kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

映画批評、恐怖夜話、あらゆる

告知をユルく描いて書いてます。

泊まり込み 7

2006年07月31日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「きゃっ!!」

振り返ると3mぐらい離れた所にブタが物言いたげに立っている。
やはり、あの時、私を見ていたのだ。
しかし、コンビニの制服でこんな所まで来てもいいのか?

あの浮浪者はブタを見て、なぜあんなに怯えて逃げたのだろうか。
それとも、ブタの方に何かが取り憑いているのが見えたのだろうか。

「そんな所に突っ立ってたら驚くじゃない!……な、何なのよ。……」

ブタはゼイゼイ言いながら、恨めしそうに彼女を凝視して微動だにしない。
顔中の大粒の汗が競争するかのように、頬をつたって地面に落ちる。

「何!? 何か言いなさいよ!」

ブタはいつものようにぼそぼそと呟く。暑い中、ほとんど聞き取れない言葉に
いらだち、今まで溜まっていたストレスを一気にぶちまけた。

「キモいんだよ!ババァ! 用がないんなら、さっさとどっかに行けよ!」

ブタは一瞬うなだれたように首を傾げた。「ふぅ~、ふご、ふぅ~、ふご」
太っていて器官を圧迫されているのか、鼻が悪いのか解らないが、正に豚の
息づかいそのものに聞こえる。状況は非常に滑稽であるが、気持ち悪さの方が
勝っていた。彼女はこの場を早く立ち去ろうと思った。ブタを無視して歩き
出そうとした時に、ブタが巨体とは思えぬ素早い動きで彼女に突進して来た。
ブタが近づくにつれ、明確になる言葉。それは聞いても意味がわからなかった。

「このぼけえええ!!なんできたんやあああ!!なんでやあああ!!」


「なぜ来た」と言う言葉の意味を考える時間などなく、ブタの形相を見た
彼女は足がすくんで逃げる事ができなかった。身構えたが遅く、状況を
把握できないまま、ブタに捕まってしまった。ブタのヌルい汗が飛び散り、
彼女の顔にかかる。強力な握力で彼女の腕をつかんでいるその手は水で
濡らしたように汗で湿っている。ブタから出る口臭と体臭はドブ川の臭い
に感じられた。彼女は不快極まりない人間に揺さぶられながら、意味不明
の恨み言を言われる。腹立たしさが体の奥から溢れ出てきた彼女は、渾身の
力を持って、ブタの腹にヒザ蹴りをする。ゲフッと喘いだ時に、唾が顔に
かかる。彼女にとってそれは効果的であった。嫌悪感に怒りが増長されて
ヒザ蹴りの応酬が始まった。怪力の女も腹を守る為に手を緩める事になる。

「てめぇ!!離せよ!キモいんだよっ!離せ!」
「ぼけがあああ!くそおおお!ぼけがあああ!」

ブタの手が彼女から離れた瞬間に、顔面に平手を打つ。唸りながらよろめく
ブタ。その隙に彼女は一目散に逃げる。顔を拭うのは汗と怒りの涙だった。









あれ? 霊じゃないの?                 ボスヒコ


泊まり込み 6

2006年07月30日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

公園を挟んだ向こうにもコンビニがある。都会にしては割と広い公園だった。
グラウンドも整備されているし、暗い所が出来ない様に照明もまんべんなく
配置されている。段ボールの家や青いビニールシートの家は比較的少ない。
私は近道と安全の為に公園の中を突っ切ってコンビニへと向かう事にした。

夜食とビールを多めに買い込んで店を出た。幾分落ち着いたが、まだ帰る
勇気がない。公園でハトのフンが付いていないまともなベンチを見つけて
ビールを呑む為に腰掛ける。一口呑んだ口当たりのよさに、ついため息が
出る。まだ夜中の1時。朝まではまだまだ時間がある。この近所に友達も
いないし、車で駆けつけてくれる彼氏もいない。やはり選択は1つだった。

ビールを1本呑み終える頃には、多少度胸も出て来た。気合いを入れて
立ち上がった。マーチを行進するかのように力強い足どりでビルに向かう。

10mぐらい先にワンカップ片手に酔っぱらっている浮浪者がヨロヨロと
歩いている。彼はにやにやしながらワンカップの中身を見ている。そして
酒を啜るように呑んだ後、私の方を見た。しばらく虚ろな目で私を見ていた
が、しだいに息づかいが荒くなってきた。少し酔っているのと、相手が
老いぼれで酔いどれなのであまり恐くはなかった。充分に逃げれる間隔で
私は足を止めた。「…はぁ、はぁ、はぁ、」浮浪者の肩が大きく動き出す。
大事なはずのワンカップを地面に落とした。浮浪者の酔いはもう醒めている。

「わっ!あああ!!やめろぉ、やめろぉぉぉぉっ!!!」

私が何をしたって言うの? 



