タケオカ先生の雄たけびにつづけ、ツツミ先生が指摘をした。
「うーん、こう考えてくると、
法令審査として、明確性の審査をして、
処分審査でブリ画像停止命令の審査をする、
という流れが自然な気がしますが・・・。」
「それで済むなら話は早いわい。
しかしの、ホレ、佐渡先生は、出題趣旨でこう書いとるのじゃ。」
法令違憲に関して本問で問題となるのは,
実体的権利の制約の合憲性である。
この点での本問における核心的問題は,
肖像権やプライバシーを護るために制約されている
憲法上の権利は何か,である。
「この記述は、明らかに明確性とは違う表現の自由からの
法令審査を要求する言葉じゃ。」
「じゃあ!やっぱり、ブリ画像を典型的適用例とした
法令審査Bを要求しているんですよ。
それで、明確性審査+ブリ画像法令審査Bの二段階で処理。
完璧じゃあないですか!うん。この完璧っぷりに乾杯!」
タケオカ先生は、こういうとトマトジュースを一気飲みした。
彼は、スポーツマンなので、飲酒喫煙を控えており、
居酒屋ではトマトジュースを飲むのだ。
「それも違うの。佐渡先生は、採点実感を語りながらこう言っていたはずじゃ。」
処分違憲の審査で,法律適用の合法性,妥当性のみを論じる答案が
今年も多かったわね。
憲法との関係を論じないと,合憲性審査を行ったことにならないの。
そこのとこ、分かっているの?
本問では,「生活ぶりがうかがえるような画像」の公表を禁じることの
合憲性をきちんと論じる必要があるのよ。
「ほれ、どう見ても、ブリ画像の処分審査Bを要求しとる。」
一同は、しばし沈黙した。ツツミ先生もタケオカ先生も
アイデアはないらしい。
そうこうしていると、憲法の神様は、キウイサワーを注文した。
「そこでじゃの、ヒントになる佐渡先生の発言はコレじゃ。」
当該画像が公道で撮影されたもので,
カメラの高さ制限は守られていることなどに留意しつつ,
生活ぶりがうかがえる画像として
どのようなものが映し出されるのかを具体的に想定した上で,
具体的にどのような権利利益に影響が及び,
どのような被害が生じる危険性があるのかなどを,
インターネットの特性をも踏まえながら丁寧に論じることが求められるのよ。
「どうやら、佐渡先生は、
ブリ画像の中にもいろいろランクがあることを指摘しておる。
例えば、
『その住居が、女性や老人の一人暮らしであることがうかがえる画像』
これは、犯罪ジャッキの危険性からして、かなり利益侵害の程度が高そうじゃの。」
ふむふむ。高レベルブリ画像と呼ぼう。
「これに対して、
『単に、ふとんがほしてあったり、洗濯物がほしてあったりして、
なんとなくみっともない思いをする画像』
『家の外観が分かる画像』
『家の庭から、家庭菜園が趣味であることが分かる画像』
なんかじゃと、まあ、なんとなくイヤという気もするが、
権利利益侵害とまで言えるか、かなり微妙じゃろ。」
ふむふむ。低レベルブリ画像だ。
「おそらくの、佐渡先生が法令審査Bで検討させたい典型的適用例とは
<高レベルブリ画像を限定して、停止を要求する命令>じゃな。」
「ああ、そう言えば、この事案、ブリ画像のレベルにかかわらず一律に
禁止命令が出てますね。
この『一律の禁止』という事情は、
高レベルブリ画像への『限定した禁止』の事例よりも
原告の憲法上の主張にとって有利に働きます。」
「と・い・う・ことは、処分審査Bで扱ってほしいのは、
<低レベルブリ画像を含め一律に禁止する、今回の命令の合憲性>
なのですね!
おおおお!確かに、違う問題を混同していた気がします。
ブリ画像、確かに中にはいろいろあります。
私の頭の中で、ナスの一本漬とラーメンがごっちゃになっていたのと一緒だ。
すっきりしました。すっきりしましたよ。
これは、富士急ハイランド全絶叫マシン終了後並みのすっきりだ!!」
富士急ハイランドの絶叫マシンは恐ろしすぎるので、やめてほしいが
タケオカ先生は、すっきりするらしい。恐ろしい人である。
ここで、神様の手元にキウイジュースが運ばれてきた。
「ほほほ。その通りじゃ。」ごくごく。
「こうして、今や審査対象は画定し、違憲審査基準の意味も判明した。
これで、佐渡先生の想定する模範解答を画定する舞台はととのった。」ごく。
「あとは、ほれ、この舞台の上で、演技をすればよいわけじゃ。」ごくごく。
「まあ、これを比較考量で処理するのは簡単じゃ。
そこで、違憲審査基準で処理してみるかの。ほほ。」ごくごく。
こうして神様はキウイジュースを飲みほした。