空のイルカ、夢のイルカ(4)

2021-10-18 09:57:21 | 童話
『夢の中へは、どうやって行くの?』
『僕が頭の上で1回転すると夢の中へ行けるんだよ。』
『やってみてよ。』
『いいよ。僕が頭の上を飛び越えるから、海の中で立っていてね。』
『うん、いいよ。』
イルカがすごいスピードで泳いで来て、立っている僕の上を飛び越えて、1回転しました。
その時僕の目の前が少し暗くなりました。

『今、夢の中に来たよ。これから、どんな夢の中へ行こうか?』
『どんな夢の中へも行けるの?』
『行けるよ。』
『飛行機を操縦している夢へ行きたいな。』
『いいよ。目を閉じていて。』
『うん。』
『もういいよ。』

空のイルカ、夢のイルカ(3)

2021-10-17 10:01:31 | 童話
イルカは力いっぱい尾ビレで水をたたきました。すると、イルカと僕は空へ上がり始めました。そして、イルカは尾ビレを何度も何度も動かして、ドンドン高く上がって行き、ビーチボールに近付きました。
『イルカ君、もう少しだ、がんばって。』
『うん、もう少しだね。』
『あっ、届いたよ。』
『ビーチボールをつかんだら降りて行くよ。』
『うん、いいよ。』

僕とイルカは海に戻って来ました。
『イルカ君はどこまで高く上がって行けるの。』
『ずっと空高く行けるよ。空だけでなく夢の中へも行けるんだよ。』

空のイルカ、夢のイルカ(2)

2021-10-16 10:10:27 | 童話
『もう少し大きなビーチボールで遊ぼうか? 僕が海の方へボールをけるから、イルカ君は海の方からボールを投げ返して。』
『いいよ。それっ。』
僕がポンッ。
そして、イルカが尾ビレでボンときつく打ちました。

『うわっ、そんなにきつく打ったら取れないよ。』
『ゴメンゴメン。』
イルカが尾ビレで打ったビーチボールは風で空高く上がりました。
『あんなに高く上がったら取れないよ。風に流されてドンドン高く上がって行くよ。』
『よしっ、一緒に取りに行こうか?』
『あんな高い所へ、どうやって取りに行くの?』
『僕の背ビレにつかまっていて。』
『うん、いいよ。』
『それでは行くよ。』

空のイルカ、夢のイルカ(1)

2021-10-15 09:24:22 | 童話
『お~い、お~い。』
誰かが呼んでいる。
『なぁ~に? だぁ~れ?』
小さな島の、海の見える家に僕がいると、海の方から僕を呼ぶ声がした。
『お~い、お~い。』
とまた呼んでいる。
『誰なの?』

海の中を見ると、イルカがいて、ヒレで水をバシャバシャとやっていた。
『やぁ、イルカ君、な~に?』
『一緒に遊ぼうよ。』
『今、宿題をやっているから、1時間くらいあとでね。』
『うん、待っているからね。』

そして、宿題が終るころにまた『お~い、お~い。』とイルカが呼んでいる。
『まだ宿題は終らないの?』
『今終ったよ。』
『一緒に遊ぼうよ。』
『いいよ、今行くからね。』
『僕は泳ぎがうまくないので、海の深い所へは行けないから、一緒に遊べるのは、海の浅い場所だよ。』
『うん、いいよ。』
『何をして遊ぶの?』
『軟式野球のボールを投げるよ。それっ。』
『よしっ、僕はヒレでポンッ。』
『今度は、僕はバットでボコン。』
ポンッ、ボコン、ポンッ、ボコン

僕と、お父さんとボクとの約束(3)

2021-10-14 10:52:34 | 童話
そしてある日、僕は友達とボクの3人で自転車で近くの公園に行った。公園までの道は上り坂だが、ボクが1番で僕が2番で、友達が3番目だった。今迄は僕は友達にかなわなかったので、友達が『どうしてそんなに速く走れるようになったの。』と言って驚いていた。 
僕を頑張れるようにしてくれたボクはすごいと思う。ボクは本当に僕のお父さんの子供の頃なのだろうか?

『ねぇお父さん、お父さんは小さな子供の頃は、走るのが速く、鉄棒の逆上がりもできていたの?』
『走るのが遅く、鉄棒の逆上がりも全然できなかったよ。』
『でも、今はできるでしょ?』
『そうだね、逆上がりはできるけれど、今は走るのは遅くなっただろうね。全然運動をしていないからね。』
『でも速かったんでしょ?』
『そうだね、速かったよ。』

『お父さんはだれから教えてもらったの?』
『お父さんのお父さんから教えてもらったのだよ。』
『ふぅ~ん。僕はね、お父さんに教えてもらったんだよ。』

『お父さんは教えていないよ。』
『ううん、お父さんの子供の頃の男の子から教えてもらったんだよ。』
『そうか、お父さんも、お父さんのお父さんの子供の頃の男の子から教えてもらったんだよ。』
『僕と同じだね。』

『これは、お父さんとお前との秘密だよ。』
『うん、僕とお父さんとの秘密だよね。それから、僕はボクとずっと仲良くするからね。』

   おしまい