「あああ!!く、来るなっ!来るなっ!ひいぃっ!」

何!? ひょっとして、私に何か憑いているのが見えるの!?



浮浪者は足を引きずりながら逃げて行く。私はやっと彼の恐怖の対象が
自分でないのが解った。全身に鳥肌が立つ。私はゆっくり振り向いた。




ブタがいた。














げっ!?どうなるんでしょうか? それは明日のお楽しみ! ボスヒコ

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泊まり込み 5

2006年07月29日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

最初は足音の主が乗っていると思ったが、降下してきたエレベーターには
誰も乗っていなかった。今は扉が一定時間開いた後、閉まった状態でいる。

無人のエレベーターが勝手に動く理由など、考えればたくさんあるし、今は
疲れているので理由なんてどうでも良かった。家で寝ていたい…。バイトの
レベルに近い駆け出しのフリーライターにとって、“休み”などない。どんな
仕事でもやりこなさなければ即、解雇だ。しかも大事な特集ページの締め
切りが迫っている。どうしても4階に行かなければ。最悪、コンビニの前で
朝まで過ごすしかない。時間の無駄と体力の浪費なのは解っているのだが、
恐怖で何も考える事が出来ない。階段の足音、勝手に動くエレベーター、2階
の影、恐ろしい手。一気に襲ってくる恐怖現象に震えながら、外の空気を
吸おうと外に出る。あ、しまった。さっきの騒動で階段にコンビニで買った
物を置いて来てしまった。すぐに取りに行けば、おにぎりとかは少々形が
崩れているだけで食べれるだろうが……。無理だ。まだあそこには行けない。
この暑さではしばらくしたら傷んで食べれなくなる。あきらめるしかないか。

再びコンビニに行く事にした。ああいう事が起こった後では、コンビニの
明るい店内でも救われる。ここのコンビニはお酒も売っているのでビール
でも買って気を紛らそう。コンビニへ向かおうと足を向けた時、レジから
視線を感じるのでそちらを見た。ブタと目が合ってしまった。無表情な
ブタがレジの奥から私を見ている。私はさっきの安心した感情を汚された
気分になり、踵を返してしまった。何あいつ?今から出勤だったのかよ。
しょうがないか。これ以上、ヤな気分になるのは嫌だから、違うコンビニ
へ行こう。少し遠いが、気持ちを落ち着かす為にも散歩もいいだろう。

しかし、入り口でもないあの距離でこうこうと明るい店内から暗い外を見た
場合、中の物が反射して外の光景は見れるのだろうか。確かに目が合った気が
したが、私の思い過ごしかな。まさかガラスに映った自分に見とれていたのか?
どっちにしろ、今はブタの態度を受け入れる事は無理。泊まり込み1週間目。
家に帰れるどころか、散々な目に合っている。ああ、このまま家に帰りたい。




ブタは歩き去る彼女の背中をまだ見つめていた。









家でも熱中症になるんだね~。                 ボスヒコ


泊まり込み 4

2006年07月28日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「誰かぁぁぁぁ!!誰か開けてぇぇぇえぇええええ!!!」

上から降りて来る足音が間近に聞こえてきた。助けを求めても期待はできない。
彼女はドアを蹴った。ドアの隙間から微かに光が漏れる。彼女は2、3歩下がって
ドアに体当たりを喰らわした。ドアノブから乾いた金属音が鳴る。外れたのか? 
もう足音はすぐ後ろまで来ている。階段内の温度が一気に下がった。彼女は背筋が
凍りつきながらも、最後の望みでドアノブを回した。「ガチャ」何もなかったかの
ようにドアが開き、1階玄関が見えた。彼女は素早く出て、ドアの鍵を閉めようと
焦る。「!?」 だが、鍵は閉めれなかった。ドアノブには何も付いていなかった。

鍵穴すらもないただのドアノブだったのだ。「じゃあ、さっきは!?」一瞬、頭が
混乱しそうだったのをなんとか止めて、とっさの判断で身体全体をドアに押しつけた。
あの足音の勢いではドアに衝突するだろう。そして、まだ追ってくる可能性もある。



来ない。足音は聞こえなかった。気配はない…と思う。足音の主はあきらめたのか?

