ロケットの子供(3)

2018-05-19 08:51:49 | 童話
『それでは、1時間後に秒読みを開始します。』
と大きな声のアナウンスがありました。僕もみんなもドキドキしていました。

最後の総合テストの1時間が過ぎて、ロケットエンジンの熱い風が来ない建物の中にみんなが入り、僕だけが独りぼっちで発射台という機械の上にいます。
『秒読みを開始します。50、49、48、47、・・・・、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発射。』
ゴーとすごい音がしてロケットエンジンから火が噴きだし、少しずつ空に上がって行きました。

僕は人工衛星をシッカリと押さえました。
地上では、たくさんの人が、大きな画面で僕が飛んでいる様子と、たくさんの計器を見ていました。
僕はどんどんと高くなって行き、たくさんの人が見上げている時に、
『1段目エンジンの切り離しです。』
というアナウンスがあり、僕の脚の大きなエンジンが切り離され、1段目のエンジンが僕から離れて行きました。
『エンジン君、ここまで飛んでくれてありがとう。バイバ~イ。』
と僕は1段目のエンジン君にさようならを言いました。

僕はドンドン高く上がって行き、高い空の宇宙まで来たので、僕の周りは真っ暗になっていて、僕の腰にある2段目エンジンだけが明るく輝いていました。
たくさんの人が見ている時に、今度は
『補助エンジン点火、地球の周回軌道に入ります。』
というアナウンスがあり、僕の飛んでいる方向が変えられました。

『軌道修正完了、地球の周回軌道に入りました。』
そして、しばらくしてから、僕の頭のカバーが外され、人工衛星を宇宙に出す時になりました。
『人工衛星の放出を開始します。』
とアナウンスと同時に、僕は両手で人工衛星を頭の中から取り出す準備をしました。
『人工衛星の放出準備完了、放出します。』

僕は人工衛星をソッと宇宙へ出しました。
『人工衛星君さようなら、元気でね。僕はこれから地球に帰るね。僕は途中で燃え尽きて無くなってしまうけれど、人工衛星君と、ここまで飛んできたことは忘れないからね。バイバイ。』

こうして僕のお仕事は終りました。僕のお父さんもおじいちゃんも、こうして人工衛星を宇宙に運ぶお仕事をしてきたのです。
そして、僕は地球の近くになってきたので熱くなってきた、僕はついに体全体が熱くなり赤く燃え始めました。

『地球の皆さん、僕は人工衛星を運ぶ仕事が終わりました。これからも僕の弟や子供たちが人工衛星を運び続けると思います。サヨウナラ。』

              おしまい