旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

トランプ旋風

2016年11月12日 15時26分03秒 | エッセイ
トランプ旋風   

 アメリカの次期大統領がトランプに決まった。ぶッ魂消た。日本でトランプが勝つと思った人は100人に一人じゃないか。開票の日が偶々公休日だったので、TVで速報を見ていた。午前中はヒラリー優勢だったが、オハイオとフロリダでトランプ候補が僅差でリードしていた。僅か1%の差だが、この1%の差で最後まで行ってしまった。
 その内にニューヨーク・タイムズがトランプ勝利の確率60%と発表し、それが時間を追うごとに77%、95%と上がっていった。反トランプのNYタイムズが言うのだから間違いないし、実際に開票が進むとトランプの勝ちであることが明らかになっていった。16時ごろかな、大票田のフロリダをトランプが取って勝負あった。これが自国のことだったらどれ程心が痛んだことだろう。
 といってヒラリー・クリントンが好きだった訳ではない。ブッシュ・ブッシュ、クリントン・クリントン、今日と変わらぬ明日が4年も8年も続くのは苦痛だ。現状が楽しい訳じゃあない。トランプと比較してヒラリーが遥かにまし、まともだと思うだけだ。思えばオバマさんは良かった。この8年でアメリカは醜いアメリカ人の姿を余り見せなかった。まあ民主党の指名争いで、サンダースのじいさんがあれほど粘ったのを見ても、ヒラリー女史の嫌われ度はよく分かる。とはいえ、キム・ジョンウン、プーチンと中国共産党を喜ばせてどうする。まさかミャンマーの民主化・経済封鎖の解除には反対しないだろうが(反対する理由がない)、キューバとイランとの雪解けは白紙か。嫌な時代が来るものだ。年取ってからで良かった。
しかし今回の選挙結果をみて思った。やっぱアメリカはマッチョ好きだ。以前アメリカのホームドラマを見ていて驚いた。似ていないのに仲の良い2人の若者がいる。1人は繊細で頭の切れる美青年、もう1人はガキ大将が大きくなったようなカラッポ頭のアメフトマッチョ。当然美青年がもてるのかと思ったらギッチョンチョン。スポーツバカがもてまくり、美青年は見向きもされない。年上の大学生が唯一人、「あの子、クール」と滅茶少数派。あまりの感性の違いに唖然とした。話しの筋がこんがらがってしまった。地方都市では100人中99人の女が美青年よりスポーツバカを選び、それが当たり前とは。何の疑問も違和感も無いとは。
そう言えばフランス映画に時々、軽佻浮薄を絵に描いたようなチンピラ、もしくはスケコマシが二枚目として出てくる。蓼食う虫も好き好き、は対象が男の場合もあるのね。昔の上司が言った。「俺、顔はアイドル、体は電信柱が理想だ。ほらこう、両手を廻しても手が組めないような。」ヒエー。話しがずれた。
さて今回の選挙でアメリカの負った傷は深い。オバマ大統領の演説を聞いて側近が泣いている。そりゃそーだろーよ、あんたら年内で失業だ。今後4年or8年は良い目がありそうにない。トランプを今まで散々バカにしてきた政治家や実業家、TV局やスターがこれから節操なくすり寄って行くのか、醜いこと。レディーガガだけは靡きそうにないが。すでに日本の知識人だか評論家だかは、一日で論調が変わってきている。醜悪の極みだな。節操の無い、男芸者か。
とはいえ相手は世界一の軍隊の最高司令官、議会も与党の米国大統領で、核ミサイルの発射ボタンを持ち歩いている。この世にある中で最高の権力者だ。ローマ法王なんか比じゃあない。それが人種差別、偏見、狭い自国中心のセクハラ&パワハラ親父とは情けない。ここまで僅差だと止めを刺したFBI長官の責任は大きい。さよならヒラリー、あそこまで行って半歩及ばなかった彼女が気の毒には思う。もう浮世からは消えて行くのね。せめて国務長官をやっておいて良かった。

