【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

亀井亜紀子さん「両院協議会改革は国民新党結党の原点です!」

2011年05月19日 18時28分44秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意


[画像]国民新党政調会長の亀井亜紀子さん、2011年5月18日、参議院本会議(参議院インターネット審議中継から)

【2011年5月18日(水) 参議院本会議】

 この通常国会が召集した1月の時点では、予算関連法案をめぐり、両院協議会と、衆議院での3分の2再可決が可能かという「3月危機」がイチバンの懸念材料でしたが、3月危機は天変地異&人災になってしまいました。

 とはいえ、3月には、平成23年度当初予算3案の両院協議会がありました。そもそも、衆院から10人、参院から10人の20人で両院協議会を構成し、そのすりあわせ案(協議案)は「3分の2以上の多数で議決されたときは成案となる」という国会法92条の規定。ハッキリ言って「メチャクチャ」ですよね。だって、10人と10人のメンツがぶつかって、そのすりあわせ案(協議案)が20人の「3分の2」つまり14人が賛成するということは、とてもあり得ない話です。ただ、このすりあわせ案(成案)だって、その後の衆院本会議、参院本会議での議決が必要なんですから、もっとフランクに話し合って、「たたき台」のような成案をつくればいいと思うんですが、なんせ国会はメンツのぶつかり合いです。このため、両院協議会は単なるセレモニーとなり、衆院優先で参議院が不要になるか、それとも衆参で物事が決まらず国会が不要になるかのいずれかということになります。民主党も自民党も与党になる可能性がある時代ですから、今こそ、両院協議会に関するルールを見直すべきです。

 18日の参・本会議では、「参議院憲法審査会規定(案)」について、鈴木政二・議院運営委員長(自民党)が趣旨弁明し、その後、各党が討論に立ちました。この中で、国民新党政調会長の亀井亜紀子さん(島根選挙区)の討論がタイヘン印象に残りました。

 亀井さんは審査会をつくり、「震災で明らかになった想定外に対応できない憲法の改正」と「公と私の見直し」が必要だと、賛成討論をしました。その中で、次のように「両院協議会改革が必要だ」と演説しましたが、国民新党にとって「両院協議会改革」はいわば結党の原点だという趣旨の演説なので、「アレ?」。国民新党の立党の原点は「郵政改革(民営化の見直し)」1つだけのシングル・イッシュー(ワン・テーマ)だったんじゃなかったの?

 「また、国民新党は二院制のあり方を見直し、両院の機能を憲法上、明確に規定することを主張しています。これは結党の経緯にまでさかのぼります。ご存じの通り、国民新党は郵政解散を機に結成されました。参院で否決された法案(郵政民営化法案)を衆議院に戻さず、両院協議会も開かずに、(小泉純一郎)総理が衆議院を解散したことは、憲法違反であるという主張を私たちは変えておりません。

 衆議院議長を務めた綿貫民輔先生が、政党を結成してまで闘った最大の理由は、議会制民主主義の崩壊に警鐘を鳴らすためでした。あのとき、参議院は存在意義を否定されました。そして、総選挙後、参議院が選挙結果を追認し(出し直された郵政民営化法案を可決し)たことで、自ら参議院の存在意義を否定してしまったのです。

 本来衆議院の解散におびやかされずに、見識を示すべき参議院が、毅然として衆議院に立ち向かえなかったことは、現在の参議院不要論を招く要因となりました。その声は、ねじれ国会と東日本大震災という想定外の政治状況でいよいよ高まりつつあります。想定外が重なること自体、憲法が改正を必要としている現れでしょう」

 「さて、両院協議会はたんなる形式ではなく、調整機能です。私は、政権交代直前に開催された(2009年2月の)両院協議会に出席しました。その席で、民主党は両院の合意形成に向けた議論(すりあわせ案の作成)を呼びかけました。政権交代が実現しない場合に発生するねじれ国会を念頭に与党・自民党に提案したのですが、まさか与党になった民主党がねじれ国会に苦しむことになろうとは、当時、想像もつきませんでした。憲法改正まで時間がかかることを考えれば、今からでも議論すべきだと思います」

 正式な議事録は、参議院ホームページなどでご確認ください。

 この亀井演説の文脈ですが、両院協議会規程や国会法の改正の議論をこの日設置された憲法審査会で議論しろ、ということではなく、他の「場」での議論を求めているんだと思います。ただ、国民新党は参議院の議院運営委員会に委員を出していないんですね。ですから、「場」をどこにするかの明白なメッセージはないものと考えます。

 この国民新党の「結党の原点」を意気に感じて、ぜひ民主党だけでなく、政権交代をめざす自民党も、「場」をつくってほしいです。あえて、具体的に名前を挙げると、例えば、逢沢一郎さんとか、河村建夫さんとか、岩屋毅さんとか、田村憲久さんとか、柴山昌彦さんとか、参院の山崎力さんとか、そういった面々は自民党の中でも、選挙による政権交代をイメージして政治活動をしている志のある人だと思います。とくに第46回総選挙で、政権交代に成功しても、参議院は自民党、公明党、みんなの党を足しても過半数に届かない「ねじれ国会」は続くのです。ぜひ、今のうちに政権交代の下準備として、両院協議会改革に超党派で取り組むべきだと思います。備えあれば憂い無し。「あーしまった」と思ってから法律をつくっても遅いです。

 それにしても、時折、「立党の原点」「結党の原点」という言葉を聞くと、その演説はヒジョーに説得力が増しますね。山口公明党が「立党の原点に立ち返り、大衆の中に飛び込む」と宣言して以来、選挙は連戦連勝が続き、党勢は立ち直りつつあります。やはり「結党の原点」すなわち「志」を持ち、そこからぶれない政治家は強いということを感じます。