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ミステリ感想-『狐火の家』貴志祐介

2015年07月01日 | ミステリ感想
~あらすじ~
一足先に帰宅した娘が密室状態の自宅で死に、第一発見者の父が疑われる。榎本は事件を解決したかに見えたが、それはさらなる事件の始まりに過ぎなかった……狐火の家
ペットの毒蜘蛛に噛まれ死んだ男は、事故死ではなく殺されたのか? 未亡人と蜘蛛愛好家の友人、犯人はどちらか?……黒い牙
滞在していたホテルで刺殺されたプロ棋士。女流棋士の恋人が語る彼の人物像と現場の状況はかけ離れていた……盤端の迷宮
劇団の座長が殺された。現場にいた犬に嫌われた容疑者と、好かれているが犬アレルギーの容疑者。犯人は……犬のみぞ知る

08年本ミス10位


~感想~
「硝子のハンマー」で活躍した防犯ショップの店主兼泥棒(?)の榎本径と、敏腕だが天然気味の弁護士・青砥純子のコンビが短編集で再登場。「鍵のかかった部屋」の題名でドラマ化もされており今さら説明はいらないだろう。

個人的には長編だと物足りなく感じる作者だが、短編になると実に切れる。
いまどき古臭い密室にこだわった破格の作風ながら、防犯ショップ店主で泥棒のくせに機械トリックにはさほど頼らず、主に心理的な分析から真相に迫る榎本の推理も面白く、4編それぞれに趣向を凝らし飽きさせない。
特に「狐火の家」は長編ばりのプロットで表題作にふさわしく、また「黒い牙」は虫嫌いなら卒倒しかねないほど嫌で嫌でたまらないトリックで、恐るべきことにドラマ化されているのだがいったいどうやったのか今さら興味が湧いた。
残り2編も榎本がコロンボかあるいは古畑任三郎に転じたり、軽妙なユーモアミステリに描いたりと、4編そろって質の高い好短編集である。


15.6.18
評価:★★★☆ 7
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