道路工事の為に首都高速道路や都市近郊の高速道路の料金をあてにしないでください。圏央道の料金値下げ・首都高速の値上げをしなくても、渋滞していたら、時間(賃金)の節約で、自然に迂回しますので、余計な迷惑です!
今回は、これで終わりとさせていただきます。
脱線続きの「くまドン旅日記」ですが、正直、政治の悪口ばかりで書いているので、ブログ作るのが嫌になってきました。(見ている方も、嫌になるかもしれませんが・・・・)
「くまドン」は10日間程不在となりますので、しばらくブログの更新はございません。
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先月の9/10に台風18号、翌日の9/11に台風17号が日本列島に近付いてきて、関東の鬼怒川(きぬがわ)水系では、50年に一度と言われる大洪水になってしまい、関東では30年ぶりに大きな河川での破堤が発生する事態となり、その他にも日本各地に洪水が発生する状況となりました。残念な結果となりました。
「くまドン」も、今回の洪水に関して、治水に関する話をしようと思いましたが、洪水に被害にあったばかりの方もいるので、しばらく待つことにしました。とりあえず、堤防の復旧や排水処理が完了したようなので、ブログを作らせていただきます。
治水関連のブログを作成を考えていた時に、「くまドン」の頭を横切ったのは、被災者は大変だったと思うのですが、「また、今回の洪水など災害による悲しみを利用されて、公共事業などの予算獲得の為に利用されたくない」という気持ちでした。
小さな個人ブログである「くまドン旅日記」ではありますが、ブログの内容が曲解(きょくかい)されて、ダム建設などの自然破壊に利用されるのは、お断りなのです。結構、治水に関する話の内容に悩みました。
「くまドン」は素人とはいえ、治水・利水の歴史を過去から現代まで興味を持っていたので、それなりには治水・利水の知識があります。その内容を長々と話している間に、公共事業の利権に群がる集団が、廃止したダムの建設論や過大な治水政策へ予算要求が出てくるかもしれません。「くまドン」は、このような事態は避けたいので、今回の洪水に関する治水の話を短くまとめて、現在の治水に関する常識の矛盾を攻撃しておく必要があります。この為、被災された方や、必死にダムの放水管理をしていた方には申し訳ありませんが、厳しい言葉も出てる事をご理解ください。
(これとは別に、10日間程、仕事や個人的用事でブログを作る時間が無いという制約もありますが・・)
(1)まず、過去に廃止したダムの建設復活や、公共事業の予算目当ての新規ダム計画・建設には反対します。
「くまドン」はダムの治水・利水の効果と限界があることは、それなりに理解しています。
今回のようにダムの下流側で多量の雨が降れば、ダムの治水に対する効果は小さくなります。
ダムの洪水対策は、放水量の抑止であり、下流側に洪水が発生していも、洪水放水量と呼ばれる水量を下流側に流しています。
鬼怒川下流部で破堤による洪水が発生した時間帯は、上流でも大雨が降り、五十里湖(いかりこ)には1000立方m/秒を超える水量がダムに流入してきています。この時間帯に下流に放流していた洪水放水量は約448立方m/秒(約161万立方m/時間)になります。
さらに、今回のように上流側にも大量の雨が降り、ダムの有効貯水量に対する貯水率が100%に近づくにつれて、放流量の調整能力を無くしていきます。さらに、ダムが満水になれば、放水量の抑止も不可能になり、流入量をそのまま放流することになるわけです。
ダムの洪水調整としては、流入する洪水時の流入量に対して放水量を一定にするのことが基本操作(ある意味マニュアル通り)ですが、当然、下流で洪水が発生しているのだから放水量を減らせないのかという疑問が発生します。今回は、台風が18号・17号が2日連続で日本に近づき、上流の鬼怒川水系の4ダムの貯水余力が少なくなっていたのが災いしています。
「ダム管理の操作担当者が何とかしようと必死にダム操作を行っていた。」のは分かります。ただし、今後のいたずらなダム建設論を防止する為に、あえて、厳しい意見を言わせていただければ、「こんなに大きなダムは要らない」と悪口を言われた大きな湯西川ダムが完成しても、結局、洪水は防ぐ事はできなかった分けです。
下の写真は、栃木県・鬼怒川水系にある五十里湖(いかりこ)です。鬼怒川水系4ダムの一つ五十里ダムによって造られた人造湖です。正面に会津鬼怒川線(あいづきぬがわせん)の鉄橋が架ります。撮影日は平成21年(西暦2009年)10月です。
(2)今回の様な洪水に対しては、上流側のダムの対応としては、事前放流などのダム管理のソフト運用で対応して欲しいと思います。(堤防などのハード部門は短期間に造れませんが、ソフト運用のデータに基づくマニュアルなどが整えば、翌年からの対応も可能です。)
