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「雨族」 断片71-生まれ出ずる疑問:kipple

2010-02-14 22:45:00 | 雨族(不連続kipple小説)

ようこそRAIN PEOPLES!超バラバラ妄想小説『雨族』の世界へ! since1970年代


               「雨族」
        断片71- 生まれ出ずる疑問


“わたくし!生まれも育ちも葛飾柴又です!
 姓は車、名は寅次郎!人呼んでフー雨天の寅と発します!”


ザンザコ、ザンザコ、ザンザコ、ザンザコ・・・


“テキヤ殺すにゃ刃物はいらぬ、、、雨の三日も降ればいい・・・ってな、そうです!わたくしも雨族なんです!おいちゃーん!ただいま。”

“おうっ!寅か!お帰り”

“おぅっ!いいねぇ!その自然な出迎え!ほら、これ土産の辛子レンコン、老夫婦は健在でございますかあ~!いよ!まくら、さくら出してくれ!よっ!職工!タコ!けっ不景気な面しやがって、てめーの工場はいよいよ、潰れたかぁ!
 けっこう毛だらけ猫灰だらけお尻の回りは糞だらけ!ってなー!
 ま、いいや!なぁ~、おいちゃん!おいちぁ~~ん!聞いてくんねえか?俺はよ、ガキの頃から、ずぅ~っと疑問に思ってる事があるんだ!
 実のところよ、バイの途中でよ、その俺が鼻っ垂れのガキの時分から疑問に思ってる事を、ふっと思い出しちまってよ、するってぇと、その疑問がずぅ~っと俺の頭にとり付いちまってよ、くるくるくるくると夏の虫みてぇに回り続けるもんで、こんなケチな疑問、他人様に話すのも恥ずかしいってなもんで、旅の途中、ほんのちょっと寄っただけよぉ、うん、すぐ行くからね、ちょっとだけ聞いてくんねーかい、おいちゃん、、、”

“あ~いいよ。で、寅、なんだい?その疑問ってぇのは”

“うん、じゃ言わせてもらうよ。例えばだ、この団子、この団子に金払うってのは分かるよ、でも、そこのヒロシ、お前の読んでる本、そりゃ小説かい?面白いかい?でも、それ読んで腹が膨れるかい?
 な、俺の疑問ってぇのは、そこよ!例えばだ!ほら、裏の工場から何だか訳のわからねえ労働者諸君の歌が聞こえてくるけど、あれに金払うかい?歌聴いて腹が膨れるかい?雨がしのげるかい?分かる?例えばだ!そこ、みつおの描いた絵!それで腹が膨れるかい?五臓六腑に栄養がいきわたるかい?
 だからよ!歌とか本とか絵とか、そーいう屁みてぇなモンが何で金を取るかねぇ~?俺は、それがガキの頃から、どーしても納得がいかねぇんだよ!
 いいかい?そういう何の実際的に役に立たねぇもんは、こう、逆なんじゃねぇのかなぁ?何?逆?何だよ!頭ワリーなぁ、分かんないかなぁ、この疑問!
 だからね、音楽とか本とか絵とかってぇのは作った人、書いた人、描いた人、そーいう暇人がだね、謙虚に腰を低くして、「わたくしが一生懸命作りました、どうぞ、お金をあなたに払いますから、宜しかったら、聴いて下さい、読んで下さい、観て下さい」ってね、そーいうもんじゃありませんか!って俺は、ずぅ~っと疑問に思ってんだよ!
 だってだよ!糞の役にも立たねぇ戯言や耳障りな音やくだらねぇ絵にどうして、こちとらが金を払わにゃならねぇんだい!百歩ゆずって、その本や音楽や絵が面白かったりなかなか粋だったとしてもだよ、「え?わたくしの面白かったですか?有難うございます!大変、嬉しゅうございます!どーぞ、お金を受け取ってください」ってね、作った本人が人様に面白がられて一番嬉しいに決まってんだから、感謝の気持ちを込めて、読んでくれた人、聴いてくれた人、観てくれた人に有難うございます有難うございますって、土下座でもして、金を払うってぇのが筋ってぇもんじゃないのかねぇ~?
 こんなバイやってる俺が言うのも何だけどよ、それが本当の人間の商売ってぇもんじゃないのかねぇー!”

“なぁ寅・・・”

“なんだい!おいちゃん!”


“それを言っちゃぁ~、おしまいよぉ”



ザンザコ、ザンザコ、ザンザコ、ザンザコ・・・






断片71     終


This novel was written by kipple
(これは小説なり。フィクションなり。妄想なり。)



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