食道がんと闘う自然爺の活動

自然の中での暮らしに憧れ、自作の山小屋を起点に自然と戯れていたが、平成21年10月、食道・胃がんが見つかり手術。

『回顧録、初診にして癌告知Ⅱ』

2013年01月09日 17時53分08秒 | 回顧録

『小物入れの作成』

小型茶箪笥は製作中でこれの行き先は決まっている。しかし、納めるのはまだまだ先

の事なのに、冬仕事に丁度いいと始めたもので明らかにオーバーペース気味。

事情というのは実に都合よく動いてくれることもあり、これより先に納めなければならな

いものができた。一寸したサプライズの贈り物を計画してしまったのだ。この度の作品

は松材を使って、幅・高さとも50cm位のもので使い勝手はいいと思う。

同じものを山小屋で使っているが、使い勝手はとてもよくお気に入りの作品の一つだ。

小型茶箪笥は暫くお休みにして、小物入れに集中。外は、一時的に陽が差したりして

いたが風は冷たいし、いざ外に向かうと陽が陰り、やはりこの時期は家内工業が一番。

『回顧録、初診にして癌告知Ⅱ』

これが終われば楽になれると励まし続けた。ところが、この作業は時間がかかり、身体を

よじるような仕草が見えたのか、看護師がすかさず励ましのエールをくれる。

先生はしきりに『目を閉じないで画面を見るようにして』と促すが、そんな余裕はゼロのア

ップアップで馬耳東風、だが一瞬目の中に入ってきた画像は『食道の癌の姿だった。ほ

んのちらりだったがグロテスクなイボのような形状にみえた。』ピンク色の食道に素人目で

見ても癌と認識できた。普段なら好奇心からもっと見ていたであろうが兎に角、串刺しが

苦しくて野次馬根性も何処かに逃げ出していた。

時間を正確には計っていなかったが、30分から40分はかかったと思う。腰砕け状態に近

い姿で診察台から降り、やっと生気を取り戻したような気分。結果よりも解放された喜びは

大きくオーバーに言えば、まるで治療の全てが終わったかのように思えた。現実に戻ると

絶食だったから腹は減っており何でもいいから食べたいのに、喉の麻酔をかけているの

で暫くは食べることができず飲み物で空腹感を満たすしかない。

別室で結果発表。開口一番『食道下部にがんがあります。』『やはり、癌だったか。これは

早く手術して貰わねば』と意を強くすると、医者は続けて『それと、胃の入口にも癌があり

まして・・・』完全にフェイントをかけられ、何か聞こうにも聞けない状態になってしまった。

辛うじて『食道がんが転移したものですか?』と質問できた。『検体検査をしないと確実なこ

とは言えないが、別物だと思われる』と告げられた。

この時点で『食道がんが胃に転移していた』と『食道がんと胃がんは別物』この違いの意味

することの重要性を全く認識していなかったが転移していない、この一言は妙に安心感を

与えてくれた。何でもいいから、早く癌を切り取れば、今のような不快な思いをしなくてもよ

くなる。本当に単純な思考回路が働き、治療することに相変わらず前向きな患者。

ただ、この日に閻魔様のお言葉『禁酒・禁煙』のお告げはなかったから、ジタバタせずに暫

くは今まで通りということにする。こんな状況が許されるはずもないことは承知の上だ。

食道がんは自覚症状もあるから分かり易い。胃がんは私の頭の中では認知されず、何かあ

ると『食道がん』の言葉が出て来る。

ずっと後に知ったのが私のような複数の癌を『多重がん』という。癌の告知をされ予想通りと

喜ぶはずはないが、やはりとガッカリすることもなく、先にあるであろう治療、手術に思いを馳

せ、現状からの脱却への意欲満々だった。

家に帰り妻には『食道がんだけかと思っていたのに胃がんもあった』と告げる。本人は落ち

んでいないから聞く方も沈痛な想いで受け止めるようなことはなく、よくある『頭の中が真

っ白になった』こんな情景でもなかった。先に自己診断による癌の自己告知のお蔭だ。


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