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ミステリ感想-『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子

2023年12月21日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ある雪の夜。芝居小屋のそばで美青年の菊之助は、父の仇の下男を見事に討ち取り、血まみれの首を高く掲げて見せた。
2年後、菊之助の縁者を名乗る男が仇討ちの顛末を聞きたいと、菊之助と関わりのある者達を訪ねて回る。男はなぜか彼らに身の上話を頼み…。

2023年直木賞、山本周五郎賞、このミス6位、文春8位

~感想~
史上3人しかいない直木賞と山本周五郎賞のW受賞を成し遂げつつミステリとしても高評価された時代小説。
まず直木賞は功労賞であり、何度もノミネートされた末に機が熟す…というかなんとなくそろそろ良いかという雰囲気になると受賞するもので(※偏見です)、一方の山本周五郎賞はその登竜門的な賞で、主に期待の若手が射止めることが多い(※私見です)。本来両立しないそれらを同時に獲得しただけでもすごいのに、それが紛うことなき本格ミステリなのだから恐れ入る。
一人称だけで描かれる実に達者な文章はもちろんのこと、語り手それぞれの波乱の人生模様の面白さ、一言もしゃべらない聞き手までもキャラを立たせ人物像を思い浮かばせる手腕、そして何より構成が極めて上手く、特にミステリとして見た時には読者にとって推理の材料が段々と揃って行くのがあまりにも上手すぎる。ことに第四幕でアレが出てきた時には「そういうことか!」と思わず快哉を叫んだ。
慣れない人には時代小説ならではのとっつきにくさはもちろんあるだろうが、それを乗り越えてでもぜひ読んで欲しい、傑作時代小説にして傑作ミステリであった。


23.12.21
評価:★★★★ 8
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