山の巨人(1)

2018-05-26 10:48:11 | 童話
昔、ある山に巨人が住んでいました。
山の頂上に足があり、足から上は雲の上にあるので、みんなは巨人だとは分かりません。
その巨人は、山から町にやって来る時に、右の足で山の頂上にポン、今度は左の足で次の山の頂上にポン、そして、右足左足と山の頂上をポンポンポンと跳んでやって来ます。

町に着くと巨人は小さくなって普通の大人と同じ大きさになり、町の食堂でお昼ご飯を食べて、いろいろな買い物をして帰ります。
帰る時には、また大きくなって、山の頂上をポンポンポンと跳んで帰ります。

山の巨人は小さくなっても力持ちで、町にいる時にみんなの手助けをします。
お年寄りが荷物を持っている時は代わりに荷物を持ってあげ、自動車が子供にぶつかりそうになった時には自動車を止めて子供にぶつからないようにします。
だけれど、巨人は町にいる時は普通の大人と同じ大きさなので、みんなは巨人だとは分かりません。

ある日、巨人が山から町にやってきた時に小さくなるのを忘れて、巨人のままでした。みんなは巨人の足しか見えないので、巨人だとは気がつきません。
『今、大きな足が通り過ぎていったね。』
『そうだねぇ、大きかったねぇ。』
『ドスン、ドスン、ドスンと大きい音がしていたね。』
『もう来ないのかなぁ。』

巨人は食堂に入れないので、小さくなるのを忘れていたことに気が付き、誰もいない所で小さくなりました。
そして、いつものように、町の食堂でお昼ご飯を食べて、お買い物をして、山に帰って行きました。
もちろん帰る時は、また大きくなって、右の足で山の頂上にポン、今度は左の足で次の山の頂上にポン、そして、右足左足と山の頂上をポンポンポンと跳んで帰ったのです。

ぽろろ、ぽろろ。(3)

2018-05-25 06:58:52 | 童話
物置の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』

『あっ、僕の自転車だ。なぁに、自転車に乗って公園に行こうよだって? 自転車の好きな友達を呼んで来るから待っててね。』
『友達が2人来たから3人で公園へ行くよ。この公園はね自転車に乗って走ってもいいんだよ。楽しいね。』

山の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』

大きな杉の木が呼んでいるのだ。
『大きな木だから僕は登れないよ。なぁに、太い枝にかけたブランコに乗せてくれるの。ぶーらん、ぶーらん。楽しいね。』

僕の机を置いてある部屋から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』

時計が呼んでいるのだ。
『なぁに、電池が無くなりかけているの、よし、取り換えてあげるね。だから、3時になったらおやつを食べるから教えてね。』

駅の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』
と声が聞こえてくる。
『だぁれ?』

電車が僕を呼んでいる。
『電車に乗って遠くへ行こうよだって、だめだよ、今日はね、お父さんの自動車で買い物に行くんだ。何を買いに行くのだって、お花を植え替えるので、植木鉢を買いに行くんだよ。大きな植木鉢を買うから電車に乗せられないんだ。また今度、デパートへ行く時に電車君に乗せてもらうね。』

庭の方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』
と声が聞こえてくる。
『だぁれ?』

誰が僕を呼んでいるのか判らない。
『だぁれ? あっ、お花に小さなテントウ虫が止まっている。
今度はこっちから『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』と聞こえる。
また今度はあっちから聞こえてくる。
テントウ虫君が3匹、僕の方に集まって来た。
何をするの? そうか、3匹で背中の模様のファッションショーをやるんだ。うーん困ったなぁ、3匹は模様が違うけれど、全部きれいだからね。そうだ、3匹全部が一番だ。』

たくさんの友達ができて楽しいな、
もっとたくさんの友達を作ろうよ。

『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』

小さな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。
もっと小さな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。
大きな声で『ぱろろ、ぼろろ。ぱろろ、ぼろろ。』。

     おしまい

ぽろろ、ぽろろ。(2)

2018-05-24 06:53:22 | 童話
僕の足の下の土の中から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
モグラ君かな?

『なぁに、僕は土の中には入れないよ。』
『えっ、モグラ君は昼間は眩しくて外に出られないから、夜になったらジャンケンをして遊うよ、だって。ダメだよ、僕は夜は家に帰らなければいけないんだ。だから今ジャンケンをしようよ。モグラ君は土の中から手だけ出せばいいんだよ。ジャンケンポン、僕はチョキだけどモグラ君はパーだから僕の勝ちだよ。そうか、モグラ君はパーしか出せないんだ。』

空から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
そうか、空の上の雲君だ。

『なぁに、雲君の背中に乗せてくれるの? ダメだよ、僕は重たいから乗れないよ。雲君が空に何か絵を書いてよ。わっ、おいしそうな綿菓子とドーナッツだね。それに、飛行機雲もきれいだね。』