ちょっと得票から分析してみるよ。まず総得票ではヒラリーが勝っていた。今さらだが。ヒラリー 47.7%、トランプ 47.5%。両方を足して100%にならないのは、少数派の緑の党とかがいるためだ。

所得水準で貧困層は、 ヒラリー  トランプ
3万ドル以下 :  41% 53%
3~5万ドル :      42% 51%
特にプアーホワイトはトランプ支持が顕著に出ている。中間層・富裕層では差は1-2%だがトランプが上回る。超富裕層は2%の差をつけてトランプ支持。何故大金持ちはトランプなのかな。同類に親近感を抱くのか。

男性全体では53%がトランプ、女性全体では54%がヒラリー。年齢別では46歳以上の53%がトランプ、29歳以下の55%がヒラリーを支持した。

小さな町/地方部の居住者の62%はトランプ支持、人口5万人以上の都市居住者の59%がヒラリー支持。今回世論調査がいかに当てにならないかが露呈したが、人口5万人以下の人々の意見などは取り上げなかっただろう。進化論を否定する人々は調査に対象に選ばれなかっただろう。もっとも恥ずかしいからトランプ支持とは言わないけれど実は、という連中も結構いたのだろう。

人種別にみると、ヒラリー支持は黒人の88%、ヒスパニック/ラテン・アメリカ系の65%。2-300年前に奴隷としてアフリカから連れてこられた先祖を持つ黒人が、どれほど差別に苦しめられてきたかが分かる。ただヒラリー陣営は黒人の投票率を最後まで気にしていた。意外なのはヒスパニック/ラテン系の支持が65%に留まることだ。30%ほどの人がトランプを支持した。定住して数世代経ち、考え方がいわゆるWASP(White Anglo Sakson Protestant)化したのか。或いは渡米したのは最近でも成功したので、これ以上同族に入って来て欲しくはない、と考えるのか。単に多様化した考えを自由に持つ人達なのか。ヒスパニック系と一くくりにするのが間違いなのか。

しかし自分が思うに、ヒラリーさん最大の敗因は女性票にあると思う。女性全体では54%の支持を受けたが、白人女性に限ると以下の数字だ。
白人女性   ヒラリー   トランプ
45歳以下    43% 53%
45~65歳    39% 58%

そして今さらだが、若年女性の7割はサンダースを支持した。女は女性大統領が嫌なのか、ヒラリーが嫌いなのか。多分両方という人が多いのだろう。ここまで白人女性にNoを突き付けられたのが、最大の敗因だと自分は思う。女の敵は女だった。
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比較の言い回し

2016年11月08日 17時59分43秒 | エッセイ
比較の言い回し   

 一盗二婢三妓四娼五妻、まあ女性が見たら眉をひそめること請け合い。でもこの言葉を知った時、大人の世界は何て深くて醜く面白いんだろうと思った。男が女をチョメチョメする際の快楽の順位だ。一位は盗妻、人の妻を盗むこと。不倫の味は蜜の味という訳だ。二位は女中、メイドさんをやっちゃうこと。パワハラ最高、悪代官万歳、フッフッフ、越後屋お主も悪よのー。タブーを犯すことほど快楽が上だと言っている。
 三位の妓は古くは吉原の遊女、赤線の女、今ならバーのホステス(これも古いが妓が古いので仕方がない)を含めても良い。そのホステスさんなり芸者なりを囲って、おメカケ、二号にすると格が落ちて四位になる。安定して妻に近づくとつまらなくなっちまう。
 最低ランクは妻だが、同じ妻が人の妻だと大ドンデン返しで一位に昇格。同じ女なのに家庭にいるか、外で密会するかで最低から最高へと化ける。そこが面白い。セックスはいかに幻想・妄想かと分かる。女は女装し、男は幻想の女を抱く。
 こんな言い回しもある。男の甲斐性は、「アメリカの家に住み、中国人のコックを雇って日本人を妻にし、フランス人の情婦を作る。」ことなんだと。また「フランス語で恋を語り、ドイツ語で神を説き、英語で演説をし、ロシア語で馬を叱る。」「フランス人が作曲し、ドイツ人が演奏しイタリア人が歌い、イギリス人が聞き、アメリカ人が金を払う。」
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攻城戦・籠城戦 

