恒例の中国不妊症研修に今年も行ってきました。
その模様をレポートします!
◆黒竜江中医薬大学付属第一医院
今回の研修先はロシアとの国境、黒竜江省の省都・ハルビンにある黒竜江中医薬大学附属第一医院。中国でも有数の規模を誇る「国家臨床研究基地」として1日4000人もの患者さんが国内外から訪れています。中でも婦人科は古くから有名で不妊症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症や骨盤内炎症の研究や治療を得意とし、欧米との共同研究も数多くなされています。院長の孫先生によると>「中国におけるART(=体外・顕微授精)の成功率は約3割に過ぎないが、漢方との併用でその成功率は格段に上がる。」と中西結合治療の素晴らしさを説かれていました。
◆名老中医の経験とPCOSの講義
2日間にわたり朝8時から夕方5時まで、臨床研修や病棟見学、講義を受けました。1日目は「南の羅、北の韓」と名高い婦人科の老中医、父・韓百霊先生の教えを継承する継承者、
韓延華教授より代々受け継がれている
「韓氏婦科診治不妊症経験」を。2日目には長年PCOSを研究している
王秀霞教授より
「PCOSと胚胎停育(流産)に対する中医治療の理論と実践」を教えて頂きました。過去“南の羅”の継承者・広州中医薬大学の
羅頌平教授からもご指導ご教授頂いたことがあり、中医婦科の二大巨頭の教えを請えた大変貴重な機会となりました。
◆理想的な治療環境
PCOSに強い病院!ということから、多くのPCOSの臨床症例と病棟では当院でPCOSを克服し妊娠→流産兆候で入院中の方を見せて頂きました。PCOSは卵巣機能が弱いため、妊娠しづらく流産しやすい傾向にあります。初期流産が危ぶまれたものの、西洋薬と漢方のWサポートで8週までこぎつけ経過も順調とのこと。PCOSも流産も根本原因は腎虚と脾虚。漢方薬でしっかりと身体を補い、必要があればホルモン剤や注射を使う。理想的な環境がそこにはありました。
今回の研修では“基本”に立ち返ることの重要性と共に、新たな発見やヒントを得ることが出来ました。私たちの熱意が伝わってか、どの先生も忙しい中を惜しげもなく教えて下さいました。そのご厚意に感謝しつつ、一人でも多くの赤ちゃんが授かるよう私たちも日本で頑張ることが何よりの恩返し!と気持ちを新たにして帰路につきました。
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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
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多嚢胞性卵巣(PCO・PCOS)って?
生殖期女性の5~10%に認められ、卵胞発育不良や卵巣膜が硬いことから排卵しづらく不妊原因になります。不規則ながら排卵がある軽度~全く排卵できない重度のものまで様々。原因は不明ですが、内分泌や糖代謝異常との関連性が指摘されています。また、生活習慣病や定期的な子宮内膜の脱落がないことから子宮内膜がんを発症する“ハイリスク群”とされており、生涯にわたって注意が必要です。
【よく見られる症状・所見】
□月経異常(無排卵・稀発月経・無月経)
□不妊
□卵巣の多嚢胞状態
□血中男性ホルモン高値、LH>FSH
□毛深い
□にきび
□肥満 など
西洋医学では、妊娠希望の場合は薬物や手術で排卵誘発し、タイミングや体外授精などで妊娠を目指します。未婚・妊娠希望なしの場合は、内膜異常の予防も兼ねてピルなどで定期的に生理を起こします。
漢方では【補腎・活血・化痰】を中心に、体質とホルモンバランスを改善し、卵巣機能の正常化を図ります。不妊治療中の方も漢方との併用で治療がうまくいったり、自然妊娠する例も少なくありません!
日本不妊カウンセリング学会
認定カウンセラー
夏苅竜子
ながさきpress2015年9月掲載