夏
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-拾-
とても長い歳月が流れた。 彼が朦朧とした状態で書き続けていた小説を中断し、老いた皺だらけの醜い顔を上げると、窓から、夜空が見えた。 彼は、華やかな花火たちを、いつまでも、じっと見つめていた。その姿は、まるで時間が停止しているようだった。 彼は、すっかり古びてガタガタになった冷凍庫のドアが花火の炸裂音による微かな空気振動で自然に開き、女の凍った死体が転げ出て、真夏の熱気の中で溶け出して腐敗していくのに気づいていなかった。 花火大会が終わった夜空に、ぽっかりと巨大な黄色い月が輝いていた。真っ二つに割れた半月だった。 ![]() KIPPLE |
-九-
部屋の中は冷房装置のおかげで適度に冷され、冬眠人間のワタシの脳を活性化させ何重にも脳内で小説を上書きして楽しませてくれるのでございます。苦だからこそ、で、ございます。 ワタシが小説を書いて上書きをし続けなければ世界は生まれることは無いのです。全ての世界は冬眠人間のワタシが作り続けているのでございます。 ワタシが死ねば、全ての世界は消え失せるのでございます。全てはワタシの夢でございます。夢とは脳内で小説を上書きして楽しんで生涯を送ることでございます。ワタシが死ねば宇宙は終わるのです。 おや、花火が上がりましたね。美しい。ワタシは頬杖をついたまま隅田川上空に打ち上げられ、ど~んっと花開く巨大な色彩の戯れを見つめております。ずいぶん暗くなり、何時の間にか巨大な月が花火たちの背後に、のっそりと出現しております。 ぱぁ~ん!ぱぱぁぁ~~ん! どうした事でしょう。ワタシは涙を流しているのでございます。ああ、へんです。涙が止まらないのです。 どうしてでしょうか?窓の向こうの隅田川の花火大会がワタシのココロを震わせます。 でも、そんなはずは無いのです。鮮やかな光を振りまく花火たちの背後の巨大な吸い込まれそうな月がワタシのココロを震わせます。そんなはずは、無いのです。 「オイラは知ってんだ!お前は俺を馬鹿にして俺のいない間に片っ端から、そこらじゅうの男とヤリまくってんだろ!この淫乱!淫売!オイラが認められないのもお前のせいだ!この死神め!オイラを殺したのはお前だからな!ひとごろし!全部、お前が悪いんだ!死ね!お前こそ死ねぇぇぇええええええ!」 ワタシは泣き出して、アパートを飛び出して一晩中、街を彷徨いました。 ああ、あの時、ワタシが彼についていてあげれば。ワタシが、ワタシが、彼を殺したようなもので、ございます。今頃気づくなんて、余りにも悲し過ぎます。ワタシは本当に彼の事を愛していたのでございます。 ワタシが悪うございました。花火が綺麗です、月が綺麗です。この大きな窓から映し出される世界は、ずっと過去の世界です。 ワタシは死にたい。死んで彼のもとに行きお詫びをしたい。ごめんなさい。ワタシは逃げたのです。ワタシは死にたい。死にマス。 ワタシは、頬杖をついていた両手を自分の首に持ってゆきました。窓から美しい花火が、たくさんたくさん夜空に輝いてます。どぉ~ん!どぉ~ん!あの月に吸い込まれてしまおう。ワタシは、そう思いました。 ごめんね。ワタシも死にます。気が遠くなってまいりました。 ・・・誰?へんね。そ・そんな。だ・誰かがワタシを書いている。 いまわの際に、ワタシの頭の中に大声が響いた。 「俺!俺だよ!俺、俺!ぶっ殺す!ぶっ殺してやるぅぅうう!ああ!我慢ならねぇ!何だ、この社会は!糞豚どもめぇ!死ね!死ね!死ねぇぇっ!金満鬼畜腐れ外道どもめぇぇぇ!ぶっ殺してやるぅぅうぅ!皆殺しだぁぁああ!ざぁまぁみさらせぇぇえぇぇえぇぇぇぇえぇっ!」
