第24章
白い大きな寝台にシーツをかむって髪を針の様に逆立てた男が大きな目玉をギョロギョロさせて横たわっています。 キーホーは、やれやれと思いました。
どうして行ってしまうのですか?。僕をちゃんと治療しもせずに。 む・むごいじゃありませんかぁぁぁ。」
もう音楽室は五号と決まったようなものです。 その安堵感もありましてか、キーホーは壁に吊り下がっている白衣を被ると精神分析医の証明バッチを胸に張り付けて荘重そうな顔つきをして患者の横の回転椅子に腰掛けて、V字型に笑顔を作ってみせました。
すると患者のおしゃべりスウィッチが症状告白モードでONに入ったようです。
特にチンゲの多さったら人の三倍はあると思います。 それで僕、困るんです。痛いんです。 あの時、チンコと一緒に固くて縮れた沢山のチンゲが先っちょに絡まったまま付いてくるんです。 チンコの先はカミソリでやられたみたいに切り傷だらけです。 目玉を抉られ喉から手づかみで心臓を抜かれる痛さです。 気絶した事もあります。 そ、それで・・・・・・・・・・。」
つるつるに剃ります。 僕は、そうしないと又、痛い目に遭うんです。 だからどうしても、つるつるにしないと駄目なんです。 一日でも放っておくと、短い針の様な毛が、今度は袋に何百本、いや何千本も突き刺さる事になります。 だから、よぉく剃るんです。 僕、とっても恥ずかしい。 洗面所の三面鏡に向かって下半身をガバと開らき、唯ひたすらに剃ります。 なんて惨めな事でしょう。 せ・先生。わかります?。この惨めさが。 そ・それで、まず十ヶ所はカミソリ敗けしてしまうんです。 時には何か得体の知れぬ前人未踏の不気味な体験かと思います。 そう、男のくせにメンスがあるんです。 くっ。くっ・く。 男のくせに。」
それで、陰毛が邪魔になり、剃るようになったと・・・・・。」
ダ・ダッチ・・ワイ・・・ いえ、僕はまだ性交渉してないです。 一度も。」
う・嘘でした。すみません。 また嘘をついてしまいました。 いかにも僕はS・SEXの時の様に話をしましたけど。 事実はそうなんです。しくしく。 僕も自分の心理がよくわかるんです。 僕、四十になっても童貞なんです。 そ・それで、それが劣等感で、ずっと二十歳頃から、すぐに嘘を言いました。 いかにも、とっくに体験したかのように。 で・でも直接、SEXしたかって友人に聞かれると震えちゃうんですよね。 僕、身体は正直にできているんです。」
本当でっす!いっつも、つるつるにしてました。」
もう嘘はいけませんよ。」
僕は十二才まで脱糞癖がありまして、いつも尻やチンコをウンチだらけにしていました。 あの頃の僕にとって、それはとても恐ろしい事でした。 一日に何十回もウンチが平べったく尻から下へ回って臍までベットリと付いてしまうもんですから。 父や母は、その度に僕の事を(うんちょっ子。うんちょっ子。)ってからかい、(自分で拭け!)と殴る蹴る始末でした。 十三才の頃、そんな癖も治りましたけど、何か尻やチンコのあたりが気になるんです。 それで前にウンチをキレイ・キレイに拭ってたように僕はチンゲと尻毛をつるつるに剃らずにはいられません。 きっと、そうだと思います。 先生、そうなんです。 僕はウンチを拭いたいから毛を剃るんです。 でしょう?。」
他に何か、その頃とても恥ずかしいとか屈辱的な出来事は、ありませんでしたか?。」
実は僕、十才の時、宇宙人の女の人とお父さんがSEXしてるのを見てしまったんです。」
あなたの性的発達は、その時の衝撃的な光景に留まってしまったのでしょう。 性の対象は歪められ代償を求め、欲動は彷徨います。 都合の良い事に、あなたは脱糞症で肛門部や性器に日常的に大便が付着していた。 それによって歪んだ性欲動の代理行為として肛門や性器周辺の便を取る事で充足させていたのです。」
とても恥ずかしい事です。」
口愛期です。 その癖は外的な制圧によって十三才の頃には周囲に対しても自分に対しても限界に来てしまったのです。 ここで自我が働き、なんとか、周囲の力も手伝い、脱糞癖は治りました。 しかし、そうすると今度は、また抑圧を受ける事になります。 せっかく十才で歪んだ性欲動、固着したリビドーも、その代替行為を奪われてしまったのです。 欲動ベクトルは自然に大便拭いから陰毛剃りへと向きを変えました。 そして大便拭いの記憶と状況からの対自己印象は、とても強くリビドー発達を、これまた歪めたのでしょう。」
止められないと又、自我と劣等感の闘争のため、又々、その対象行為を間違えて自分のチンコを街中で尻の穴に突っ込んでみたり高級レストランで人々の目前でウンチして、それを食べ始めたり、喫茶店でチンコの穴にストローを巧みに突っ込んで・・・僕、あれプロ級にうまいんだから!・・・小便をエメリューム光線※みたいに飛ばして他の客にひっかけたり・・・。 それを、も・もう、せずにはいられなくなります。 あぁ、なんて重い苦悩なんだ。ラ・ラ。 何で、あんな楽しい事しちゃぁいけないんだ。 そうだ、後で死ぬ程、恥ずかしくなるからだ!。 でも、止められない。 チンゲ剃りを止めれば、止められるんですね。」
チンゲ剃りを止めても駄目だろう。 失礼、陰毛剃りを。 無理して止めたら今度、代わりに君は、どんな事をするか、わからんぞ。 まず陰毛剃りの原因となった無意識の中の歪みを消さねば全ての異常行為は治らない。」
僕は宇宙人と父の産んだお前を殺したいんだ!!!。」
僕は、バカだったんだ。 バカだったんだぁぁぁぁぁあああああああ。」
「どういたしまして。」 と言って、ゆっくりと板戸を閉めました。
第三の目。
KIPPLE |
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