旅とエッセイ 胡蝶の夢

ヤンゴン在住。ミラクルワールド、ミャンマーの魅力を発信します。

今は、横浜で引きこもり。

第一印象

2016年11月26日 18時26分57秒 | エッセイ
第一印象   

 年を経て利口になったことが一つある。人と始めて会って最初に抱いた印象が、大きく外れることが少なくなった。学生の時は、インド旅行等の例外は除いてそんなに悪意のある人物と出会うことがなかった。それでも最初からテンションが高くて調子の良い男に簡単に乗せられて、後で激しく後悔した事はあった。
 社会に出ると、最初から騙してやろう、食いものにしてやる、と接してくる人間(大抵は男)がいて驚いた。そんな悪は案外、外面がすこぶる良かったりする。逆に最初に会った時の印象が極端に悪い奴と、時間をかけて親しい友人になったりもした。人は見かけでは分からん。でも最初からあまりに調子が良いのは、警戒するにこしたことはない。
 最初の初任給をだまし取られた。5万円貸して、すぐ返すから。手伝いで仕事に来ていた男に貸した。車の運転などで結構世話になっていたし、悪い奴には見えなかった。催促すると2万円だけ返してきた。勤務地が離れ、暫くぶりに本社に帰ると奴は辞めていた。直ぐに自宅に電話した。「君は誰だね、息子のことはワシは知らん。」「お父さんですか、すみません。」焦った。しかし後で考えるとあの声は若すぎる。本人だったに違いない。また直ぐに地方出張になり、結局3万円盗られた。初任給もらったら、少しでも親に渡すものよ、と母親に怒られた。くそ、サギ野郎め、社会人初月に騙しやがって。
 中国に商売に行って、向こうで知り合った好青年はこう言った。「自分には兄弟がいません。貴方のことをお兄さんと思って宜しいですか?」こう言われて自分はグっと構え、一気に100m下がった。「こいつ、会ったばかりなのに何を考えているんだろう。何か意図を持って言っているのか。」こう疑う結構嫌な性格になった。結局その青年とは二度と会わなかったから、案外本心だったのかもしれない、ゴメンね。
 今は最初から判断を下さないようにしている。「随分と無口だこと。結構中身のある奴なのかもね。」「こんな風に最初から馬鹿丁寧なのは、今までの経験からしたらろくなことはないが、まあ判断するのはもう少し待とう。」余裕が出てきたのか、激しい商売の場にいないからなのか。
 ただこんな事を書いていると、想像を上回る達者な役者に出会ってコロっと騙されるかもしれない。人との出会いは恐ろしくも面白い。

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