それともまだドアのあちら側にいて、私がドアノブをゆるめるのを待っているのか?

ドアが閉まった理由は?閉められたとして、誰が閉めたのか?なぜ助けてくれない?



…ひょっとして、これも疲れのせいかしら。見てもいないのに見たと思い、存在
しないものに怖がっている。少し休まないとダメかな。…そうよね。追われる理由
なんてない。鍵がかかっていたと思ったのも、階段内の反響音にパニックになって
あせってたんだわ。…、私、相当疲れてんな…。こんなにドアを押さえてんのが
馬鹿馬鹿しくなってきたわ…。……いないよね。……いないいない。いるもんか。


彼女はドアから音を立てずに離れた。何も起こらない。ドアノブを穴が空くぐらい
に見つめる。動くな。動くな。動くな。彼女はもう一度、ビルの外に出ようとして
少しづつ後ずさった。2mぐらい離れた時に、エレベーターのライトが点滅した。


エレベーターが動き出して、2階から1階に下りて来る。









鍵の閉め忘れにご注意。                     ボスヒコ


酔っぱらい伝説 後編

2006年07月28日 | カノリンヌ
ゲーセンを出ると、私達は久々のカラオケ屋に向いました。
ますますマキコロは転がり落ちて行きます。

彼女は突然道ばたに座り込むと、うずくまりました。ボスが「気持ち悪いんか?」と聞くと、うめきながら顔を上げたマキコロが「ハッ!あそこに黒いものが、黒いものがいる!」と大騒ぎし出したのです。彼女が指差す方を見ると、なんと黒い陰が!!・・・通行人でした。

その後、カラオケ屋の店先で再度うずくまり「気持ち悪い~吐く~。おえ!出ない~」と泥酔祭り。店内に入り早速トイレに直行し、心配したミワンコが渡した烏龍茶を飲みもせず何故かコップを洗うマキコロ。家と間違えているのか(普段ならそれで良いんだよ)

その後、歌い始めると何度も同じ曲をいれ、西村君に強制的にマイクを渡し、セクシーポーズをキメようとするも指をなめ過ぎて、吐こうとしてる人みたいになっていました。もしくは指が美味しかったのか?ま、確かに美味しそうな形状ではあるけれども。

一度トイレに行くために部屋を出て、再び部屋に戻って来るとボスの隣に腰を下ろすマキコロ。が、「あれ?ミワンコさんがいない!いない!」と大慌て。あんた、さっきと違う位置に座ってるだけでミワンコはずっと同じ所に座ってんだよ。

ご機嫌で暴れているうちにTシャツの背中側がズリ上がり、ジーパンの端から、おもちゃやなんかに付いてる「電池を使うときは、これを外してからご利用ください」みたいなタグが出ています。ボスが「何じゃこりゃ」と引っ張ってみると、にゅ~っとパンツが出て来ました。それに気付いたマキコロ、ボスに「いや~ん、せくはら★」「何がじゃ~!」カラオケボックスにボスの声がこだましましたとさ。

そんなこんなでカラオケ屋を後にし、家に向って歩き始めた私達。もうマキコロは眠くてしょうがない様子。まるでゾンビか、何かのクスリをキメてる人みたいな顔でヨロヨロと後方から着いて来ます。あー、今はみんながいるから大丈夫だけど、一人だったら道ばたであろうが寝るわな。と、たまに振り向いてちゃんとマキコロが着いて来てるか確かめつつ、私達は家に帰り着いたのでした。

たぶん私が忘れてる部分や、居眠りしてて知らない部分もあると思いますが、いや~笑わせていただきました。毎度ありがとうございます。

Nikolai Kapustin / Kapustin: 24 Preludes

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酔っぱらい伝説 前編

2006年07月28日 | カノリンヌ
仕事のプチ打ち上げで、ぶらりと近所のビアガーデンに行ってきました。

そこは、ボスが「ピン」と来てチェックしていた所。期待を胸にホテルの屋上まで上がると、そこは想像以上に景色も良く、川から流れてくる風も気持ちがよいのです。
マキコロはその都会の(?)夜景に酔い、酒にも酔い始めました。そこからです。彼女の絶好調が始まったのは。

