爛漫日記

インターネット古書店 独楽知の、春爛漫ではなくて、秋爛漫?の日記です。

映画『花と兵隊』

2009-09-20 22:39:07 | 映画
渋谷の宮益坂を上った先にあるイメージ・フォーラムで上映している『花と兵隊』を見てきた。
予想以上に良い映画で、すごく感動した。

1979年生まれの若い松林要樹監督の、第1回作品。
<『花と兵隊』は、タイ・ビルマ国境付近で敗戦を迎えた後、祖国に還らなかった6名の日本兵、すなわち「未帰還兵」を描いたドキュメンタリー映画である。>

この映画は、この劇場用パンフレットの中でジャーナリスト鳥賀陽弘道氏が書いているように、<どこかしら「元日本兵の老人の家にビデオカメラを持った兄ちゃんが転げ込んで写したホームビデオ」のような、くつろいだ空気がずっと流れている。>

マイクを持って老日本兵にインタビューする若い松林要樹監督が、画面に時々現われるのが、とても新鮮で、印象に残った。
一緒に老人に出会っているような感じになって、老日本兵が語りたくなさそうに話した戦争の話に胸を打たれた。
 
鳥賀陽弘道氏はこう書いている。
 <その瞬間、僕は理解した。あの戦争は「若者の戦争」だったのだ、と。画面の松林のような28歳の青年が、殺戮と破壊の悪夢に放り込まれ、やりたくもない血みどろの人殺しを経験することなのだ、と。そして、28歳の青年が90歳の老人になるまで、永遠に人生を変えられてしまう、後戻りのできない過酷な体験であることを。
 現場で考えずにいられなかった、松林は言っていた。もし生まれるのが60年早ければ、自分も元日本兵の老人たちのように銃を持って殺人者になっていたはずだ、と。そして元日本兵たちが60年後に生まれていれば、自分のように楽しく世界を旅して青春を謳歌していたはずだ、と。>
 
この映画の中では、元日本兵たちが敗戦後離隊して、現地で結婚した妻たちの話も、また魅力的だった。
元日本兵は敗戦後に日本へ還る道は捨てたけど、そこで過ごした長い年月は実り多い生活だったのかもしれないと。

3年の製作期間中、登場する元日本兵のうち、2人が鬼籍に入った。
貴重なドキュメンタリー映画が、これから各地で上映されるのを願っている。


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