事前放流により貯水量に余裕を持たせ、下流側に洪水が発生する可能性が高くなった場合に、その放水量の余裕分を、下流部が危険な状態になった時のダム洪水放水量減少に使用できるようにして欲しいと思います。
(必要な場合は、洪水操作のマニュアル改善や法令改善を行う。「くまドン」も変な事を言いますが、ダム管理者もマニュアルや操作許可がなければ、勝手な操作はできないでしょう。逆に改悪はお断りします。)
この事前放流や洪水放水量抑止のソフト運用を可能にするのは、最近の気象予報の精度上昇です。
(a)台風進路の早期予測と制度向上、さらに前線刺激による日本各地の前線の動きの予測
(b)雨雲の発生・移動の計算による日本各地の長時間にわたる雨量予測の精度向上
となります。
(c)ダムから放流しても、すぐ海に流れ出す分けではありませんので、関東の鬼怒川水系では台風が来る前の3~4日程前に事前放流しておく必要があるでしょう。上流と下流の雨のピーク時間帯が予測できれば、余裕のできた事前放水量を、有効に洪水放水量の減少に役立てることができるでしょう。(海まで流れる日数は水系により異なります。)
ただし、「くまドン」は、かなり離れた愛知県に上陸した台風18号と、1日遅れで日本の東海上を離れて通過する台風17号の組み合わせが、ここまで関東に大雨を降らせるとは思っていなかったです(初めて見るパターンです)。
ここで、ダムは治水だけでなく、利水(都市部の水道水、農業用水、工業用水)や発電の役割もありますので、7月~8月は毎日多量の水を計画的に放水する必要がありますので、水不足にならないように不必要に貯水量を減らせないという問題があります。
今年・平成27年は雨量が豊富で、渇水期(かっすいき)にあたる8月も全く貯水量が減らず、水が夏季制限貯水量の90%程度で安定的に貯水していました。(ある意味マニュアル通りです。そして、台風18号・17号の台風2個分の雨をギリギリで貯水できたも事実ですし、下流に洪水放水量を流し続けざるをえなかったのも事実です。そして、ダムが増えても根本的問題は変わりません。)
毎年、8月のお盆を過ぎると、電力発電需要のピークが過ぎ、9月5日頃になると田んぼの稲の穂が実り、田んぼへ農業用水量が不要となりますので、一日に必要な水需要が急に減少して行きます。
つまり、平成27年のように豊水の年は、この時期のダムの夏季制限容量に対して、かなりの余裕があるのです。
(一応、鬼怒川水系も8月後半から9月の間は夏季制限容量が960万立方m程減らしているのですが)
この事を考えると、8月後半から9月の台風シーズンには、台風の進路が早めに分かれば、事前放流で貯水容量に余裕を発生させる判断が比較的楽にできると思います。
逆に、6月~7月の梅雨時(台風による前線活発化→台風襲来)は、夏休期間の渇水対策で、不要に貯水量を減らせないので、判断が難しい所があります。
(3)治水対策などの災害対策は長期計画で、限られた予算を計画的に使って行くのが基本です。
川沿いにあった太陽光発電設備の設置で、自然堤防が3mも削られて、川の水が越流する原因になったのは、問題外にひどいですが、今後は似たような問題は起きて欲しくないです。
今回、破堤した鬼怒川の堤防箇所は、「10年に1回レベル」の洪水に対応する為の工事の為、用地買収の段階で工事は未着手とのことでした。新聞のニュースによると、「全国の河川のうち、治水工事が整備目標に達している事例は「ほぼない」(国交省)といい、整備の優先順位に頭を悩ませている」とのことです。
ここで少し冷静に考えて欲しいのですが、今回の堤防破堤箇所は、「平成24年に他の地域で発生した調査時には補強対象にならず、平成26年の調査で「10年に1回レベル」への備えが必要な区域となった」ということは、工事対象個所は調査のたびに増え続けるということです。さらに、堤防が古くなると補修が必要になってきます。
つまり、どんなに整備を進めても、治水工事が整備目標の100%達することは無いだろうということです。
さらに、厳しい事を言えば、10年に1回レベルの堤防があっても、30年に1回の洪水が起きれば対応できないのも事実です。
それでも、今回の「50年に1回水害」と呼ばれた鬼怒川の洪水で、前回の「150年に1回の水害」と呼ばれた昭和61年(西暦1986年)の洪水で堤防が決壊した小貝川(こかいがわ)が破堤しなかったのは、29年間という長期間の治水対策の結果とも言えます。
(どうやって「○○年に1回」が決まるのか基準が良く分からない所がありますが・・・)
