気ままな旅

マイカーでの気ままな旅で、束縛された予定や時間にとらわれない、自由奔放な行動をとる旅の紹介です。

女人高野の室生寺  ・・・・・ 奈良県

2009-01-07 10:33:44 | 気ままな旅
 12月14日(日) 近鉄室生口大野駅の近くにあって、室生寺(むろうじ)までの道中にある大野寺の弥勒磨崖仏(みろくまがいぶつ)の石彫像を見学した後、愛車で室生寺へ向かった。
 この室生寺は大和平野の東方、奥深い山と室生川の渓谷が続く場所に位置して建てられている。 車で15分ほどの距離である。
 奥深い深山にある室生寺の周辺の山稜には、所々に雲がかかっているが、天気は快方に向かい雨の心配はなさそうである。
 駐車場から室生寺までは、室生川に沿って5分ほど歩くと、門前町があり、中ほどには室生川をまたぐ赤い欄干の太鼓橋が架かっている。
 その頂きには、古代の太陽神の祀りにまつわる室生山が見えている。
  太鼓橋を渡ると、もうそこは境内で、真正面に木肌屋根の表門が姿を現し、奥にはいくつかの伽藍が見えている。 

          
             室生寺の伽藍配置図・山の頂上付近が奥の院 

 室生寺は寺伝によると、白鳳年間(7世紀末~8世紀初頭=飛鳥時代)天武天皇の勅願により、役行者が山林修行道場として開創する。
 一時荒廃していたが、唐より帰国した空海が恵果阿闍梨より授かった、如意宝珠を室生の山に納め、復興を図ったと伝わっている。
 また、別の伝えとして、宝亀8年(777年=奈良時代)山部親王(後の桓武天皇)の病気平癒祈願のため、興福寺僧・賢ら5人が室生山中で「延寿法」を修した。
 この功により室生寺名を賜り、勅命により、賢の高弟修円が建立したと伝わっている。
 以来、室生寺は山林修行の道場として、また、法相、真言、天台の各宗兼学の寺院として、独特の仏教文化を形成している。
 江戸元禄年間に真言宗として、独立、女人の参拝が許され、高野山の女人禁制に対し、女性も参拝を許される「女人高野」として多くの人に親しまれ、今日まで続いている。

          
            室生川にかかった太鼓橋を渡ると室生寺境内である。

          
 木肌屋根で作られた表門(一般の見学者はここからは入れない)横には女人高野室生寺の石柱が立てられている。
 女人禁制の「高野山」に対して女性の参拝を認めた為、「女人高野」と呼ばれている。

           
晩秋の室生寺を訪れ仁王門へ向かう若いカップル 仁王像(仁王門右側の像)

          
                パンジ池に映る逆さ仁王門(鎧坂より撮影)

          
          鎧坂(よろいざか)と両側に植えられている石楠花(シャクナゲ)
 
 周りに石楠花が植えられた鎧坂の石段を上っていくと、次第に穏やかな杮葺(こけらぶき)の金堂の屋根が姿を現してくる。
 石段を上りきるとそこは金堂の境内で平地になっている。
 2段で出来た石垣の上に高床の正面一間通りは、江戸時代に付加された礼堂で、これがなかった時代には、この石段上から堂内の仏像の姿が拝めたようである。
 金堂の内陣で堂内の須弥壇には、中尊の釈迦如来像(国宝)を中心に、薬師如来と地蔵菩薩像(重文)、文殊菩薩(重文)と十一面観音像(国宝)の五尊が一列に配されている。
 五尊像は、大きさや作風に違いがあって、同時期のものではないようであるが、いずれも一木彩色像である。
 本尊の背後には帝釈天曼茶羅を描いた板壁がはめられている。
 また、五尊の前には、小さな薬師如来の眷属として、十二の方角を守る「十二神将立像=重文・鎌倉時代」が配されている。
 この内陣は「撮影禁止」でお見せできないのが残念である。

           
               鎧坂を上りきると真正面に見える金堂(国宝)

