【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

再生可能エネルギー全量固定価格買い取り法案、本日モ審議セズ 衆・経産委

2011年05月25日 22時56分32秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

【2011年5月25日(水)衆院経済産業委員会】

 午前9時から、衆・経産委が開かれ、一般質疑が行われました。この後、最後に内閣提出法案の提案理由説明があり、「特許法などの改正法案(第177通常国会内閣提出法案45号)」と「不正競争防止法改正案(177閣46)」を海江田万里・経産相が説明し、「なにとぞご審議のうえ、速やかにご賛同いただきますようお願い申しあげます」と述べました。この後、田中慶秋委員長は「次回(の委員会開催は)公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします」と述べ、終わってしまいました。時刻はまだ正午を過ぎたばかりでした。

 太陽光、バイオマス、地熱、風力、水力などの全量固定価格買い取り法案「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」(177国会閣法51号)は、もう7週間前の4月5日に議院運営委員会から経産委に付託されているにもかかわらず、いまだに審議がされないまま。次回の日程(公報をもって知らせる)は決まっていません。来週になれば、もう会期は3週間+3日間しかありません。この間に、衆院だけでなく、参院の経産委を経て、参院本会議で可決・成立させなければいけません。また政府側の海江田経産相も今国会では、参院予算委・決算委の集中審議、衆参の東日本大震災復興特別委員会などにも呼ばれると考えられます。審議日程はけっして余裕があるとは言えません。

全量固定価格買い取り法案(177国会閣法51号)は、次の参議院ホームページでpdfファイルで全部見ることができます。
 ↓
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/177/pdf/t031770511770.pdf

 なお、この法案には、電事連(電気事業連合会)が「慎重審議」を求めています。

電事連が経産省に提出した意見書(pdfファイル)は下の経産省アドレスから見ることができます。
 ↓
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g91208a08j.pdf

 まさか、電事連からの「慎重審議」の圧力で、全量固定価格買い取り法案が審議入りできないということではないことを信じたいところです。ちなみに、きょう衆・経産委で審議入りした2本の法律は、参議院先議で、すでに参院は可決しており、衆院で可決すれば、成立します。たしかに内閣が国会に提出した順番は「特許法」「不正競争防止法」の方が先です。しかし、政治とは、優先順位(priority)をつける仕事であり、内閣が提出した順に法案を審議しなければ行けないという決まりはないはずです。

 この全量固定価格買い取り法が成立すれば、自費で太陽光パネルをつけようと言う新築家主や、温泉の地域活性化のために地熱発電の町おこし会社を共同出資するという機運が盛り上がるはずです。公明党が提案している「住宅エコポイント」の半年間延長も実現しそうな機運があります。そして、その後から、エネルギー基本計画の原子力への今後の依存の割合を話し合った方が、肩の荷が軽くなります。それが優先順位(priority)というものではないでしょうか。

 政権交代のその先にあるもっと大事な「政治を国民の手に取り戻す」ために、ぜひ、私は残り1ヶ月の国会で、この法案にかけてみたいと思います。これは先日の5月18日付エントリー「自然エネルギーの全量固定価格買い取り法案(177閣法51号)の成立を呼びかけよう! 【追記あり】」で呼びかけた際に、アクセス解析などからタイヘン興味を持っている方が多いことに気付き、私としても「政治を国民の手に取り戻す」運動の一つの良い“教材”だと位置づけた次第です。民主党代表である菅直人首相が、この法案の成立を「命令」しているのですから、どんなことがあろうと経産委はこの法案を会期内に成立させなければいけません。

 ちょっと今のところは、具体的に国会内取材をしていないし、私自身、経産省・経産委員会の関連は強くないので、とりあえず、きょうの経産委では審議入りしなかったことをお伝えしたところです。これから時間的に余裕があれば、電事連が動いているのではないか取材してみたいと思います。心苦しいですが、電力総連の動きも取材しなければいけません。ただ、これは「3・11」以降に、経産省がまとめて内閣が閣議決定した法案ですから、法技術的な大きな問題はないでしょう。さらに私はこの法案をまったく知らなかったのですが、その存在を知らせてくれたのは、資源エネルギー庁課長補佐出身ながら、自民党の川口順子、町村信孝両元外相ら石油利権族と一線を画し、自然エネルギーに以前から興味を持ち、政策化してきた外相経験者周辺でした。周辺は「あの法案どうなのかな?」と言うので、「えっ何ですからそれ?」という感じで、この法案を知りました。この首脳は今国会の運営にきわめて大きな影響力を持っていますから安心できます。つっかえ棒としては、衆参とも経産委員長が民社協会員だということです。来年8月1日の友愛会設立100周年に向けて、長年、原子力政策を推進し、電力総連の支援を受ける民社協会は「3・11」以降、変わらなければいけません。変わらなければ、100周年を迎えられません。私はかつて、民社協会(新党友愛)の番記者を務めたこともあり、仲良くさせていただいてきましたが、この法案の対応は厳しく見させていただきます。

