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ミステリ感想-『予言の島』澤村伊智

2020年03月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
パワハラを受け自殺未遂した地元の友人を励ますため、子供の頃に流行った霊能者が不吉な予言をした島を訪ねた一行。
6人の死が予言されたその島に集まった一癖も二癖もある旅行者と、閉鎖的な島民たち。
島の山にはヒキタの怨霊と呼ばれる祟りがあり……。

2019年このミス19位、本ミス8位


~感想~
今村昌弘の「魔眼の匣の殺人」と同じく予言を扱ったことでも話題を呼んだ一作。
作者は映画化もされた「ぼぎわんが、来る(※映画版タイトルは『来る』だった)」でデビューしたホラー畑の人物で、やはりそういった描写はなかなか巧みなもの。
期待通りに予言をなぞるように死人が続出し、しかし謎は比較的あっさり解かれ、淡々と結末を迎え、そこで目が点になった。
全く、全く気が付かなかった。まさかこんなことになるとは少しも気付かなかった。
しかもとある真相が明かされるとともに、ジャンルがミステリからホラーへすり替わった。こんな馴染み深いトリックにまだこういう使い方があったのか!
個人的には相沢沙呼「medium」に比肩するほどに評価したい、ホラーの技法を本格ミステリに融合させた、見たことあるのに見たことない驚きの傑作である。


↓以下完全ネタバレ注意↓


とにかく仕込みが上手かった。パワハラで自殺未遂した精神的に不安定な人物なら、母に向けて話している時の敬語が紛れても不自然さがない。敬語を使う一人は早々に片付け、もう一人は昏睡させて排除し、同キャラ母子を出して煙幕を張った。
仕込みを終えたら以降は淡々と進行し、最後の最後に起こるはずのない状況下での殺人で驚かせ、電光石火の種明かし。同時にこれまで見えていた光景の全てにプラスアルファされる、おぞましい真相。
地味めの本格ミステリを読んでいたはずが、純然たるホラーへすり替えておきながら、使ったトリックはたったの一つだけで、しかももはや誰も顧みないようなシンプルかつ古臭い物なのだからたまらない。これはミステリ作家ではなく、ホラー作家だからこそ逆に思いついた手法なのではないか。
また言われてみれば、というか描写がずっと不自然だったのだが、初めて読む作家ということもあり、元々こういう筆なのかと途中からは全く気にならなくなっており、余計にトリックに気づきにくかった。
この手のトリックを種明かしまで少しも察知できなかったのは久々である。気持ち良く騙してもらった。いやはや素晴らしい傑作だった。



20.3.17
評価:★★★★★ 10

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