仕事終わりのところをひっつかまえて、なかば無理矢理参加させた西村くんにマキコロの猛烈アタック(酔っぱらいに絡まれているとも言う)が続きます。自転車に乗っていた西村くんは、どういう意味があるのか分からないけれど、何度もジーンズのすそをガッと上げて来るマキコロを振り払うのに終始していました。

その後みんなでゲーセンに行き、格闘ゲームにいそしむボスと西村くんの傍らでマキコロも「鉄拳」に挑戦します。しかし、何度コインを入れてもスタートしない。「それ、1円玉だよ」とミワンコに教えてもらい、なんとかゲームを始めるものの、ボタンを叩く手がどんどん右へ移動。見かねたミワンコが何度修正しても、ずっとボタンではなくカードを入れる所を叩いていました。

当然あっけなく負け、ボス達がいそしんでいる「バーチャファイター5」のゲーム機へ移動するマキコロ。そして、おもむろにボスの横(地面)に腰を下ろし、さながらコマイヌのようにボスが闘う姿を見守っていました。

それにも飽きると、再びゲームを始めるべく椅子に腰掛けスティックを・・・握るかと思いきや、右手でスティックの上に手を置き、左手でスタートボタンを連打。一体それでどんなワザが出るのか。

・・・それ以前に、お金、入れてませんから。
無料でゲームが出来るって、あんたこそホントの意味でバーチャファイターだよ。
ムービーが流れているモニターの前、神がかり的形相でほとんど画面も見ずにボタンを叩きつづけるマキコロの後ろには、店員を含め数人の人だかりが出来ていました。新手の宗教だと思われたんじゃないのか?



数々の伝説と爆笑を誘発するマキコロ。後半へ続く。

春風亭昇太 / 朝日名人会ライヴシリーズ春風亭昇太1

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泊まり込み 3

2006年07月27日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

影はあの恐ろしい“手”のように消えて無くなる事はなく、後ずさりして消えていった。
あの影は霊的なものではなく、人間なのか? 先ほどのエレベーターでの出来事は
2階の影の主のイタズラなのか?いや、それは無理がありすぎる。あんな事なんて
イタズラの範囲を越えている。これは連日連夜の仕事の疲れが出たと言う方が妥当だ。

私は正気を保つ為になんとかそう思うようにした。それでもエレベーターに乗るのは
気が引ける。ここは階段で行った方が無難かもしれない。階段といっても小さい古い
ビルなので、非常階段としても使われる階段だ。その階段はエレベーター右横の扉の
向こうにある。ビル内に設置されてあるあまり使われていない非常階段の方へ歩く。

エレベーターも嫌だがこの階段も嫌だ。なぜここの仕事を引き受けたのだろうかと
思ってしまうぐらいに落ち込む。しかし、悩んでいてもしかたがないので思い切って
その扉を開ける事にした。錆び付いているのか、ギイィ~っと嫌な音をしながら扉が
開く。何かいるかと用心するが何もいない。この非常階段は普段使われる事がないので
薄暗いライトしか付いていなかった。カビ臭い階段に一歩踏み出る。ここまで冷房が
効いていないので、たちまち湿気と暑さに身体が覆われる。こんなところにいつまでも
いられない。さっさと4階に行こう。私は階段をのぼり出した。手を置いた手すりには
うっすらと埃が積もっていた。一応、用心の為に様子をうかがいながら、一段一段
ゆっくり上がる。1階の真ん中の階段の折り返しに来た。その時点で汗が滲み出てきた。

何か音がした。

私の心臓の鼓動は一瞬で早くなった。身体を動かすのを止めて、耳に全神経を
集中させた。……。2階の方なのか、もっと上の方なのかはまだわからなかった。



「………」

!!! 何かわからないが、この階段内に息を潜めている何者かの存在を感じる。

一刻も早くこの階段から出なければならない。しかし、今は恐怖よりも興味の方が
ほんの少し勝っていた。何かいるのか? ライトに小さな蛾が止まり、焼ける。
埃と鱗粉が舞った。私は手すりを力一杯掴んでいた。その時、後ろの方で音がした。

