2024年09月07日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[ロシア漁業発展・地域貢献のために必要となる仕分けされた関連統計]
1992年9月4日、ロシア連邦政府決定No.708により、漁業の民営化が開始された。
ロシアにおける漁業分野の民営化後の歴史全体は、“連邦規制当局-地方-漁業”という三角形のバランスを模索する苦難の日々だった。
1990年代前半から、約15年間にわたり漁業分野の資産掌握、裁定は主に地方知事の権限が大きく、連邦政府、漁業規制当局は、業界の発展のための一貫した戦略を策定したり、実行したりすることができなかった。
この間の問題は、地方自治体による漁業管理が、地方予算制度や社会経済発展に、漁業分野が貢献することが出来ず、当該自治機関がこの分野の利益を享受したことにある。
2000年代後半からは、ロシア漁業分野の構造や経営体制に大きな変化が起きている。
M&Aが進み、水棲生物資源の漁獲割当の大きなシェアをもつ巨大なグループ企業が出現している。
その結果、“連邦規制当局-地方-漁業”という三角形の力のバランスは、連邦規制当局側にシフトしつつある。
同時に、複数の地域で地元当局から独立して操業している大規模漁業者の影響力も拡大している。
このバランスの変化自体は正しい方向への一歩だが、厄介な影響も存在している。
連邦政府は、漁業法を改正する際、地域の特性に言及することに一種のアレルギーを持っている。
また、連邦規制当局と大企業は社会的な側面を見ずに行動することが多くなっている。
ロシア漁業者水産物輸出者協会ヴァルペ会長ズベレフは、漁業分野の地域社会への貢献を示す複数のインデクスの評価を提案している。
地域社会に対する漁業分野の貢献を過小、さらには不正確に評価すると、誤った経営判断が生じるリスクが高まるとした上で、この中には、財政余剰処分が含まれると指摘している。
1つのインデクスは財政、つまり地方予算システムへの納税であり、例えばカムチャツカ地方では、昨年2023年、漁業分野から地方予算への納税額は21%増加し450億ルーブルを超えている。
もう1つのインデクスは、地域総生産への貢献となるが、漁業分野の生産についてロシア統計当局ロススタットは“農業、狩猟、林業、漁業、養殖”のひとまとまりにしており、水産加工分野は“加工産業”内に「隠蔽」されている。
ロススタットは漁業活動に関する個別の統計記録を残していない。
また、船舶修理、港湾施設、物流、水産物製品貿易、造船、教育に対する漁業複合体の貢献に関する記録も残していない。
更に、もう1つのインデクスは、社会および労働関係に対する漁業分野の貢献となる。
例えばカムチャツカ地方では、社会基金の資金調達への漁業の貢献は、電力、建設、運輸、鉱業を合わせた調達の1.3倍となっている。
漁業分野の社会的側面の魅力は、極東に若者を留めておくことと、この地域に新たな定住者を惹きつけることの両方にある。
この3つのインデクスをすべて使用した場合にのみ、地域の社会経済発展に対する漁業分野の貢献を確実かつ正確に評価することができ、“連邦規制当局-地方-漁業”という三角形の力のバランスを調整することが可能で、当該目的のために正しい統計が必要である。
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