(4)渡良瀬遊水地や利根川・鬼怒川合流点にある調整池は、今回のように関東平野部に大雨をもたらした洪水に対して効力を発揮しましたが、用地取得などの問題があるので、環境にも配慮しながら、長期的視点で整備して欲しいです。
今回の洪水で破堤した鬼怒川の上流部でも、調整池の計画があるのですが、「被災したばかりの地権者の所が困っている所に、交渉担当の役人がなんとかしなければと思ったのか、いきなり用地取得の話を持って行って、怒られた。」というニュースもありました。
それから、利根川・鬼怒川合流点にある稲戸井の調整池の容積拡大は自然保護の視点だけでなく、地面掘り下げによる湿地帯化すると、寄生虫などの発生源になる可能性があるので、止めて欲しいのです。さらに下流部に調整池を造る場合も、同様の理由により無理して湿地帯を作らないで欲しいです、
(5)ここでも厳しい事を言って、申し訳ないのですが、自治体側の洪水対策も堤防などのハード面だけに頼らず、洪水に対する平時の対応や避難対策を検討して欲しいと思います。
日本は台風や集中豪雨による洪水の多い国ですから、長い年月をかけて治水能力を整備してきました。
結果として、内水氾濫(ないすいはんらん、堤防内で水があふれる)を除けば、「30年ぶり破堤」という言葉の通り、長い年月大きな水害も無く、安全だった地域も多いかと思います。
今回の洪水では、避難所自体が水害の場合は使用不可の場所も多かったです。
10年に1度の水害に備える堤防があっても、50年に一度、100年に一度、想定外(400年に一度)の水害では被害を受けてしまうでしょう。それにも関わらず、水害の被害の大きい地域に無防備な住宅を建てて、水害時の避難箇所も避難ルートもなければ、どうすることもできないのも現実です。
極端な例ですが、下の写真は、岐阜県・海津市の木曽三川(きそさんせん)公園センターにあった輪中(わじゅう)の農家の水屋(みずや)の写真です。
周囲が低地なので、家の大事なものを高い場所に置いて水害から護るために造られた小屋です。
【ダムと遊水地の補足説明】
今回の大雨で五十里ダムの貯水量は、9/10 12:00時点で、3442万立方mまで上昇しました。
この時点で、五十里ダムの有効貯水量は4600万立方mですから、有効貯水量約75%に達したことになります。(夏季制限容量1120万立方mは軽く超えていますが、有効貯水量との差分は、洪水対策用ですから、この点は問題は無いです。)
この時間帯に五十里ダムに流入する水量は約442立方m/秒となり、ピーク時に五十里ダム下流に流していた洪水放水量約448立方m/秒を下回った為、下流への放流量も段階的に減らすことができたようです。
五十里湖には9/9 22:10から翌9/10 6:20までの間、1000立方m/秒(約360万立方m/時間)を上回る水がダムに流入しています。流入量のピークは、五十里湖の平均雨量が0mmとなった4:20の約1419立方m/秒です。この間に下流に放流していた洪水放水量は約448立方m/秒(約161万立方m/時間)に固定しています。
厳しい話ですが、この事は、ダムの洪水対策効果と限界を両面を示しています。
下の写真は、道の駅の「湯西川」の写真です。撮影当時は、湯西川ダムが完成していなかったので、代わりに載せています。
(1)9/9から9/10の2日間で、五十里ダムだけで約3000万立方mもの水量を貯水し、上流にある湯西川ダムも約2450万立方mの貯水分も併せて、洪水を抑制した。
(2)洪水のピーク(下流部で堤防の決壊・越流が発生)の時間帯でも、下流向かって洪水放水量・約448立方m/秒(約161万立方m/時間)を放水していた。
つまり、下流側で破堤や越水が発生しても、完全には水を止められない。
湯西川ダムも貯水量が有効貯水量に近づくにつれて、下流の五十里ダムへの放水量が増し、最大約90立方m/秒(約32万立方m/時間)の放水を行っていた。
(3)五十里ダムの貯水量がピーク段階でも有効貯水量約25%(約1100万立方m)を余裕を残していた。
雨のピークは過ぎても、その後の降雨量が予測できない側面もあるが、下流側への放水抑制に使用できた可能性も考えられる。
ただし、上流の湯西川ダムの有効貯水量は約94%に達し、約6%(約435万立方m)の余力しかなくなっていたが、雨のピークが過ぎて、ダムの流入量が下流の五十里ダムへの洪水放水量(約92立方m/秒)を下回るようになった。
(4)逆に、五十里ダムが満水(有効貯水量100%)になった場合は、洪水放水量を超える大きな水量が流入して生きた場合は、そのまま同量の水量を下流に放流せざるえなくなる。
(正確には五十里ダムの総貯水容量は5500万立方mですから、ダムを越流するまでは900万立方mの余裕があります。湯西川ダムの総貯水容量は7500万立方mで、有効貯水量との差は300万立方m)