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-八-
その瞬間、ワードパッドの文章の狭間から巨大な銃弾が物凄い速度で出現し作者キップルの眉間を、ぶち抜いた。 最後の瞬間、脳味噌を銃弾が通過する、その一瞬に、作者キップルは、脳味噌の中で遠い昔、若い頃、一緒に仲良く暮らしていた女の子と夏のある夜に見に行った隅田川の綺麗な綺麗な、花火の光景を見た。 ど~んと鳴って、夜空に巨大な美しい花火が上がった。遠い思い出。女の子は金魚の浴衣を着て髪をピンクのカンザシでとめていた。 あんなに幸福な時間は作者キップルには2度と訪れる事はなかった。作者キップルの人生で一番、幸福な時間だった。 帰り道に、でっかい月が出ていた。2人は手を繋いだまま月に吸い込まれそうな気分だった。 「こんなバカな・・・」 「・・・オイラが今まで生きてきて最後に浮かんでくる記憶はこれなのか?オイラは彼女に酷い事を言って別れてしまった。オイラが本当に好きだったのは彼女だったのか?そう、彼女とオイラは双子のようだった。いつもいつも一緒だった。本当に大好きだったんだ。絶対に失いたくなかったんだ。彼女は、あれからどうしたのだろう?・・・おかしい。オ・オイラも誰かに書かれている・・・」
そして、作者キップルの思考は血の海の中で完全に停止した。 KIPPLE |
-七-
誰だ!誰かが俺を!この腐れ外道に満ち満ちた邪悪な糞金金金金コング金ゴンクエスト金金ファンタジー悪徳ワールドを!妄想してるはずだぁぁあああああっ!それも実に稚拙だ!俺自体がメチャクチャじゃねぇえぇぇぇえかぁぁぁぁあぁぁっ!まともな奴じゃねぇぇぇえ!俺はビビビビビビッビビビィィィィィっと、きたぜぇぇっ!俺が妄想してるんじゃねぇっ!この糞チンコマンコの肥溜め世界の腐れゲス外道でもねぇぇぇっ!わかったっぁぁぁぁぁぁっぁぁーーーー!俺が俺を殺して、すなわち、この東尋坊の岸壁から飛び降りて死んだところで、この金糞傲慢淫売世界を救済することなんかできねぇんだぁぁぁっ!俺が正義の核ミサイルを一万個、世界中にぶっ放したところで、豚ゲス変態鬼畜守銭奴人間どもを全滅させることは、できねぇぇぇぇぇっ!はぁはぁ!何故なら!何故なら!お前!そこのお前!お前が、俺を主人公にして、この狂った小説を書いているからだぁっぁぁあぁっ!俺が死んでも、糞ゲス人間どもを全員ぶっ殺しても、作者たる、お前は又、俺を主人公にして、このキチガイ世界を再び書くことができるからだぁぁぁっぁっ!!イカレタお前は、どんな風にでも書き直すことができる!再び邪悪なキチガイ人間たちの糞世界を復活させて、俺を生き返らせて主人公にして苦しめる事だって朝飯まえだろぉぉおぉおがぁぁぁぁっ!お前は!