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ミステリ感想-『僕が答える君の謎解き』紙城境介

2024年08月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
明神凛音は卓越した推理力で事件の真相を即座に見抜くが、推理は無意識下に行われるため真相しかわからず説明ができない。その能力は騒動を起こし保健室通いの不登校児となった。
弁護士を目指す伊呂波透矢は、凛音の姉の養護教諭に内申点を餌にされ、凛音の推理の説明役を担う。


~感想~
ラノベ界に忽然と現れた驚異の論理ミステリ第一弾。
設定自体はさほど珍しくなく、ミステリファンなら麻耶雄嵩「さよなら神様」を即座に思い出すし、キャラだけなら清涼院流水のJDCシリーズに登場する九十九十九に似ており、近年では相沢沙呼「medium」も近いことをやっている。
しかしそれら先行作品はどちらかといえば特殊設定ミステリの手法として、あるいはキャラ付けの一つとして「真相だけを見抜く探偵」を描いてきたが、本作は正面から論理に挑んでみせたところに独自性がある。

冒頭の「澄ちゃんさんと女子の証明」からして痺れる。事件の概要だけ聞いて犯人を言い当て、ピンポイントでこの部分でわかったと特定までして見せると、あとは丹念な調査で裏付けし、しかもただ真相を突き止めるだけではない捻りを早くも第一話から披露してくれる。これはすごい。
2話目で物語の始まりを描き、そして3作目で…と構成も素晴らしい。
ラノベ媒体とあってやや強引な手掛かりや展開もあるにはあるのだが論理ミステリとして十分の仕上がりだろう。

また本作の独自性としてラブコメの側面も大きく、しかも正反対なキャラのWヒロインが繰り広げる軽快なやり取りも楽しい。この上にシリーズ2作目はミステリとしてラブコメとして、完成度がもっととんでもないことになっているので、気に入ったらぜひ読んでいただきたい。


24.8.3
評価:★★★☆ 7
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