KIMISTEVA@DEEP

新たな「現実」を構成するサブカルチャー研究者kimistevaのブログ

「いまの君がそうなったのは きっとそのせい」:東京都写真美術館『文学の触覚』

2008-02-18 18:48:13 | 趣味
東京都写真美術館まで『文学の触覚』展をみにいってきました。

東京都写真美術館『文学の触覚』

お目当ては、川上弘美+児玉幸子「七つの質問」だったのですが、
残念ながら、
静かに一人、鏡に向き合うことの意図されたはずのこの作品は、
ネジを回したい盛りの子どもさんを連れる家族に占領されていて、あまりきちんと見られませんでした。
「作品のコンセプトはわかった」というところで、あきらめて帰ってきました。


それでも、とても印象的な作品があって、
わたしはそれに出会えただけでとても満足でした。

それは、平野啓一郎+中西泰人「記憶の告白-reflexive reading」

「放課後の教室」「「あのこと」だよ「あのこと」」
「ほら 覚えているだろう」

など、ひとつの「記憶の告白」をめぐるひとつのテクストの断片が視覚的に分散し、いろいろな重なりや動きを伴いながら、
大きなスクリーンに映し出されるこの作品は、
なんというか、すごく 怖い。

誰にだって、忘れ去ろうとする過去、
封印しようとする過去はある。
その過去を、静かにほりかえされるような、そんな怖さがある。
そして、その怖さがなんとも美しい。
本当に、美しい作品であると思う。

大きなスクリーンの前に置かれた白い球を、
ゆっくりと動かすと、それに呼応するように、
スクリーン上の「記憶の告白」もゆっくりと渦を巻いていく。


わたしが白い球を何度も大きく動かしてから、前を見ると、
他の文字よりもうっすらと濃い文字で、



「いまの君がそうなったのは きっと そのせい」



 
と、書かれていた。
(なお、あとから原テキストを確認してみたところ、
この文そのものはテキストの中にはなかったから、言葉同志の偶然の出会いでこの文が浮かび上がってきたことは間違いない)

確かに、わたしがこうなったったのは、きっと「その」せいだと思う。
「その」の「それ」がいったいなんのかはわからないけれど、
そのわからない「それ」に向き合わされそうになり、怖くなる。

わたしが こうなったのは、きっと そのせい。


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