何度も何度も鬼畜な妄想を繰り返し、生きている限り上書きして気分次第で勝手に俺を鬼畜糞外道どもの腐れ世界でグルグル踊らせることができるんだぁっぁぁぁっ!ゆ・許せねぇぇぇぇっ!俺はもうハッキリと分かった!確信した!この腐敗し堕落しきった狂った人間どもも正義の使者たる俺も、貴様が面白半分に妄想して原稿用紙だかワープロだかに書きなぐっていやがるに違いねぇぇええっ!夜行の描写を飛ばしたのは面倒だったからか?東尋坊は貴様の趣味か?地下鉄サリンも9・11同時多発テロも全部、貴様の願望かぁ?そりゃいい願望だなぁぁああああああああああああ!ちきしょー!つい賛同しちまったぜぇぇえぇっぇっ!けっ、もう騙されねぇぜぇ。いいかぁっ!俺は今、バリバリに頭が冴えてきたんだ!俺がいれば、俺の無意識が妄想した世界が俺に認識されて作り出されてしまう。え?それは世界中の全ゲス人類にも可能なんだ!63億人の無意識がバラバラに妄想して63億人に認識され63億人分の鬼畜糞世界が認識されちまう。その63億人に糞認識された63億の糞世界は63億分がごちゃごちゃに交じり合って超糞63億乗の狂った世界を作り出してるから俺が自殺したって何も変わらねぇんだ!俺が一万発の核爆弾をぶっ放して滅ぼしたって何も変わりゃしねぇんだぁぁぁぁっ!その63億人分の多重混合超不条理世界を書いているのは貴様だからだっ!二度と再び、俺も、この無限の不条理糞世界も、上書きして復元できねぇように、書いている貴様を!作者である貴様をぉぉぉぉっ!殺さなければなぁぁぁぁぁぁぁぁっ! しかし貴様の気紛れもバカとしか言い様がねぇな!けっけけけけけーーーーだっ!何をトチ狂ったか、俺を拳銃射撃の天才に仕立てやがった!ばーーーーかっ!あーーーーーほぅ!おい、作者!銃弾はあと一発だぜ。貴様、もしかしたら俺とロシアンルーレットでも楽しみたいのかい?ぶぎゃははははははっーーー!カラカラカラ~って弾倉を回して、俺がまずドタマに一発、外れたら、俺が貴様に一発、そうなんだろ?この鬼畜野郎め!いや野郎じゃねぇかもな!まんこか?どっちでもいい。その手に乗るか!脳味噌に糞が詰まってんじゃねぇか?俺はビビッとわかっちまったんだよ!貴様は自由に書けるんだ!妄想できるんだ!だから絶対に俺が負ける、俺が正々堂々と貴様の挑発に乗ってロシアンルーレットやったら、貴様は絶対に俺が偶然にも運悪くドマタを吹っ飛ばして、はい終わり・・・・だろ?ぎゃははっははははは!そうは、いくかぁぁっぁぁ!俺は拳銃射撃の天才だぁぁああああああ!俺の撃った弾丸は、どこまでも獲物を追いかけて必ずぶち殺す!貴様が書いたんだ!恨むんなら貴様を恨みな!さあぁぁーーイクぜぇ!貴様が死ねば全てが消える。二度と復活しねぇ!貴様が死ねば二度と俺や、この糞世界を書けないからだぁあああ!さあ~引き金に指をかけてぇ~、俺の事を書いてる貴様に向かってぇぇぇぇぇ、、、、、、どこだ?そこだっ!太陽だぁ!って、ばぁ~っかめぇぇぇぇぇっ!そんな見え透いた罠にひっかかるかいぃぃぃぃいぃぃいぃぃぃぃっ!ピッカピッカに光って、ほぅれ撃ってくれとばかり、でけぇ面して輝いてやがるお天道様をグルっと回って水平線の上の方の実に中途半端な位置で、薄くボンヤリ隠れてる真昼のお月様よぉぉぉぉぉぉっ!みぃつけたぁぜぇぇぇぇぇぇぇっ!月っ!あーばよぉぉおっ!てめぇだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっ!!!! ぱぁ~ん! KIPPLE |