2016年11月08日 17時59分13秒 | エッセイ
攻城戦・籠城戦   

 日本の城は、特に天守閣は美しいが堅固さではいかがなものか。都市全体を城壁で囲った小田原城は3ヶ月保った。さすがは名城、しかし実質的な戦闘は行われていない。大坂冬の陣で徳川軍を寄せ付けなかった大坂城も、4重の堀を埋め立てられたら防御の役には立たなかった。世界中の城攻めで使われている投石機が、日本の戦場では出てこない。石垣を崩すよりはよじ登るか、トンネルを掘って下から破壊している。
 秀吉は城攻めがうまい。三木城の水攻め・干し殺し、鳥取城の飢え殺し。鳥取では攻略の前に、2倍の価格で近隣の米を買い取り、城兵は兵糧米を持ち出して売りに出した。秀吉は城下に付け火をして、多くの農民を城に追い込んで兵糧の消費を促した。この卓越した作戦は、軍師・黒田官兵衛が考えたのだろうが、軍師の提案を即座に採用し大金を投じた秀吉は凄い。
 あと日本で有名な城攻めといったら、古くは楠正成の千早城。武田勝頼の高天神城攻略。九州では高橋紹運が押し寄せる数万の島津軍を引きつけて、足軽まで763人全員が討死した岩屋城の戦いかな。近代では加藤清正が精魂注いだ熊本城が、大砲を持つ西郷軍の猛攻を耐え抜いた。元々清正は島津の攻撃を想定して城を築いたのだから、してやったりだ。しかし地震には勝てずに、相当な被害を受けた。天災では致し方ない。秀吉の長浜城も地震で全壊している。
 さて籠城と言えば、島原の乱のキリシタンは原城に籠り、幕府軍をしばしば敗走させ女子供も含めて37,000人全員が死んだ。正規軍ではなく援軍の見込みもないのに、実によく戦っている。しかし日本で最も長く激しく戦ったのは、石山本願寺VS織田信長の石山合戦だろう。実に11年の長きに渡って戦った。戦国最大の大戦と言える。生き残りをかけた死闘で、どちらが勝ってもおかしくは無かった。大抵の戦闘では、雑賀鉄砲衆の活躍もあって本願寺が勝っていたが、最後の第二次木津川沖海戦において、信長が考案した鉄甲を装備した甲鉄船の出現により勝敗が決した。石山方が勝って信長が敗死していたら、日本の歴史はいったいどうなっていたのだろう。
石山の地は今の大坂城がある地点だ。川によって京都・奈良に通じ、港を介して海(海外)に繋がっている要害の地だ。信長はここがどうしても欲しかった。大坂は信長が手に入れ、秀吉が育てた。

さて外国を見てみよう。攻城戦には巨大な投石機と共に奇抜な手段の攻城法が見られる。

*トロイの戦い – 神話と考古学がごっちゃになっている。トロイの木馬は実にユニークな攻城法だが、事実なのか物語なのかは不明だ。城に引っ張り込まないで、海岸で燃やしてしまえば良かったのに。木馬が登場するまで、ギリシャ軍は10年攻めても城を落とせなかったのだ。

*コンスタンチノープルの陥落
この城の落城は即ち、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の滅亡であった。この城は凄まじい城壁と2重の深い堀を持つ難攻不落の城であったが、籠城方の兵力は7千人と、守るのがやっとというほど少なかった。10万の精兵を率いて城を攻めたオスマン帝国のメフメト2世は、まだ21歳の青年であったが、ハンガリー人のウルヴァンの巨砲を採用して製造するなど、周到な準備をしていた。
数には勝るが海戦に弱い艦隊を抱え、太い鉄鎖で封鎖された金角湾に突入出来なかった。ここでメフメト2世はとんでもない奇策を思いつく。艦隊の山越えだ。一夜にして内湾にオスマン帝国の大艦隊が出現し、籠城方は意気消沈した。衝撃は小田原の一夜城の比ではない。山は大げさだが丘にレールのようなものを敷き、丸太を並べオリーブオイルを惜しげもなく注いだ。滑りを良くして軽くした船を引っ張り上げたのだ。下りは自重でゴロゴロとレールの上を滑り、ドボンと海上に浮かんだ。

