爛漫日記

インターネット古書店 独楽知の、春爛漫ではなくて、秋爛漫?の日記です。

須賀敦子『ミラノ 霧の風景』

2010-04-06 20:14:23 | 私の本
須賀敦子が13年間過ごしたイタリアについて書いたのは、日本に帰ってきて20年経ってからである。
組み立てられた文章の中から映像が浮かび上がってくるような、いくつかの美しいエッセイを残して、あっという間に亡くなってしまった須賀敦子の、最初のエッセイ。

須賀敦子の文章が好きで何度も読んだことがある本だけど、今度初めてフィレンツェとヴェネツィアに出かけてから読んだら、地名や雰囲気が以前よりずっと鮮明に頭に浮かんだので、あらためて感動した。


ー「舞台のうえのヴェネツィア」からー

須賀敦子は、「世にも不思議としか言いようのない虚構の賑わいと、それとはうらはらな没落の憂鬱にみちたこの島」と表現しているヴェネツィアを、こんな風にとらえてみせた。

「ヴェネツィアという島全体が、たえず興業中のひとつの大きな演劇空間に他ならないのだ。」

「サン・マルコ寺院のきらびやかなモザイク、夕陽にかがやく潟の漣、橋のたもとで囀るように喋る女たち、リアルト橋のうえで澱んだ水を眺める若い男女たち、これらはみな世界劇場の舞台装置なのではないか。ヴェネツィアを訪れる観光客は、サンタ・ルチア駅に着いたとたんに、この芝居に組み込まれてしまう。自分たちは見物しているつもりでも、実は彼らはヴェネツィアに見られているのかもしれない。」と。



ヴェネツィアは、また行きたい。
サンタ・ルチア駅に着いて、ヴェネツィアの芝居に組み込まれたい。
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