-六- 世界を滅ぼそう!自殺をしよう! さぁぁぁああああ、逝くぜぇぇぇぇえっぇぇええぇっ!俺は自殺して屠られた子羊になるんだぁー!みんな死んじまえぇぇえぇぇえっ!死ねっ!死ねっ!死ねぇぇぇぇっ!滅びろぉぉぉ、人間どもめぇぇぇえっぇえ!と今にも飛び込みの姿勢をとった時、横目になにか嫌なモンが見えた!ハッ!気になるぜっ!何だっ!っと俺が振り向くと「はやまるな子が泣く親が泣く妻が泣く」!!!自殺防止の看板じゃねぇかぁぁぁぁあっっ!ぶごぉぉぉぉぉっっ!このぉぉぉぉカンバンめぇぇぇぇっ!邪悪なる腐れチンコマンコを全滅させようと絶対善の絶対正義の自己犠牲を行なおうとしている救世主たるこの俺をこの後に及んで、まだ邪魔しようとするかぁっぁぁぁあぁっ!ぶっ殺してやるぅぅぅうぅぅ!このカンバンめぇぇぇぇぇぇえっ!ダァーーーーーンッ!うおっ?!見事にぶっ飛んだぜ、カンバンめ!ぬぅぇ?あのカンバン、ここからけっこう遠かったよな。よく当たったなぁ。しかも付け根から完全に吹っ飛ばしたぜ。まぐれか?ひょっとして、お・俺、射撃がかなり上手いんじゃねぇか?お・俺、射撃が上手いのか?生きていて何の取り柄もない無能者だとばかし思ってたが、お・おれ射撃が上手いのか?うげぇ!まぐれ!偶然!そんなわきゃねぇ!俺は他人とマトモに話せもしねぇし、目もあわせられねぇんだ!どーせ射撃が上手かろうと面接で全部落とされるに決まってんだぁぁっぁぁっ!くそぉぉぉぉぉおっ!バッキューーーーーーーンッ!!うおぇっ!!また当たったぁぁぁっぁっ!また見事にカンバンが吹っ飛んだぁぁぁぁぁっ!さっきより少し遠いいぜぇぇぇ!こ・これは、なんだぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっ!糞!糞!糞ぉぉぉおっぉおぉぉぉぉっ!ドギュゥゥゥゥゥウゥゥゥゥーーーーウゥゥン!!ぶわあぁぁっぁぁぁぁ、またぁ当たったぁぁぁぁっぁ!もっと遠いぞぉぉおお!見事に吹っ飛んだぁぁっぁぁぁっ!ズギャァァッァァァッァーーーーーーァン!!むほぉぉおぉぉーぅう!またまた当たったぁっぁぁぁあぁ!見事だぁぁぁっぁ!!ぶちこわしたぁぁぁっ!点に見えるくらい遠いぞぉぉぉおおおおおおお!お・俺は天才か?お・俺には物凄い才能があるのかぁぁぁっぁっ!ま、まてよ、俺が撃ち飛ばしたのは全部、動かない糞カンバンだもだ!ひょっとしたら、あの糞カンバンどもには超強力な磁石が仕込んであって、当然の如く鉄製の銃弾は引き寄せられて・・・イカサマだな!ここまで来て鬼畜ゲス糞腐れ外道チンコマンコどもは、まだ俺をおちょくろぉってぇのかっ!ぶぉぉぉぉおぉぉっ!ぶっ殺す!ぶっ殺すっぅうう!そうだ!騙されねぇ!俺は飛ぶんだっ!ここから飛ぶんだ!飛んで落ちて岩に激突してバラバラの肉片になって、俺の妄想で存在する、この世界の人間どもを皆殺しにしてやるんだぁぁあああああっ!かぁーーーー!ざまぁーーーーみろぉぉぉっぉおぉおぉおおっ!せぇ~~のっ! ピーヒョロロ~。うん?俺が岸壁から飛び降りようと両腕を真っ直ぐに伸ばして飛び込みの姿勢をとると、目の前を鳥が横切りやがった!お・おのれぇぇぇ!