公園を挟んだ向こうにもコンビニがある。都会にしては割と広い公園だった。
グラウンドも整備されているし、暗い所が出来ない様に照明もまんべんなく
配置されている。段ボールの家や青いビニールシートの家は比較的少ない。
私は近道と安全の為に公園の中を突っ切ってコンビニへと向かう事にした。
夜食とビールを多めに買い込んで店を出た。幾分落ち着いたが、まだ帰る
勇気がない。公園でハトのフンが付いていないまともなベンチを見つけて
ビールを呑む為に腰掛ける。一口呑んだ口当たりのよさに、ついため息が
出る。まだ夜中の1時。朝まではまだまだ時間がある。この近所に友達も
いないし、車で駆けつけてくれる彼氏もいない。やはり選択は1つだった。
ビールを1本呑み終える頃には、多少度胸も出て来た。気合いを入れて
立ち上がった。マーチを行進するかのように力強い足どりでビルに向かう。
10mぐらい先にワンカップ片手に酔っぱらっている浮浪者がヨロヨロと
歩いている。彼はにやにやしながらワンカップの中身を見ている。そして
酒を啜るように呑んだ後、私の方を見た。しばらく虚ろな目で私を見ていた
が、しだいに息づかいが荒くなってきた。少し酔っているのと、相手が
老いぼれで酔いどれなのであまり恐くはなかった。充分に逃げれる間隔で
私は足を止めた。「…はぁ、はぁ、はぁ、」浮浪者の肩が大きく動き出す。
大事なはずのワンカップを地面に落とした。浮浪者の酔いはもう醒めている。
「わっ!あああ!!やめろぉ、やめろぉぉぉぉっ!!!」
私が何をしたって言うの?
「あああ!!く、来るなっ!来るなっ!ひいぃっ!」
何!? ひょっとして、私に何か憑いているのが見えるの!?
浮浪者は足を引きずりながら逃げて行く。私はやっと彼の恐怖の対象が
自分でないのが解った。全身に鳥肌が立つ。私はゆっくり振り向いた。
ブタがいた。