…本の副題にはあえてつっこまないでください。
日本で質の高いエスノグラフィーに出会うのはまだまだ難しいと思っていましたが、最近、すばらしいエスノグラフィーの本に出会いました。
それが、阿部真大『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』。
先日、『高学歴ワーキングプア』を読んだばかりだったこともあって、「どうせ適当な資料と取材で話題性の高いトピック(いわゆるロストジェネレーションの労働問題)をとりあげてるだけだろ」と思っていたのですが、全然ちがいました。
もちろん新書なので、いろいろな人に向けたためか、文体がくだけていたりはするのですが、中身はすばらしく良質なエスノグラフィーです。
それもそのはず。
この本は社会学の権威ある学術誌『ソシオロゴス』含め、2つの学術雑誌に掲載された論文をもとに書かれているのです。
そんな良質のエスノグラフィーの成果が、700円足らずで読めるなんてこれまでありえなかったことですよ。
エスノグラフィーを志す人はぜひ買うべきだと思います。
…ついでに『高学歴ワーキングプア』を買って読み比べれば、「良質のフィールドワーク」「良質のエスノグラフィー」というものがどういうものか、嫌というほどわかります。
とある書評で『高学歴~』は、「ライフヒストリーに基づいて」高学歴ワーキングプアの実態を明らかにしている、というような書き方がされていましたが、わたしはあの本に掲載されているのは、ただの「愚痴」や「噂話」であって、調査データである「ライフヒストリー」にはなりえないものだと思っています。
そういう意味で、質的調査をまとめて「ただの主観的経験の羅列だ」「一般化できないから価値がない」と批判する人たちにも読み比べてほしい。
厳密に行われたフィールドワークにもとづく知見と、たまたま見聞きしたことへの主観的感想との違いが明確にわかります。
フィールドワーカーの仕事は、対象となるフィールドに生きる人たちの意味世界を描きだすことにあります。
だけど、描きだすことそのものに意味のあるようなフィールドを探すことも、そこから人々に洞察をもたらすような考察を導きだすことも、恐ろしく難しい。
しかしこのエスノグラフィーはそれがきっちりとできている。
筆者は、わたしにとって、ため息をつきたくなるほど、うらやましい才能の持ち主です。
現在は、老人介護の現場のフィールドワークをされているとのこと。
でも、ケア・ワーカーの自己実現型ワーカホリックは、バイク便のライダーたちほど単純ではないという感じがします。
妹から見聞きする限り、ケア・ワーカーはけっこう職場を転々としているようだし、なにより本書にかかれているバイク便のライダーたちに比べてはるかに労働条件にたいして「したたか」。
潜在的介護福祉士が多いのも、彼女たち/彼らの労働条件に対する「したたかさ」を示しているように思います。
また、ケア・マネージャーや看護師といった、安定雇用へのキャリアアップの可能性が残されている、というのも大きな違い。筆者が述べているように、不安定雇用でこそワーカホリックが問題となるのなら、ケア・ワーカーはそもそもその視点からは問題にすらならない可能性もあります。
そんなわけで、彼がいったいどう切り込むつもりなのか、ものすごく興味あります。
介護の職場には「やさしさ」のトリックはそれほど機能していないようですし、さて彼女たちの不安定雇用(?)わ支えるトリックがあるとしたら、いったい、それは何か!
ぜひ明らかにしてもらいたいものです。
日本で質の高いエスノグラフィーに出会うのはまだまだ難しいと思っていましたが、最近、すばらしいエスノグラフィーの本に出会いました。
それが、阿部真大『搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!』。
先日、『高学歴ワーキングプア』を読んだばかりだったこともあって、「どうせ適当な資料と取材で話題性の高いトピック(いわゆるロストジェネレーションの労働問題)をとりあげてるだけだろ」と思っていたのですが、全然ちがいました。
もちろん新書なので、いろいろな人に向けたためか、文体がくだけていたりはするのですが、中身はすばらしく良質なエスノグラフィーです。
それもそのはず。
この本は社会学の権威ある学術誌『ソシオロゴス』含め、2つの学術雑誌に掲載された論文をもとに書かれているのです。
そんな良質のエスノグラフィーの成果が、700円足らずで読めるなんてこれまでありえなかったことですよ。
エスノグラフィーを志す人はぜひ買うべきだと思います。
…ついでに『高学歴ワーキングプア』を買って読み比べれば、「良質のフィールドワーク」「良質のエスノグラフィー」というものがどういうものか、嫌というほどわかります。
とある書評で『高学歴~』は、「ライフヒストリーに基づいて」高学歴ワーキングプアの実態を明らかにしている、というような書き方がされていましたが、わたしはあの本に掲載されているのは、ただの「愚痴」や「噂話」であって、調査データである「ライフヒストリー」にはなりえないものだと思っています。
そういう意味で、質的調査をまとめて「ただの主観的経験の羅列だ」「一般化できないから価値がない」と批判する人たちにも読み比べてほしい。
厳密に行われたフィールドワークにもとづく知見と、たまたま見聞きしたことへの主観的感想との違いが明確にわかります。
フィールドワーカーの仕事は、対象となるフィールドに生きる人たちの意味世界を描きだすことにあります。
だけど、描きだすことそのものに意味のあるようなフィールドを探すことも、そこから人々に洞察をもたらすような考察を導きだすことも、恐ろしく難しい。
しかしこのエスノグラフィーはそれがきっちりとできている。
筆者は、わたしにとって、ため息をつきたくなるほど、うらやましい才能の持ち主です。
現在は、老人介護の現場のフィールドワークをされているとのこと。
でも、ケア・ワーカーの自己実現型ワーカホリックは、バイク便のライダーたちほど単純ではないという感じがします。
妹から見聞きする限り、ケア・ワーカーはけっこう職場を転々としているようだし、なにより本書にかかれているバイク便のライダーたちに比べてはるかに労働条件にたいして「したたか」。
潜在的介護福祉士が多いのも、彼女たち/彼らの労働条件に対する「したたかさ」を示しているように思います。
また、ケア・マネージャーや看護師といった、安定雇用へのキャリアアップの可能性が残されている、というのも大きな違い。筆者が述べているように、不安定雇用でこそワーカホリックが問題となるのなら、ケア・ワーカーはそもそもその視点からは問題にすらならない可能性もあります。
そんなわけで、彼がいったいどう切り込むつもりなのか、ものすごく興味あります。
介護の職場には「やさしさ」のトリックはそれほど機能していないようですし、さて彼女たちの不安定雇用(?)わ支えるトリックがあるとしたら、いったい、それは何か!
ぜひ明らかにしてもらいたいものです。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
わたしもこの本は読みましたが、謎解き形式で面白かったです。
ですが個人的にはもっと何か驚かされるような隠された真実が欲しかったです。