え?ま、待てよ、あの鳥は磁石じゃねぇよな。磁石でも仕込んであれば、あんなに軽やかに飛べるはずはないぜぇ!じっと低位置に立ってる磁石が仕込んでありそうな怪しいカンバン。大空を軽やかに実に爽快に素早いスピードで滑空する生き物、鳥。じ・磁石じゃねぇ!う・撃ってみるかぁ。た・試してみるかぁ。とっ、顔を上げると、鳥はもう遥か上空に舞い上がり、顕微鏡で覗く微生物くらいちっこくなって、くるぅっくるぅっと不規則な円を描いてやがるぜぇ。あ・あれを撃ち殺したら間違いなく、俺は拳銃の天才だぜぇ。ぐぅぅおぉぉおおおおお!ぶっ殺す!殺ってやるぅぅぅうっぅ! パァーーーーーーーーン!・・・あ・当たったのか?ひゅるるるるぅぅぅ~、お・落ちてくるぜぇ。ヒュゥルウルルルルルッゥゥゥウ、ベチャッ!!うおっ!うおぅっ!俺の足元に落ちやがったぜぇ!グチャグチャで原形をとどめてねぇが、鳥だ。お・俺の拳銃を持った右手が震え始めたぜ。ス・スゲェじゃねぇかっ!凄ぇぇぇぇえっ!俺は、間違いなく射撃の天才だぜぇ!間違いないっっっーー!!俺は拳銃と銃弾を自由自在に操れるんだぁぁぁぁぁあっ!物凄い才能じゃねぇぇかぁぁーーー!この、俺に、こ・こんな凄い才能が、あったのかぁぁっぁぁぁっっ!!俺は凄腕の殺し屋になれるぜ。狙った獲物は絶対に逃さねぇ!俺の放った弾丸は、どこまでもゲス糞人間どもを追いかけていって、頭蓋を粉々にし、脳味噌をぶちまける!うけけけけけけ!ぶっ殺す!この手で!この銃で!この弾丸で!実感あるぜぇぇぇぇえ!俺の銃弾は淫売女のまんこから脳味噌を吹っ飛ばし、腐れチンポ野郎のケツの穴から脳味噌を粉みじんにしてやるぅぅうんだぁぁぁあっ!ああっ!考えただけで勃起してきたぜぇ!ああ!ああ!あああ!どくんどくん、どばばばばばばーーーー!って、射精しちまったぁぁ~あーーズボンはビチョビチョーーーーー最高!気持ちEーーーーーーー!!ぶっ殺す!俺の弾丸でがんばって努力して金を稼いでる鬼畜外道殺戮者どもを皆殺しにしてやるぜぇぇえぇっぇっ!ぎゃおぇぇぇえええええっ!やめだ!やめだ!自殺なんかするものか!自らを十字架にかけ、即ち自殺し、屠られた救世主になるより、じかにぶっ殺してやった方が絶対に充実するぜぇ!げへげへげへへへへへーーーーーー! っと待てよ。人類は全部で何人いるんだ?そーいやぁ、このあいだNHKで63億だの言ってたな。・・・無理だぜ。いくらなんでも俺1人で63億もの腐れちんこまんこを皆殺しにするには途方も無い時間と・・・いや、そんだけの弾はどうする?拳銃はどのくらい必要だ?どうやって入手するんだ?いやそれ以前の問題だ。すぐに捕まっちまいそうだし俺の想像もつかないような場所に住んでる奴だっているだろう。やはり、俺は俺が死ぬ事によって、この邪悪な糞汚れた悪のじゃぶじゃぶ金世界を滅亡させ、清らかな金のない働かない努力しない穏かで争いの無い平和な善の世界を出現させるしかないようだ!さあ、飛び降りるかぁー!・・・でも、へんだ。この今になって突如、発露した俺の才能はなんだ?銃撃の天才に何の意味があるっっぅうぅぅうんだぁあああああああああっ!変だ。どうも変だ。何で、この人類滅亡の瀬戸際にきて隠れていた俺の才能が開花しやがるんだぁ?新しい世界、新しい美しい善なる世界・・・?どーしてそーなるってんだぁぁーーーーーっ! KIPPLE |