* 鄭成功の台湾攻略
 鄭成功は追い詰められていた。明の復興を旗印に清と戦ってきたが、台風で多くの船を失い、根拠地アモイを清の大軍に攻められて落城しようとしていた。家光の時代の日本幕府に援軍を頼んだが、結局拒否された。彼は母親が日本人で、幼名を福松という。日本からは数百人の牢人が、義勇軍として来ただけだった。しかしこの日本人傭兵隊は鉄の面をつけ、精鋭部隊となって活躍した。
 四面楚歌の鄭成功は台湾に目をつけた。当時の台湾は台南を中心としてオランダに占領されていた。オランダ軍は二つの砦を持ち、湾には岩礁が点在し、その多くが海面下に隠れているためルートを知らずに接近する船は必ず座礁する、天然の要害となっていた。100隻余のジャンク船に2万5千の部下の海賊を乗せた鄭成功は、地元の漁師の言葉を信じて湾に乗り入れた。年に2回の特大大潮の日の満潮時に一直線となって、海中の岩礁の上を乗り越えて湾内に突入した。
 勢いにのってプロヴィンシャ城を攻め落とした。ところがゼーランディア城のオランダ人は援軍の無い中、1年近く耐え1,600人の戦病死を出しながらも籠城を続けた。最期は交渉によって名誉ある撤退を行ったが、実に良く戦った。
 残念なことに鄭成功は台湾占領から半年で熱病死し、鄭氏の台湾支配は3代23年で終わる。その後は薩摩そして日本帝国に占領されるまで清領となった。オランダは舞い戻っては来なかった。台湾のオランダ支配は38年で終わっている。インドネシアがその後数百年、第二次大戦後までオランダに搾取されたのとは大きな違いだ。清朝の支配は圧政ではない。白人に屈するよりは遥かに居心地のよい数百年を送ることが出来たのは、鄭成功のおかげだ。

* 他にも聖ヨハネ騎士団VSオスマン帝国のロードス島包囲戦、オスマン帝国が2度に渡って攻め込んだ第一次、第二次ウィーン包囲戦。日露戦争の旅順要塞攻囲戦等が有名なところか。
 長く保ったといえば、モンゴル軍がエルブルツ山脈山上、イスラム教イスマイリ派ニザリ教団の要塞を攻め、その一つは断崖絶壁、攻め口が全くなく14年も包囲を続けた。籠城方は唯一の通路を見張るだけでよく、食糧は未だ数十年分残っている。水は雨雪を溜めて使ったのか。しかし14年の間に衣服が擦り切れて補充がきかず、ついには凍死するようになったので降伏した。全く外部との接触がない中では最長の籠城記録かと思う。
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転校生

