旅とエッセイ 胡蝶の夢

ヤンゴン在住。ミラクルワールド、ミャンマーの魅力を発信します。

今は、横浜で引きこもり。

ニイニイ先生の子犬救出劇

2020年02月25日 11時42分30秒 | 写真館
ニイニイ先生の子犬救出劇

 ニイニイさんは、我校の英語の先生である。誰が見ても美人さんだ。でも、のんびり屋の多いビルマ族の中でも、これほどマイページな人も珍しい。
 自分と先生たちは、お互いに先生であり生徒だ。ミャンマー語と日本語を相互に教えあう。ニイニイさんが生徒の時、大きな欠伸、次にあろうことか居眠りを始めた。スー、カックン。くそ、そんなにつまらなかったかよ。闘志を燃やして、マンガを教材にしたりした。
  ニイニイさんは、いつも変な座り方。どんなに小さい椅子でも器用にあぐらをかく。
 ニイニイさんは、兄弟姉妹も多い(お姉さんがまた美人。スースーとかピューピュー:仮名。とか二文字が多い)が、いとこも多い。22人いるそうだ。だからたいていの探し物や調べ事は、いとこに聞いてみるね、で事足りる。
 一緒に外出した時、電車に乗ったことが無いという。これ、どうやって乗るの?あなた、ミャンマー人でしょうが。外国人の自分が乗り方教えてどうするの。お嬢さんなんだから。
 今まで行ったイベントは、全てニイニイさんに助けてもらった。ニイニイさんは、おもてなし好きで、楽しいことが大好き。特に食べ物関連のイベントは、彼女に任せるに限る。近所の食べ物屋情報に詳しい。あの麺ならどこ。ケーキは、チーズケーキならあそこ、デコレーションならどこそこ。
 ニイニイさんは、占いイベントの用意をほとんど一人でこなした。安い仏具にテーブルクロス。金の立派な仏像。控室のお茶セットとお菓子。仏像は、占い師さんから借りたのだと思っていたら、あれ、彼氏に持ってきてもらった。そう、残念でした。彼女には格好良い彼氏がいる。
 凄いなニイニイさん。でも二階の階段上を仕切るカーテンが、ツンツルテンでした。ニイニイさん、メジャーで測っていたのに何故?ここいらへんがご愛敬。
 信じられないのだが、一番痩せているニイニイさんが一番大食いなんだ。彼女の弁当はとにかくでかい。よく食うわ食うわ。おしゃべりしながら、次々と平らげる。見ていて壮観。他の先生は、ダイエットとかいって小さい弁当箱だが(結局おかずを分け合うので一緒)、ニイニイさんのはでかい。
 ニイニイさんの笑い声が好きだ。まず両の眉毛がグインと動き、両端が思いっきり下がる。口がすぼまり、ニーっと開く。ケヘヘヘヘ、のような声。いーなー、ニイニイさんの笑い声。この笑い声はそう簡単には出ない。普段は、エヘヘ程度だ。
 自分の漢字のレッスン。ニイニイさんが、「えっと、これは"れ"でしょ。これは"ね"。」「あのねニイニイさん、これは漢字のレッスン。ひらがなのレッスンではないの。」するとでた。ケヘヘヘヘ。


 本題に入るよ。スズキさんが、朝言っていた。「昨夜は、眠れませんでした。出産なのか、犬が一晩中騒いでうるさくて。」昼頃、キッチンの外が喧しい。子犬がキャンキャンと鳴き止まない。何だ、何? キッチンの窓を開けるが、身を乗り出しても分からない。っていうか、窓を開けると、こんなに明るかったの。
 子犬が集まっているのだが、何が起きているのかは見えない。母犬もウロウロしている。キッチンからは鉄枠がはめられていて、表に出られないのだ。するとニイニイさんが動いた。学校の脇の狭い通路を塞いでいる薄い扉によじ登り、スルスルと向こう側に降りてゆく。えー、ここを通るの?
 わっ、でも学校の内側からは出られない。自分もやっと乗り越えた。扉の内側に枠があって助かった。サンダル履きじゃあきついよ、これ。
 行ってみて状況は直ぐに分かった。排水溝の向こうの小さな隙間、その向こうに子犬が取り残されている。この小さな出入り口は子犬でしか通れない。でもその先の通路は塞がっている。出るに出られず、か。
 手を伸ばして子犬を抱き上げようとすると、子犬は後ずさる。母犬が近づいてきて唸り声を出す。ニイニイさんは、中にいる先生たちに声を掛けた。するとゴミ箱をあさったりして、食べ物がビニール袋で渡された。
 何をするの、ニイニイさん。彼女は食べ物を地面に置いた。警戒して行ったり来たりする母犬が、その匂いに釣られて近づき食べ始めた。もっと、もっと食べ物を。食べ物は追加される。そこに子犬の集団が来た。5-6匹のコロコロした子犬軍団だ。するとニイニイさんの目じりがキューと下がる。お顔に笑顔が浮かぶが、ニイニイさん今はそれどころでは。
 おっぱいの張った母犬は、なかなか警戒を解かない。もっと何か食べ物はない?
ついにとうもろこしの半分が投げ込まれた。それ、自分が今朝圧力炊飯器で調理したやつじゃん。結局、犬はとうもろこしを食べなかった。もったいない。
 これで思い出した。七人の侍の最初のころにこんなシーンがあったな。子供を人質に立てこもった盗賊がいた。志村喬が頭を丸めてお坊さんに扮し、お握りを持って近づく。お握りを受け取って意識が散ったすきに、子どもを引っ張り出してグサっ。
 でもニイニイさん、これ何で子犬の出入り口の近くに置くの?もっと離れた所にすれば良いのに。結局、腹を満たしてちょっと落ち着いた母犬を自分が見張り、ニイニイさんが、出入り口の壁を乗り越えて子犬を救出した。その間、約20分。



この隙間の向こうに行ってしまった。



ニイニイさんは、ここを乗り越えた。


  格好良かったなー、ニイニイさん。若い先生たちの間では、一番年長なのに全然威張らない。主導権を取ろうとしない。
 ニイニイさんは生徒に人気があるから、いつもレッスンは一杯。でも人一倍レッスンの準備とシュミレーションをするニイニイさん。
 この文を書いてもいい?って聞いたら、何で?当たり前でしょ。日本人は子犬を助けないの?でもOKしてくれました。


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