2024年06月26日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[EUのスケトウダラ・フィレの輸入量と価格の推移等(2024年3月)]
近年、世界のスケトウダラ生産量は350万トンで、ロシアが180万トン-190万トン、米国が昨年2022年の約3割減を除き150万トンを占めている。
スケトウダラ生産において、ロシアは洋上でH&G(ドレス)を生産し中国へ輸出、中国が陸上でフィレ加工してEUへ再輸出、米国は日本へすり身として輸出することを、それぞれ仕向けの主流としてきたものの、ロシアについては、新型コロナウイルス(CV19)拡散防止対策による中国の冷凍水産物輸入制限により、当該貿易が鈍化、2021年初めから韓国でのコンテナ積み替え経由等、仕向けの構造が大きな変化を示したが、ポストCV19となった2023年現在、中国への直接輸出ルートの回復が顕著となっている。
CV19の間、フィレの最終市場となるEUへ米国が供給を増加させ、ロシアも“投資クオータ”を利用した高次加工漁船と自国陸上加工でフィレを増産し、中国加工を介さない当該市場への直接アクセスを拡大させてきたが、EUがウクライナ情勢からロシアの新規の輸出者リスト登録の更新を停止していることから、大きな供給増加が期待できない状況となった。
これらのことから、ロシアは国内市場への供給拡大にも取り組みを開始している。
状況下、北海道機船漁業協同組合連合会は、米国から日本へのすり身の輸出価格、中国からEUへのフィレの輸出価格等をモニターすることでスケトウダラの国際市場価格を把握することに取り組んでいる。
EUのスケトウダラ・フィレの輸入量と価格の推移は北海道機船漁業協同組合連合会作成、日本すり身価格の推移は株式会社ニッスイ様の情報を借用、別図のとおりとなっており、ロシアが中国加工を介さない独自フィレ製品のEU市場への供給をこれまで拡大させたこと、国際市場価格の完全なシンクロナイズが分かる。
一方、EUは、2024年から2026年の新たな自主関税割当(ATQ)制度から、ロシア産の主要なスケトウダラ等の白身魚を含め水産物製品を除外、輸入免税はなくなり、13.7%の標準関税が設定され、さらに、第3国が加工した製品についてもこれが対象になった。
2023年12月の強烈なロシア産、ロシア産原料中国加工製品の駆け込み輸入があったことが分かる。
EUの輸入免税がなくなり、ロシアのスケトウダラ漁業における高次加工は、益々、すり身生産に傾注すことになると予想される。
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