2016年11月05日 16時40分54秒 | エッセイ
転校生   

 転校生はせつない。新しい街・学校に一人で移って行くのは、本人が一番辛いだろうが残された方も悲しい。仲の良い友達と突然引き離された心の傷は、大人になっても時に疼く。
 その娘は確か小学校の3年生の春に転校してきて、5年になる春に去った。偶々2年間一緒で仲が良かった。もっとも彼女は明るくて面白くて、誰からも好かれていた。名前を加藤xx子と云う。名前の方はアヤフヤだ。なにしろ40年前の話だ。彼女のお父さんは海上自衛隊で、海辺の街を2~3年置きに転勤する。
 これは子供の身には辛い。せっかく友達になっても、長くて3年先の別れが見えている。彼女が横浜を出て向かった先は青森県の八戸だった。八戸なんて地名を始めて知った。その後どんな街だろうと、よく想像した。とても仲よしだったので1~2度手紙を出したと思うが、結局それきりになった。小学5年に文通は難しい。彼女も今までの経験からその事は知っていたに違いない。
 彼女が初恋の相手だった訳ではない。他に好きな子がいた。彼女とはふざけ合って楽しく遊ぶ親友だったんだ。毎朝会って言葉を交わすだけで心が浮き立つ。一緒にいるだけで楽しい、友達として大好きだったんだよ。それが急に断ち切られるとは思わなかった。彼女は内心はともかく、意外とアッサリ淡々として去って行った。直前に転校を知らされた自分達のほうが呆然としたものだ。
 40代で一度、小学校の同窓会がポっと行われたが、彼女は当然来ない。6年生の時のクラスが中心だからね。その時集まった男たちに話をした。「4年の終わりの春に転校していった元気な女の子がいたろ、覚えている?」「加藤xx子だろ、当たり前じゃない。」皆んなが彼女を覚えていた。彼女のことを好きだったのは、俺だけじゃあなかったんだ。
 加藤さん、どんな人生を過ごしてきたの。あれほど深く人の心を掴む女性に、その後の人生でもそうは会わなかった。
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完熟ゴーヤ