 電事連の会長会社だった東京電力に原子力発電所を爆発させられといて、その国会で電事連の政治的圧力に屈するようでは、日本国民はお人好しすぎます。私はこの国会でこの法案をスッポンのように追いかけたいと決意しました。がんばりましょう。

全量固定価格買い取り法案(第177国会閣法51号)に関する一連のエントリーはここをクリックすると一覧できます。


「玉突き県外移転案」が浮上!普天間→嘉手納→三沢 米上院レビン委員長、「岡田・前原」と連携か?

2011年05月25日 04時08分11秒 | 岡田克也、旅の途中


 25日付朝日新聞1面ワキにスクープです。

 米上院レビン軍事委員長が、嘉手納空港(沖縄県)のアメリカ空軍の戦闘機部隊を米空軍の三沢基地(青森県)に移転させ、その空いたところに、普天間飛行場のアメリカ海兵隊のヘリコプター部隊を統合させる、いわば「玉突き県外(青森)移転」案を検討していることが分かりました。普天間の海兵隊ヘリコプター部隊を、空軍の嘉手納に統合すると、騒音などが問題にあるため、空軍を三沢に移すというアイディアのようです。米上院は、いよいよ予算(歳出)法案の審議に入ります。

 12日付当ブログ「◎嘉手納統合案が再浮上!」で、米連邦議会上院の軍事委員会のレビン委員長(大統領与党の民主党)、ウェッブ「日本など」小委員長(同)と、マケイン筆頭理事(共和党、元大統領候補)の3人が、嘉手納統合案について、再度検討するよう、国防総省向けのメッセージを発表したことをお伝えしました。

 ここから先、このエントリーはまったくの推論の連続、場合によっては「うがった見方」にすぎません。その辺をご了承いただける方だけ、読み進めてください。

 実はちょうどこの、2011年5月12日(木)の夕方、民主党幹事長の岡田克也さんは定例記者会見で「(週末の)14日、15日と青森に行くことにしております。直接的には、青森県知事選候補予定者の山内崇県連幹事長の応援、これは15日です。それとの関連で、1つは、三沢の米軍基地を表敬する予定にしております。これは前回、3月11日の大震災の後、私が三沢、八戸と現地を訪問したとき、三沢の米軍、空軍ですが、ボランティアで震災直後から支援に入ってくれた。特に三沢市の海岸の瓦れきの片付けでありますとか、様々な活動を“トモダチ作戦”が始まる前から自主的にやっていただいたということで、私、一度どこかでお礼を申し上げたいと思っておりました。基地の責任者も幸いおられるということですので、三沢の米軍基地を表敬したいと考えております」と語りました。岡田さんが、木曜日の会見で、冒頭発言で週末日程を紹介することは珍しいことです。何らかの政治的思惑があっての発言だと考えられます。岡田克也さんは、民主党政権になった2009年9月、鳩山由紀夫代表から幹事長を外されてしまい、鳩山内閣の初代外相として1年間務めました。

 この訪問については、岡田克也さんの個人ブログでも紹介されています。


[写真]米空軍三沢基地のラスティーン司令官と懇談する、岡田克也幹事長、2011年5月15日、岡田克也トークアバウトから。

 「この週末(14、15日)は青森県へ行ってきました。基本的には、知事選を控えて、民主党の候補予定者の山内たかしさんの集会に参加するということでしたが、この機会に原子力に関わる問題を中心に、いくつか現地を視察しました。その中で、まず今日お話ししたいのは、三沢の米軍基地を訪問したことです。米軍は、三沢には空軍を中心に展開していますが、そこのマイケル・ラスティーン第35戦闘航空団司令官(大佐)を訪ねて、一言お礼を申し上げました。震災の後、八戸や三沢を訪れた際に、当時はまだ瓦礫(がれき)も撤去されていない状態でしたが、八戸の漁港組合の皆さんや漁民の皆さんから、三沢基地の米軍関係者や家族の皆さんが、ボランティアとして被災地に入り、瓦礫の撤去に大変協力してくれたというお話を聞いていました。“トモダチ作戦”ということで、今回、米軍は自衛隊とともに、大変大きな協力の実績を残してくれましたが、そういう中で、三沢基地の皆さんは、本格的な「トモダチ作戦」の展開の前から被災地に入って、自主的に行動してくれました。騒音の問題や基地にまつわる問題などは、もちろん様々ありますが、もともと三沢基地と三沢の地元コミュニティとの関係は良いと言われており、常に深い交流があって、進んでいると言われてきました。今回の地震に対しての、米軍関係者の皆さんの行動は大変素晴らしいものがあったと思います。そういうことで、ラスティーン司令官をお訪ねして、日本国民の1人としてお礼を申し上げ、同時に、当時の活動状況などのお話を伺いました。こういった協力関係がさらに深まればいいな、と改めて思ったところです。」

