先日、ふと見たテレビ番組にレヴァンフランセの面々が出演していた。
レヴァンフランセは、
フルートのパユ、クラリネットのメイエ、オーボエのルルーといった
一流のフランス出身音楽家による室内楽ユニットで、
プーランクを十八番とする大人気グループである。
ちなみに、写真で見たとき、このユニットで一番イケメンなのは
ポール・メイエ氏(クラリネット)なのだが、
実演やテレビでのインタビューの様子を見ていると、
これはもう、ただ、ものすごいいい人である、
ということが伝わってきて、
演奏家というより、頼れる事務局長と言う空気が漂う。
「他の方は心から楽しそうで大騒ぎで、
何も話を聞いて下さらなかったんです。
なので、伝票は、端っこでウーロン茶を飲んでいたメイエさんに
渡したんですよ」
とはレヴァンフランセ日本公演の打ち上げ会場となった
「居酒屋・美濃囲い」の女将の証言である。
さらにちなみに、
このグループで一番態度がデカいのは、
おぎやはぎの小木さんに似たピアニスト、エリック・ルサージュ氏である。
パユやメイエのような華々しい受賞歴があるわけではないのだが、
演奏を見ていると、そして、なにより立ち振る舞いを見ていると、
この男が支配者だ、と言う空気が漂うのである。
「明らかに態度が悪いから、ルサージュに
『お前がボスだろ』って聞いたら、
『ウイ』って答えたんだよ。」
とはレヴァンフランセの打ち上げ会場となった
「レストランバー矢倉」のマスターの話である。
閑話休題。
まあ、とにかく、そんな伝票を渡すならこの人しかいないメイエ氏や
誰がどう見てもボスに見えるルサージュ氏から成るユニット
レヴァンフランセなわけであるが、
私が見たインタビューで、パユはこう答えていた。
パユは、周知の通り、20そこそこの若さで、
ベルリンフィルの首席フルート奏者になり、
数々のソロCD,フルートコンチェルトのCDをリリースした現代最高のフルート奏者である。
技術も表現もあまりに素晴らしいため、
本当にフルートだろうか、と言いたくなる演奏の数々。
あまりにウマすぎてフルートに聞こえない音色を出すフルート奏者は、
最高級の音楽家であることはともかくとして、
最高級のフルート奏者と言えるのか、だって、フルートに聞こえないんだもの、
と、禅問答の一つもしたくなるではないか。
閑話休題。
まあ、とにかく、そんなパユに、ギャラリーの音大生の方が質問をした。
音大生の方の質問は、演奏会後にモチベーションがダウンしてしまうのだが、
どうしたらよいでしょう、的なものであった。
これに対するパユの答えは、
「音楽会の後に、楽しかった、またやりたい、もっとやりたい、
と思えないのなら、
音楽へのアプローチを変えてみてはどうか。
演奏会をすることだけが音楽を楽しむ方法ではない。」
と、こういうものであった。
厳しい。
いや、しかし、その通りだと思う。ちなみにこの時、
パユの表情は硬く、怒っているといっても過言ではなかった。
厳しい。
およそ何かのプロであるなら、この厳しさに耐えれるよう、努力しなければならない。
私は、このパユの表情を一生忘れないと思う。
ちなみに、番組では、このパユ発言後に、がちがちに緊張する空間を
ルルーが盛り上げていた。
「きっと君は緊張してしまうんだろう。
僕も演奏会で緊張しちゃうことあったよ。
だけど、力を抜くことを覚えれば自然に楽しくできるよ。」
的な発言で、会場の空気は和らいでいった。
ルルーの笑顔は、素敵だった。
たぶん、モテると思う。
レヴァンフランセは、本当に良いチームだ。