僕が家に帰るとキッチンの方から『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。 
『だぁれ?』
『あっ、コップ君だ。

えっ、コップでお水を飲むとおいしいよ、だって。僕はジュースの方がいいなぁ。コップ君貸してね。ゴクッゴクッ、ジュースはおいしいなぁ。』

僕の机のある方から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
やぁ、エンピツケース君だ。

なぁに、今日の学校の勉強と宿題を頑張ったね、だって。うん、頑張ったよ。お父さんとお母さんに話をしたらほめてくれたよ。』

ぽろろ、ぽろろ。(1)

2018-05-23 07:07:30 | 童話
僕のいる窓の外から、
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
風が遠くで僕を呼んでいるのだ。

『なぁに、宿題が終ったら外で遊ぼうよと言っているの? 30分位で宿題が終るので待っててね。』
『宿題が終ったよ、何して遊ぼうか。よしっ、駆けっこをしようよ。だけど、1人だと寂しいから、いつも一緒に遊んでいる友達を呼んで来るね。』
3人の友達と僕の4人で風と競争をした。ヨーイドン 。
『風君は速いなぁ、僕達4人は全然かなわないや。』

公園の木の上から
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
小鳥が呼んでいるのだ。

『なぁに、僕は羽根がないから一緒に飛べないよ。えっ、きれいな歌声の競争をするの? 僕は歌がうまくないから、小鳥君が唄ってよ。』
『ピピピピ、チチチチ、ピーピピ、ピーピピ。』
『やっぱり小鳥君は歌が上手いね。だけど、『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』とは鳴かないの? 『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』と鳴くのは友達を呼ぶ時だけなのか、だから僕を呼ぶ時はみんな『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』と言っているんだね』

小川の近くで
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
と聞こえてくる。
『だぁれ?』
声は聞こえるけれど、だれが呼んでいるのか判らない。

『だぁれ?』
『ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
『あれっ、川の水君かな?』
『そうだよ、ぱろろ、ぼろろ。ぽろろ、ぽろろ。』
『なぁに、川の中で一緒に遊ぶの? 海水パンツを持ってくるから待っててね。』
『海水パンツになったから川に入るよ。』
僕は川の中で水に押してもらった。
『たのしいな、たのしいな。』

ハムスターのモコちゃん(2)

2018-05-21 07:34:51 | 童話
『ねえ、ウサギやモルモットではイジメは無いの?』
『モルモットでは昔イジメが有ったよ。』
『今は無いの?』
『今は無いみたいだよ。』
『どうやってイジメを無くしたの?』
『イジメが有る時は、いじめているモルモットや、いじめられているモルモットだけを別にするのではなく、モルモット全部を別々にして、他のモルモットが見えなくしたんだ。そして、友達と一緒に遊びたくなってきた時に、また全部一緒にしたんだ。』

『そうしたらイジメが無くなったの?』
『うん、今はね。』
『その方法で、ずっとイジメが無くなるかなあ?』
『分らないよ。だけれど、今はイジメが無くなっているよ。』

『ウサギの当番のひとはどうなの? イジメは無かったの?』
『イジメは有ったわよ。ウサギは狭い所にずっと入れているとストレスがたまるって、お店の人に教えてもらったので、時々広場へ連れて行って遊ばせたら、イジメは無くなったの。』
『モルモットとウサギでは違うんだね。』
『そうね。』

僕達は、3匹のハムスターを全部バラバラの小屋に入れて、他のハムスターからは見えないようにしました。
そうすると、ハムスター達は他のハムスターを探していました。そして、1週間そのままにしてから、また3匹のハムスターを1つの小屋に入れてやり、当番のみんなで3匹のハムスターを入れた小屋を、1週間観察をしました。
そうしたら、モコへのイジメはおきませんでした。
そして、3匹は仲良くしていると思っていましたが、今度はコロがピーに噛み付きました。
僕達は困ってしまって、ハムスター達の話しを聞くことにしました。

『コロとピーは、どうしてモコに噛み付いたの?』
『モコは弱いから、いじめると面白いんだよ。』
『みんな友達なんだから、いじめてはダメだよ。』
『弱い子は守ってあげないといけないんだよ。』
『うん、わかった。』
『どうしてコロはピーに噛み付いたの?』
『ピーが噛み付いたからだよ。』
『ピーはどうしてコロに噛み付いたの?』
『コロが噛み付いたからだよ。』
『お互い噛み付いていると、いつまでたってもケンカが終らないよ。』
『そうだね。』
『おやつのクッキーをあげるから、みんなで仲良く食べさせようよ。』
『うん、いいよ。』

こうして話し合ってからはイジメはありません。
だけれど、また、いつイジメがおきるか分かりません。
その時は、またみんなで話し合ってイジメを無くすようにしています。

    おしまい