 ところで、朝日新聞は「日本側の外交関係者に伝えた」と報じています。これとの関係はまったく分かりませんが、前外相の前原誠司さんが、今週初めにレビンさんと会っているはずです。前原さんが先週末、米上院最長老のダニエル・イノウエ歳出委員長(民主党)と会った際には、辺野古崎沖埋め立ての現行案を履行するように言われたようです。これは、辺野古崎沖を埋め立てた方がお金は一杯かかりますから、やはりダニエル・イノウエとしてはこちらのより利権の総額が大きい利権バスに乗りたいところでしょう。ダニエル・イノウエは86歳ですが、彼の奥さんは若いらしいですよ。


[写真]前外相の前原誠司さん。


[写真]米軍事委員会の左から、レビン、ウェッブ、マケインの各上院議員。


[写真]辺野古崎沖の埋め立てをめざす、最長老で歳出委員長のダニエル・イノウエ上院議員。

 一方、同じ民主党でも、レビンさんとウェッブさんは、同じ党のオバマ大統領が、財政再建で再選をめざすうえで、少しでも軍事費の歳出を減らしてあげたいというのが本音でしょう。そうなると、日本人として絶対に飲めないのは、沖縄からグアムへの兵員・装備の移転がストップしてしまうことでした。ここがまさに、嘉手納統合案の痛し痒しの部分でした。

 しかし、25日付の朝日新聞の報道からすると、嘉手納の空軍を三沢に移し、普天間の海兵隊を嘉手納空港に移して、普天間を閉じる。そうすれば、辺野古崎沖の埋め立ては必要がなくなる。また、グアムへの移転もできればすすめてほしいですが、あちら(アメリカ連邦政府)の財政も厳しいですから、それなりになる。ただ、空軍が三沢に移れば、沖縄の負担は減少します。まさに「県外移転」という、岡田克也外相・北澤俊美防衛相コンビを苦しめた呪文もかなうわけです。

 どうやら、レビン、ウェッブ両上院議員の動きは、岡田克也さんや前原誠司さんらと何らかの連携がある動きのように、私には感じられます。2011年5月24日、防衛省で、防衛大臣の北澤俊美さんと会った当山宏・嘉手納町長は「嘉手納統合案はうんざりだ。もう2度と日米交渉のテーブルにのせないでほしい」と言ったそうです。ご同情の至りです。しかし、ナントカこの案を突破口にしてほしいと考えています。きょうの普天間周辺住民のためと、1000年先の日本人のために、辺野古崎沖の埋め立てをナントカやめさせましょう。

 永遠の同盟国、永久のトモダチ。日本とアメリカの新たな時代の幕開け。それは「対等に話し合う」ことから始まります。

asahi.com(朝日新聞社):三沢基地へ移転、有力視 嘉手納の一部、米議員が構想 - 政治

沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)を米軍嘉手納基地(嘉手納町など)へ統合する案を提言した米上院の重鎮、レビン軍事委員長(民主)らが、嘉手納基地の戦闘機部隊を米軍三沢基地(青森県三沢市)へ移転することが有力だ、と日本側の外交関係者に伝えていたことがわかった。

 三沢基地は2007年以降、嘉手納のF15戦闘機や米軍岩国基地のFA18戦闘攻撃機の訓練移転を受け入れてきた。普天間のヘリコプター部隊を嘉手納に統合すると騒音などが問題となるため、嘉手納の空軍を三沢に移して沖縄の理解を得る狙いがあるとみられる。

 レビン氏と連名で提言した米上院のウェッブ外交委員会東アジア太平洋小委員長(民主)は、最近の日本側関係者との会談で「提言で意図的に触れなかった点がある」と説明。嘉手納の空軍の日本本土への分散先として「三つほど検討できるが、特に三沢が有力」と伝えた。部隊が沖縄を離れることによる抑止力低下については「嘉手納から分散しても太平洋地域には残るので問題ない」と語った。