バスの窓から九十九折りを望む。
眠りたいのに眠れない。
降りたバス停でお土産を買う。
軽さ重視だったのは許されるだろう。
駅までの5分はまた永遠の距離だった。
友人の1人とは渋谷まで一緒。
アスリートの友人はとても
気づかってくれた。
長閑な在来線、新幹線を乗り継ぐ。
なぜか大宮から在来線を指示した
緑の窓口のひとは正しかった。
ただひとつ、湘南新宿ラインの渋谷で
降りた場所はほとんど恵比寿だとは
教えてはくれなかった。
「もう大丈夫、先に行って。
ゆっくり行く。
奥さんによろしくね。」
膝が曲がらないと自然に足を
足を外側回して歩いている。
遠くない将来こんな風になる
のは覚悟しているけれど、
出来るだけ先のことでありたいから
少しでも半月板を労わった
左側の手すりに頼り、井の頭線に
たどり着く。またタクシーかを迷う。
流れを止めてはいけないと思う。
自分の力でたどり着かねばならない。
急行は止まらないけれど座ることが
先決だから急行を待つ。
力尽きたらそこからタクシーがある。
まだ諦めない自分を褒めた。
各駅停車に乗り換えようやく最寄りの駅に着く。
自宅まであと600mゆっくりゆっくり歩んだ。
運動したいけどもう出来ないかもしれない。
自宅が玄関の数cm以外はバリアフリー
なのをこれ程有難く感じたのは初めてだった。
お風呂で、今度こそはと足湯でなく膝まで浸かり、
車を仕事場に置いてきてしまっていること、
雨の中をギアチェンジしないで
バイクで行くほどの根性もないこと、
だけどタクシーだけは避けたい、
そんな事を思いながらまたビールを飲んだ。
頑張った自分へのご褒美は日本酒を少しだけ。
許されていいと思う。
色々な事を思いつつ、これでもかと
たくさん湿布を貼った。
早起きしてなんとか少し曲がる様に
なった膝を労わりつつ、出来るだけ
駅はエレベーターを使いクリニックへ
辿り着いた。
座って出来る仕事で良かったと
改めて思う。
ようやく仕事を終え、整形外科は終わって
しまった時間だからマッサージに向かう。
「左膝が」
不安をすぐに伝えるほど、こどもでは
ないけれど、
「いつもの倍の時間でお願い出来ますか?」
とだけは伝えた。
担当してもらってもう5年以上の施術の方に
任せた。覚悟しながら。
「今までで1番筋肉張ってますね。」
終わってみたら膝は曲がるし、
ちょっとだけは痛いけど歩けちゃう。
左膝外側半月板損傷→筋肉痛
に診断名を変更した。
整形外科医ではないから誤診とは
言われたくない。
言わないで欲しい。
昨日は東京ドームに行った。
階段のぼりおりした。
今日はもうこれ以上休めない
テニススクールに行けたから
たぶんきっと大丈夫。
これからは流れに身をまかさず、
Noと言える自分でいたい。
身体を鍛えると心底思う。
これで何度目なのかとかは
聞かないでいて欲しい。
奥日光、近くて綺麗な場所。
でも僕には、遠くて険しい場所。
おわり。