(5)鬼怒川水系の4ダムは、水系に対して2並列・2直列の組み合わせになっている為、今回の台風2個分の水量をなんとか洪水放水量の範囲内で貯水できたが、もし、水系に対して4並列であった場合は、満水になったダムが流入した水量を、そのまま放水する為、ダム下流部の被害が甚大になっていた。
(6)実際のダムの洪水調整量は、(ダムの有効貯水量-その時点のダムの貯水量)となる為、ダムの調整能力には限界がある。(ダムは夏場の利水目的もあるので、不要に低く設定できません。)
台風が来る前の9/9 0:00時点での洪水貯水能力は以下の通りです。
五十里ダム :(4600万立方m-543万立方m)=4057万立方m
湯西川ダム :(7200万立方m-3974万立方m)=3226万立方m
川治ダム :(7600万立方m-3776万立方m)=3824万立方m
川俣ダム :(7310万立方m-4586万立方m)=2724万立方m
夏季洪水対策として、夏季制限容量を低くしている。五十里ダムを除けば、有効貯水量の半分以下です。
鬼怒川水系の隣にある利根川水系の渡良瀬遊水池(わたらせゆうすいち、有効治水容量=1億7068万立方m)は、普段は水が流れ込まない第一調整池まで、渡良瀬川水系からの水が背割堤(調整池に水を流し込む為に、わざと低くした堤防)を通して流れ込んて満水だそうです。
渡良瀬遊水池の堤防上にある「道の駅きたかわべ」の方に聞いた話では、「渡良瀬遊水池の第一調整池は、大きな台風が2連続して大雨を降らせないと第一調整池には水が流れ込まないので、2~3年に一度ぐらいしかない」と聞いたことがあります。
(この時に渡良瀬遊水池に行った時の写真は無かったので困りました・・・・・)
利根川と鬼怒川の合流点にも、両河川からの水の合流による滞留を防ぐ為に、田中・菅生・稲戸井の3調整池(有効治水容量=1億0840万立方m)がありますが、こちらも調整池に流入したそうです。他の方のブログによれば、5年ぶりの流入だそうです。(普段は農地やゴルフ場に使用しているので、相当危険な状態になるまでは水を入れない場所です。稲戸井の調整池はゴルフ場の除く場所で、そこにある木や土などの自然を排除して容積を増やそうとしたので、自然保護と衝突しているみたいです。今回の洪水が乱開発に利用されない事を祈りますが・・・)
渡良瀬遊水池は、利根川水系最大の貯水量を持つ八木沢ダム(やぎざわダム、1億7580万立方m)と同容量、
田中・菅生・稲戸井・3調整池の合計は鬼怒川水系の湯西川ダム(ゆにしがわダム、7200万立法m)より大きいです。しかも、実際のダムの治水容量は(有効貯水容量-洪水調整前の貯水量)しかありませんので、この2つの遊水池や調整池は中流部の洪水緩和にかなり貢献したようです。
今回は、災害を利用しての公共事業予算拡大を見るのが嫌になり、治水関係者に厳しい言葉となってしまいましたが、今回の水害ではダム管理者などは洪水抑制に努力していたと考えていますし、河川行政はムダなダム予算を削り、比較的限られた予算で長期計画で事業を続けている方です。(甘い事を言うと、ダム(コンクリート)行政復活になるので、注意しています。)
「くまドン」は、「消費税増税反対。8%にしたのもダメで、5%に戻せ!国民に負担を押しつける法人税減税反対です!」が以前からの主張で、今も変わりありません。最近では、消費税増税をごまかして行う為の変な税制案を出して、国民から叩かれて当然かと思います。
被災者や弱者を前面に出して、予算獲得や国民の税金の使用に走る行為も、目立ちます!
インフラ関係では、道路と防潮堤関係の予算の使い方がひどいです。東日本大震災の被害を理由にして、過大な道路工事が全国で行われるようになってしまいました。実際には、それまで税金のムダ使いとして、道路工事予算が抑えられていたのを、「震災対策で道路が必要だ!」と勝手な理屈で、日本全国に道路を造り続けているのですが、増やす前の道路工事予算に戻してほしいですね。
高速道路の建設も不採算路線を過大に建設するのも止めて欲しいし、収益増大目当てに都市部の高速道路代を値上げもお断りです。過大な道路工事の為に首都高速道路や都市近郊の高速道路の料金をあてにしないでください。圏央道の料金値下げ・首都高速の値上げをしなくても、渋滞していたら、時間(賃金)の節約で、自然に迂回しますので、余計な迷惑です!
今回は、これで終わりとさせていただきます。
脱線続きの「くまドン旅日記」ですが、正直、政治の悪口ばかりで書いているので、ブログ作るのが嫌になってきました。(見ている方も、嫌になるかもしれませんが・・・・)
「くまドン」は10日間程不在となりますので、しばらくブログの更新はございません。
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