-伍-
っと、さあ拳銃を右手で握り締め、聖なる銃弾をぶち込んでやろうと左手の人差し指を半けつに伸ばした時、俺は思った。弾は、何発ある?1、2、3、4、5、6。6発?ぐぼっ!これじゃぁうまくいっても、6まんこしか殺せねぇぇっ!6まんこしか、で、できねぇ!糞バカ鬼畜どもめ!貴様らを全滅させるには、どうしたらいいんだぁああ!俺は無力だっ!俺が殺せるのは、うまくいっても6まんこだ。トンカチや出刃包丁や素手でも殺せるが、俺は知ったぁぁぁあっ!オマワリ1人を殺すのにさえ物凄い体力が必要だって事をぉぉぉ!ああああああ、ここに核爆弾があったらぁああっ!ちきしょうー!ぶぶぶぶぇぇっ! お・俺は屈辱に満ちた、25年間だったぁぁああっ!心の中で殺し合って顔は笑って!何かで負けたとなると、心はブルブルふるえだし陰惨になるのに、外見の方は、いかにも心が広いように“いやぁーまいったぁ、まいったよぉ~ん”などと言いながら、身体中殺意で満ち満ちてるのに、ニコニコ、ハッハッハッー!だっ!あああああ?一体なんで、今、こんな考えが俺の頭の中をよぎるんだぁぁああああ!虚栄だ!奢りだ!エゴと言う名のプライドだ!って罪悪感に苛まれてる場合じゃねぇぇぇぇっー!自己を捨て世の為に正義の為に尽くすんだぁぁぁっ!くわっくわっ!ぶっ殺すんだーーー!皆、ぶっ殺すんだぁっぁあっぁ!ああああ、たとえ、ここに核爆弾があって爆発させたとしても、せいぜい渋谷が壊滅するぐれぇじゃねぇかー!人間を全部殺さなきゃ駄目だぁぁぁぁぁっ!もし俺が金正日だったら!俺が北の将軍様だったら、アメリカに査察を満足いくまでやらせてやって、何なら“はい、大量破壊兵器持ってました、差し出します”と何十発か大陸弾道ミサイルを提出してリビアみたいにアメリカに屈したように見せかけても良い。その間に絶対にバレない様に地下に大秘密基地を作って、ガンガン核開発してテポドン3・4・5・6・7号と全世界中を射程に完璧に収めるまで性能を高め、長崎の10000倍の威力のあるプルトニウム型核弾頭を装備したテポドン発射台を十万台配置し、準備が完全に整ったら、一斉に十万発、世界中にブチかましてやるぅぅうぅぅうっ!一匹も糞人間野郎&腐れまんこが生き残れないようになっ!けけっけけけけけーーーーー! しかしながらだ!ちきしょぉぉぉおぉぉぉおっ!俺は金正日じゃねぇし、体力もあんまりねぇし、銃弾も6発しかねぇ!どうすりゃぁぁいいんだぁあああああ!どうしたら、全人類を滅ぼせるんだぁああああああああ!ぎゃぁぁぁぁぁーーー!あ、そだ、死ねばいいんだ。死ねば、この腐りきった世界は、俺から滅びるんだ。この糞世界を認識してんのは俺だから、俺が死ねば消えちまうっぜっ。何て簡単なんだ!けっ熱くなって損したぜ!自殺だ、自殺!自殺ったら岸壁だ!岸壁から飛び降りればいいんだ!岸壁じゃなきゃ嫌だ嫌だ!俺は岸壁から飛び降りて自殺したいんだ!何故だ?えええぃいいい!分からん!岸壁から飛び降りるのが俺の美学だからだぁああああっ!岸壁だった東尋坊だぁああああ!土曜サスペンス劇場でよく出てくるからだぁぁぁっぁぁっ!自殺は東尋坊の岸壁から飛び降りるって決まってるんだ!決まってるんだ!
自殺をしよう!世界を滅ぼそう! KIPPLE |