内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

学生と一緒に文章を推敲する共同作業の醍醐味と喜び

2021-11-17 20:26:50 | 講義の余白から

 修士二年生になると修論の作成も本格化する。修士二年前期に私が担当している Technique d’expression écrite(文章表現技術)の演習では、毎年、修論の一部に相当する内容を日本語の小論文として書かせている。六回(各回二時間)なのでそれほど長いものは書かせられない。そもそも長ければいいというものでもない。約一月半で二〇〇〇字の小論文を書かせる。
 主題提示・タイトル決定・構成プランの作成から始まり、一回四〇〇字を目安に 、学生たちには毎週書けた部分を提出させる。それらに共通して見られる表現上の問題点や共有しておくに値する表現技術については学生全員と一緒に検討する。この共同検討作業に一回二時間の演習の前半一時間を充てる。その後、一人二〇分から三〇分の個別面談を行い、それぞれの学生の文章の問題点を、句読点の打ち方から始めて事細かに指摘しながら、一緒に推敲する。
 今年度の修士二年の登録学生は六名であるから、個人面談の時間をゆったりと取れる。とはいえ、毎回六人全員を教室で面談するだけの時間はない。直後に別の授業が入っているから定時に教室を出なくてはいけないし、授業後に予定がある学生もいるからである。
 そこで、教室で面談するのは三人に止め、残りの三人は遠隔で別の日に面談を行うことにした。今朝、その残りの三人のうちの二人の面談を遠隔で行った。昨年度、この同じ演習をすべて遠隔で行った経験もあり、遠隔の利点は実証済みである。今年は、教室での面談と遠隔の面談を交互にできるので、遠隔・対面それぞれの「いいとこ取り」ができる。
 学生たちは、自分が書いている修士論文について日本語で説明しようとするときに的確な表現を見つけられずに、もどかしい思いをしばしばしている。だから、私と一対一で話し合いながら日本語の文章を改善していくのは、彼らにとってとてもいい勉強になっている。そればかりでなく、推敲作業中、私の問いかけに応じて、学生たちは自分が表現したいこと、論文で論究したいことを、熱を込めて語ってくれる。そうすることで自分がいったい何を研究したいのか、彼ら自身にとってより明確になってくる。
 この演習方式を彼らは喜んでくれている。私もとても楽しい。私が教師として学生たちにしてあげられることは限られている。この演習では、その限られた能力を存分に発揮できることが嬉しく、ありがたく思っている。