kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

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泊まり込み 7

2006年07月31日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

「きゃっ!!」

振り返ると3mぐらい離れた所にブタが物言いたげに立っている。
やはり、あの時、私を見ていたのだ。
しかし、コンビニの制服でこんな所まで来てもいいのか?

あの浮浪者はブタを見て、なぜあんなに怯えて逃げたのだろうか。
それとも、ブタの方に何かが取り憑いているのが見えたのだろうか。

「そんな所に突っ立ってたら驚くじゃない!……な、何なのよ。……」

ブタはゼイゼイ言いながら、恨めしそうに彼女を凝視して微動だにしない。
顔中の大粒の汗が競争するかのように、頬をつたって地面に落ちる。

「何!? 何か言いなさいよ!」

ブタはいつものようにぼそぼそと呟く。暑い中、ほとんど聞き取れない言葉に
いらだち、今まで溜まっていたストレスを一気にぶちまけた。

「キモいんだよ!ババァ! 用がないんなら、さっさとどっかに行けよ!」

ブタは一瞬うなだれたように首を傾げた。「ふぅ~、ふご、ふぅ~、ふご」
太っていて器官を圧迫されているのか、鼻が悪いのか解らないが、正に豚の
息づかいそのものに聞こえる。状況は非常に滑稽であるが、気持ち悪さの方が
勝っていた。彼女はこの場を早く立ち去ろうと思った。ブタを無視して歩き
出そうとした時に、ブタが巨体とは思えぬ素早い動きで彼女に突進して来た。
ブタが近づくにつれ、明確になる言葉。それは聞いても意味がわからなかった。

「このぼけえええ!!なんできたんやあああ!!なんでやあああ!!」


「なぜ来た」と言う言葉の意味を考える時間などなく、ブタの形相を見た
彼女は足がすくんで逃げる事ができなかった。身構えたが遅く、状況を
把握できないまま、ブタに捕まってしまった。ブタのヌルい汗が飛び散り、
彼女の顔にかかる。強力な握力で彼女の腕をつかんでいるその手は水で
濡らしたように汗で湿っている。ブタから出る口臭と体臭はドブ川の臭い
に感じられた。彼女は不快極まりない人間に揺さぶられながら、意味不明
の恨み言を言われる。腹立たしさが体の奥から溢れ出てきた彼女は、渾身の
力を持って、ブタの腹にヒザ蹴りをする。ゲフッと喘いだ時に、唾が顔に
かかる。彼女にとってそれは効果的であった。嫌悪感に怒りが増長されて
ヒザ蹴りの応酬が始まった。怪力の女も腹を守る為に手を緩める事になる。

「てめぇ!!離せよ!キモいんだよっ!離せ!」
「ぼけがあああ!くそおおお!ぼけがあああ!」

ブタの手が彼女から離れた瞬間に、顔面に平手を打つ。唸りながらよろめく
ブタ。その隙に彼女は一目散に逃げる。顔を拭うのは汗と怒りの涙だった。









あれ? 霊じゃないの?                 ボスヒコ