2016年11月02日 17時26分46秒 | エッセイ
完熟ゴーヤ

 狭いスペースの庭を2回耕し、肥料を埋め込んだ。耕したのは自分なので、何を植えるのかは決めてよい、と言われた。誰にかって、カミさんに。
んっ?これって体よくこき使われているだけなのでは?今年の4月頃の話だ。
 何を植えるか、食える物に決まっている。だがヘチマと大瓢箪も捨てがたい。ヘチマとひょうたんも若い内は食えるが、保守的なカミさんは絶対に調理しない。瓢箪は以前すごく繁殖して30cmを越えるのがいくつも出来、電線にまで伸びていった。瓢箪の実が古くなり乾いてから採って水に漬ける。中身を腐らせて突いて出す。なかなか立派な瓢箪水筒(酔拳みたいに酒を入れる?)がいくつか出来たが、使い道はなくどこかに仕舞われた。
 ヘチマは中途半端に採ってしまうとイカン。これも徹底的に枯れるくらいまでぶら下げておくこと。水に4-5日漬けておくと、きれいに繊維部分が残ってヘチマスポンジになる。40cmはある立派なものだが、結局使わなかった。これじゃー意味がない。うわっ、関係無いヘチマと瓢箪の話、長かったー。
 結局つる物は無難なところでゴーヤにした。ゴーヤならほぼ確実に収穫出来るし、2階のベランダにまで葉が伸びれば楽しい。大ヘチマと大瓢箪なら見た目、もっと楽しいが。キューリは必須だ、当たり前。「今日のサラダもうちで採れたキューリ」とかカミさんが言いだすのが、うっとうしくも嬉しい。最初に出来る化け物ウリのような、つるつるの巨大キューリが下草の中から姿を現すのも楽しい。これは一夜漬けにしてバリバリと食う。
 茄子、これは獲物としてはキューリ2本分に相当する。料理のバリエーションも多くて、歓迎されるアイテムなのだが、中々育たない、難しい。今回植えられる苗は、間隔を考えると8~9、茄子はうまく実らないからいらないよ、と言われたがまあ一つは欲しいな。近所のDo it yourselfの店に行ったが、野菜コーナーが意外と冴えない。ゴールデンウィーク前だからか。結局ゴーヤx1、茄子x1、キューリx4、トマトx4を買った。
 他に唐辛子、ピーマン、トウモロコシ、シシトウ等が候補だ。あとカボチャ、これはもし小さいのが出来たとしても、きっと美味くない。トウモロコシは何本も植えないと駄目。ピーマンはそもそも好きじゃあない。まあピーマンも完熟して赤ピーマン(パプリカは別種のピーマン)になれば一段昇格、幕の内。それでも嬉しくはない。好きにならない、美味いか、あれ。
 シシトウや唐辛子は収穫出来ても数本でつまらん。紫蘇は元々植えてある。トマトも好きじゃあないが、確実に収穫出来て、しかも実のなる期間が長い。キューリは挿し木の苗、トマトは大玉x1(結局実らなかった)、ミニx3(赤、尖った橙色、黄色)。結果キューリは4本中3本で実がなったが、収穫最盛期は短く今一つ物足らなかった。茄子はやはり草が伸びず、葉が虫に食われて穴だらけになり、ひねた茄子が1-2ヶ。ミニトマトは実り、毎日食うハメになった。11月に入るが未だちょっと生る。
 ズッキーニならどうよ。ズッキーニは種から植える。これも雑草のように繁茂して実をつけるが、場所をとってイカン。それにズッキーニは(少なくとも家で採れたのは)キューリほど瑞々しくない。うちでは格下扱いだ。幕下か序二段、ゴメンね。
 大収穫はゴーヤだ。何故か一つの苗が二股に伸び、2階のベランダに届いた。黄色い花が咲き、次々に実がなった。今年の夏はニガウリ三昧。ベランダで手を伸ばして収穫したのも5-6ヶある。そのまま調理すると激しく苦いが、水に晒すとマイルドになる。しっかし苦い味を楽しむなんて変態かもね。苦いヤバい、で口から吐き出す子供が正しい。紫イモとかアケビとか、紫っていったら食物が腐った時の色だから、本能で避けるのが人間。
 ゴーヤは葉が茂って、一本の苗から成長したとは思えないほど幅を利かし、隣のトマトとキューリを浸食して局部的ジャングルと化した。こうなると緑の実を見つけるのが難しい。特に自分はちょっと庭にいると4-5ヶ所蚊に食われる。カイーよ。実生活でこれだけメスに好かれたら楽しいのだが。葉に隠れて見落としたゴーヤは黄色くなってしまう。この黄色くなったゴーヤを棄ててしまったが、あれは間違いだった。黄色く熟したゴーヤは食える。しかも苦くはないらしい。
 そーか、ゴーヤは熟すまで鳥に食われないように保護色をして、俺を食うのか、苦いゾ、苦いゾと言っている訳だ。熟したら黄色く目立って、あたしを食べて。しかし鳥に味覚はあるのか。何か丸飲みのイメージだが。ではゴーヤは南方の植物だから、リスやサルに向かって苦いゾ・もういいのよコールを送っているのか。はっきり言えよ、ゴーヤ。
 採り忘れて完熟したゴーヤを見て魂消た。こりゃー悪魔の花じゃー。真黄色の実は熟し過ぎてパカっと口が裂け、下半身が破裂している。そこから毒々しい赤い実がオレンジ色の果肉の中、ねっとりとしたゼリー状の果液にブツブツと浮かんでいる。毒液、もとい果液は溢れてツツーと垂れ下がっている。地獄の実だ。ハーっと瘴気を吐き出しそうだ。虫でも獣でも殺しそうな勢いだ。とても食ってみようなどとは思わず、実の根本を切って叩き落とした。ベチャ。すげーインパクトだった。流石は南方の草だこと。
 ところが最近、ネットを見て知った、甘いんだと。あの赤い種の周りのゼリー状の果肉は上等なメロンの味がするそうだ。種は食えずに捨てるらしい。でもあれを食うのはちと勇気がいる。今度チャンスがあったら試してみよう。
 何事も智識だ。植物に詳しい人にはサバイバルの技術がある。薬草に詳しければ呪い師になれる。ハコフグと針千本には毒が無い。いやハコフグはまれに毒を持つので要注意。ゴム製の救命ボートに乗って50日だか漂流した人の本を読んだが、針千本を仕留めてクソ、フグかよと遠くにぶん投げていた。ボートに穴が開いたら困るしね。でも食えたのよ。沖縄では御馳走。
 海水も少々なら飲んでも良いのだ。『1日に800mlなら海水をそのまま飲んでも5日は死なない。』という。飲まなきゃ3日ともたない。また『海水1に対して真水2の割合で薄めれば海水も害はなく、生き延びることに寄与する。』そうだ。ただ個人差があるから、実験は自己責任で。サバイバルはプラス思考と意志が物をいう。
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