私より10歳も年下のグロはファザコンのようだ。ある日、彼氏が出来たと
言って連れて来た。しかし、そこには私よりもはるかに年上の男がいた。
背が低く禿げ上がった頭に冴えない作業着。商店街の洗濯屋に見えたが、
その通りの洗濯屋だった。グロがその店に行き来しだしてからつきあい
出したらしい。それにしても彼はおせじにもカッコ良いとはいえなかった。
人の趣味に文句も言う気も無いし、ファザコンでも全然構わないが、その
男に老眼の眼を細くさせて詮索されると気持ち良いものではない。洗濯屋は
私の事をどうやらライバルと思っている様子。どうせ、グロが私の事を過大
評価して話したのだろう。グロが席を外した時に洗濯屋が私に近づいて来た。
「ワシはグロちゃんって言うとるけど、アンタはそのままグロちゃんの事を
呼び捨てにしててもええからな。でもワシのオンナやから、解っとるな。」
彼氏からの意味不明な承諾が下りた私は、すぐにグロを呼び戻して言った。
「こんな奴と会う為に私は貴重な時間を裂いてしまった。今度はお前の番だ。」
そう言って、洗濯屋の眼を射抜いて無言で席を立った。次の日、グロから
洗濯屋と別れたと言うメールが入っていた。報告しなくても良い全く興味が
無い内容を見た私はグロの過去が見えて来た。今までグロ自体に興味が
無かったので何もスキャンする事が無かったのだが、おぼろげに視得て
くると少しだが興味が湧いてくるのだが、同時に生理的に気持ち悪くなった。
グロは幼い頃に両親が離婚した。母親に育てられ、父親はどこにいるかも
解らない。それがファザコンの理由になるのかしれない。あの洗濯屋と
別れた後、またその辺の親父とつきあいだした。さすがに今回は紹介を
されなかった。だが、未だに私へ父親像を求めている。その父親像を
被せている私に向かって、なぜセックスを求める発言をするのだろうか。
ある宴会の帰り道、帰る方向が同じだったグロが私に向かってまたあの
言葉を言った。「いつかセックスしましょね。」この言葉を流せない
ようになった私は、突然にグロの鮮明な過去が頭に入って来た。それを
彼女に訊いてみる事にした。この言葉でこの女と会う事も無くなるだろう。
「お前は本当に私としたいのか? もし、私が「じゃあ、するか」って
今、行動を起こしたら躊躇するだろ? 何回も言うと冗談じゃなくなる
ので、もう言わない方が良い。かと言って習慣で言っているのでは無い。
言いたく無いのに言ってしまうのだ。お前の歴代のおっさんの彼氏にも
言って来たはずだ。お前は過去に起こった刺激を求めているにすぎない。」
明日で終わります。
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