kiske3の絵日記

一コマ漫画、トホホな人の習性、

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告知をユルく描いて書いてます。

泊まり込み 5

2006年07月29日 | ボスヒコの「恐怖夜話スペシャル」

最初は足音の主が乗っていると思ったが、降下してきたエレベーターには
誰も乗っていなかった。今は扉が一定時間開いた後、閉まった状態でいる。

無人のエレベーターが勝手に動く理由など、考えればたくさんあるし、今は
疲れているので理由なんてどうでも良かった。家で寝ていたい…。バイトの
レベルに近い駆け出しのフリーライターにとって、“休み”などない。どんな
仕事でもやりこなさなければ即、解雇だ。しかも大事な特集ページの締め
切りが迫っている。どうしても4階に行かなければ。最悪、コンビニの前で
朝まで過ごすしかない。時間の無駄と体力の浪費なのは解っているのだが、
恐怖で何も考える事が出来ない。階段の足音、勝手に動くエレベーター、2階
の影、恐ろしい手。一気に襲ってくる恐怖現象に震えながら、外の空気を
吸おうと外に出る。あ、しまった。さっきの騒動で階段にコンビニで買った
物を置いて来てしまった。すぐに取りに行けば、おにぎりとかは少々形が
崩れているだけで食べれるだろうが……。無理だ。まだあそこには行けない。
この暑さではしばらくしたら傷んで食べれなくなる。あきらめるしかないか。

再びコンビニに行く事にした。ああいう事が起こった後では、コンビニの
明るい店内でも救われる。ここのコンビニはお酒も売っているのでビール
でも買って気を紛らそう。コンビニへ向かおうと足を向けた時、レジから
視線を感じるのでそちらを見た。ブタと目が合ってしまった。無表情な
ブタがレジの奥から私を見ている。私はさっきの安心した感情を汚された
気分になり、踵を返してしまった。何あいつ?今から出勤だったのかよ。
しょうがないか。これ以上、ヤな気分になるのは嫌だから、違うコンビニ
へ行こう。少し遠いが、気持ちを落ち着かす為にも散歩もいいだろう。

しかし、入り口でもないあの距離でこうこうと明るい店内から暗い外を見た
場合、中の物が反射して外の光景は見れるのだろうか。確かに目が合った気が
したが、私の思い過ごしかな。まさかガラスに映った自分に見とれていたのか?
どっちにしろ、今はブタの態度を受け入れる事は無理。泊まり込み1週間目。
家に帰れるどころか、散々な目に合っている。ああ、このまま家に帰りたい。




ブタは歩き去る彼女の背中をまだ見つめていた。









家でも熱中症になるんだね~。                 ボスヒコ



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