「ガチャ」

え!? 何!? 今、後ろで鳴った!? ひょっとしてさっき入った1階のドア?
私は階段を急いで降りた。ドアノブを回したが反応がなかった。鍵が閉まっている。

「タン」

上の方で音がした。嫌な予感がする。私は恐怖よりも興味が勝った事に後悔した。

「…タン、タン、…タン、」


何かが階段を降りて来た。




「タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!タン!」




早く!早く!早く!早く!!!  私はノブを回し、ドアを叩き、必死に助けを呼ぶ。










きっと来る~、きっと来る~♪                    ボスヒコ



泊まり込み 2

2006年07月26日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

人の頭を鷲掴みできるほどの大きい白い手がエレベーターの淵を握っている。
全身の血の気が引き、喉が詰まりそうなぐらい息をのむ。叫び声は出そうと
思っても出ない。恐怖が渦巻く中で彼女は失神しかけていた。ドアが閉まろうと
するが白い手が押さえていて閉まらない。その音がエレベーター内にこだまする。

ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!ガコン!

気がおかしくなりそうなエレベーターの音とは反比例して、暗闇から何かが音も
立てずに浮かび上がる。ドアを押さえている手とは別のもう1本の手がゆっくり
伸びて来た。その手は白い手よりも一回り大きく、真っ赤だった。その真っ赤な
手は目があるかのように彼女を見つけると、一気に伸びて彼女の身体を掴もうと
した。とっさに彼女は後ろによけて、真っ赤な手は空を掴む。声が戻ってきた。

「いやあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

思いっきり叫んでしまったので頭に血が上り、一瞬ふらついた。その時には2本の
手は消えていた。エレベーターのドアがゆっくり閉まっていく。2階に止まったまま、
彼女は放心状態でたたずむ。しばらくしてやっと我に返り、恐怖がよみがえってきた。

な、何!? 何!? 何!? 何!? 何なの!? ………。

今度は恐怖で1階のボタンを連打していた。1階に着くなり外に飛び出し、歩行者と
ぶつかりそうになる。顔がショックで歪んでいたのだろう。その歩行者は見て見ぬ
ふりして過ぎ去って行った。知らない人でも人の存在があるだけで安心した。彼女は
しばらく震えていたが、平静を取り戻しつつあった。だが、とうに終電の時間は過ぎ、
雑誌社に戻るかどうかを考えなければいけなかった。どこかのシティホテルに泊まる
ほど金銭的に余裕はない。街をぶらついて朝まで時間を潰す事も可能だったが、そんな
事をすれば身体は疲れるだけだし、明日に控えている激務にも差し支えるだろう。

結局、雑誌社に戻る決心をする。そうだ!馬鹿にされるかもしれないが、高田さんに
事情を説明して降りて来てもらおう!お詫びに夜食をおごらせてもらうって事で!
良い考えだと思ったのもつかの間、高田さんの携帯番号を知らない。しょうがないので
雑誌社に電話をかけた。……出ない…………トイレかな………シャワーかな…………。

電話は留守電に切り替わった。とりあえず、そこのコンビニで夜食でも買っておこう。
高田さんに頼まれる物はほとんど同じなので、さっさと商品をカゴに入れてレジに進む。

今日はあの「ブタ」はいないんだ。ここのコンビニで唯一ウザイやつ。歳は40手前
ぐらいで背は普通。極度の遠視なのか牛乳瓶の底のようなメガネから拡大された目が
光っている。太った身体を邪魔臭そうに動かし、「いらっしゃいませ」や「ありがとう
ございました」などの言葉は聞こえず、商品の値段をため息まじりで呟くだけの女。

私は高田さんの買い物をするのが嫌だったんじゃなくて、ここのコンビニのブタに
会うのが嫌だったのかも知れない。再び、反省をしてコンビニを出た。もう一度、
雑誌社に電話をかける。お願い、電話に出て、高田さん。つい、上を見上げて4階の
雑誌社の窓の明かりを見る。高田さんのデスクは窓際じゃないし、人影などなかった。
留守電に変わった電話を切り、1人で4階に上がる決心をつける為に冷たい缶コーヒー
を飲み干す。その時、なにげなく見た、明かりが灯っていない2階の窓に目が行った。


暗闇の中の黒い影。その影は私をじっと見つめていた。











この話の全貌をミワンコに話したところ、腰を抜かしました。     ボスヒコ
                               
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泊まり込み 1

2006年07月25日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

泊まり込んで今日で6日目。特集の取材や現在連載中のエッセイなどの
仕事が押して、ほぼ、着の身着のままで現在に至る。私はフリーライター
で、最近はこの雑誌社で仕事をしている。まだ愛着もわかない室内が新鮮
だったが、さすがに連日泊まり込むと見るのも居るのも嫌になる。幸い、
ここの雑誌社にはシャワールームがあるし、このビルの1階はコンビニ
なんで、下着などは変えれるので不潔ではない。しかし、後1日泊まると
1週間だ。1週間っていう言葉に滅入ってしまいそうなんで、久しぶりに
家に帰る事にした。家といっても1LDKのボロアパートだが、自分にとって
は癒しの城だ。さっさと用意をして終電があるうちに帰ろう。事務所用の
サンダルを靴に履き替えている所に編集者の高田さんに声をかけられる。
高田さんは私が靴を履き替えている所を見れば外出すると思い、自分の
買い物を頼みに来る。大体は下のコンビニでおにぎりなどの夜食を頼んで
くるのだが、はっきり言って面倒くさい。この前なんか、たまたま買うのを
忘れて帰って来たら、あからさまに残念そうな顔でため息をつかれた。いい
加減自分の物は自分で買いに行ってほしいもんだ。私は余計に急ぐフリを
して靴を履き、カバンを持った。「あれ?もう帰るの?」ほら来た。そう
なんですよ。全然家に帰ってないんです…。「次、いつ来るの」次?明日
ですけど…「そうか…、じゃ、夜食頼めないね」私は「じゃ」にカチンと
きてしまい、初めて高田さんに文句を言ってしまった。彼に嫌みの1つでも
言われると思い身構えたが、意外に素直に謝られた。拍子抜けと同時に
自分が苛立っていた事に気づき、急に恥ずかしくなった。そういえば、
高田さんも徹夜続きみたいだ。前に見た時と服装が同じなのが泊まり
込みを物語っている。あ~、なんて小ちゃい女なんだろ。私は先ほどの
失礼な態度を詫びてから、改めて夜食を買い出しに行く事を申し出た。

「すいません…。徹夜続きでヒステリックになっちゃって…。あの、
 私、買いに行ってきますんで、なんでも言ってください」

「いや、また次の時にお願いするよ。終電もなくなりそうだしね」

私は再度訊いたが、彼は手を振って自分のデスクの方へ歩いていった。
しょうがないか…。終電の時間が差し迫っているので悔やんでいる暇は
ない。猛ダッシュで部屋を出て、エレベーターに乗り込んだ。たかが
4階から1階までだが、苛つくぐらいに長く感じた。早く降りてよ。

チン。

2階でエレベーターが止まった。2階の廊下はなぜだか薄暗かった。

貸事務所がまだ空いているんだろうと思いながら、誰か入ってくるのを
待ったが、一向にその様子がない。私は終電への焦りでドアを閉じる
ボタンを強く押してしまった。ドアが「うるせえな、落ち着けよ」と
言わんばかり遅い反応で閉まろうとする。舌打ちをしつつ、ボタンを
連打する。エレベーターの分厚い二枚のドアがゆっくり閉まって行く。


その時、薄暗い廊下から白い手がのびてきて、ドアが閉まるのを止めた。







あ~あ、始まっちゃた。                 ボスヒコ


天神祭り(行ってませんが)

2006年07月24日 | ボスヒコの「何気なく無い1日」

今日24日宵宮、明日25日本宮、コレな~んだ?はい!天神祭で~す!\(^O^)/
すごーいw(^o^; 大阪天満宮は大にぎわいで~す!(⌒▽⌒)アハハ! 明日は
花火!ファイトォー!!┗(  ̄◇ ̄)乂( ̄皿 ̄ )bいっぷぁーつ!!あちゃ!Σ(>д<)
お祭りなんでクソガキか若い気分のおばはんみたいな文章をやってみました、
ボスヒコでございます。花火大会が行なわれる大川に家が近いんで、毎年
ぶらりと花火を見に行ってますが、年々花火の迫力がなくなってきてますね。
これで嘆いておられる方が結構いますな。事情があっての事だから、しょーが
ないですね。それに花火は二の次にって事で、お祭りを楽しみましょう。私
みたいに近場の祭りしか行かない人(祭りは何が何でも血が騒ぐぜ!ベイベェ!
遠くでも繰り出すぜ!イェイ!って人じゃない人)からしたら、花火の規模
なんて別に気にしません。