 金堂(国宝)は平安初期に建立され建物で、単層寄棟造りである。

 室生寺は、石楠花の宝庫で、堂塔を結ぶ石段の両側に約3000株が植えられ、花見の季節(4月中旬~5月上旬)には多くの人たちが訪れて楽しんでいる。

          
   金堂には本尊の釈迦如来像などの国宝をはじめ、重文の多くの像が安置されている。       

          
             弥勒堂方面から撮影した金堂と家族連れの見学者

          
                天神社拝殿 奥に天神社がある

          
     金堂前庭の右手に、天神社拝殿脇の岩に彫られた石仏(軍茶利明王石仏)               
   
          
                   弥勒堂(重要文化財)
 
 鎌倉時代前期に建てられた。金堂前庭の左側にある三間四方の堂は、修円が興福寺の伝法院を移築したと伝えられている。
 元は南向きの建物であったが、室町時代には東向きとし、江戸時代初期にも改造されている。
 内部の四本柱の中に須弥壇を置き、厨子入りの弥勒像を安置している。

          
         工事中の本堂(灌頂堂)国宝 最も重要な儀式がここで行われる

 金堂からさらに石段を上ると本堂(灌頂堂)がある。
 残念ながら工事中で建物を見ることは出来ないが、真言密教の最も重要な儀式を行う堂で、真言寺院中心であることから本堂、あるいは灌頂堂と言われ、延慶元年(1308年=鎌倉時代)の建立である。
 五間四方入母屋造りの大きな建築で、和様と大仏様の折哀洋式を示している。
 ※灌頂(かんじょう)とは、主に密教で行う、頭頂に水を灌ぎ、正当な継承者とする為の儀式。

 本堂(灌頂堂)の前を進むと右方向に石段があり、見上げると女性的で美しい五重塔が聳え建っている。
 この五重塔は空海が一夜で建立したとの伝えがある。平安初期の建立で国宝に指定されている。
 この五重塔は、屋外に建つ五重塔では最も小さく16mの高さである。

 1998年(平成10年)9月22日台風7号により、杉の大木が倒れ、五重塔は大きな被害を受けたが、2000年(平成12年)9月修復工事が完了している。

           
            石段下からの五重塔      美しい姿を見せる五重塔

           
           平坦地に建つ五重塔  台風で大被害を受け修復工事完了元の美しさを見せる五重塔

          
              奥の院への参道の上から、均整のとれた五重塔

          
              脇に配され五重の塔を見守る石仏

           
     杉の大木が林立する奥の院への参道 周りとの調和がとれ美しさを見せる五重塔

 五重塔の横の道を行くと、大きな杉の木にか囲まれた参道が続き、さらに進むと急斜面に出来た石段が450段(下からでは720段)が奥の院まで続いている。
 石段を登り詰めると目の前には、奥の院常燈堂の木組みの舞台が見えてくる。
 
           
           奥の院への参道の赤い欄干の橋、その周辺はしだの群生地

           
     奥の院まで延びている急傾斜の石段 奥の院の木組みの舞台まで続く石段、まるで心臓ヤブリ

             
        急傾斜の建物を支える木組みの柱 急傾斜地に建つ奥の院(常燈堂)

          
              奥の院に建ち木組みの舞台を持つ常燈堂(位牌堂)

          
                奥の院にある御影堂(重文)
 
 五重塔の脇を通って長くきつい450石段を上り切ると、そこは奥の院である。
 弘法大師を祀る御影堂は大師堂とも言われ、板葺きニ段屋根の宝形造りで、屋上の宝珠と路盤は優品である、各地にある大師堂の中でも最古級に属し、鎌倉時代後期に造られている。

           
                駐車場からの室生寺周辺の景観

 女人高野として全国に知られる室生寺、私は昨年6月高野山を訪れ、女人堂などを見学していた折に、急に室生寺のことを思い出し、行きたいと思っていた。
 11月にも室生寺の近くにある、赤目四十八滝の紅葉見学に訪れた時も、午後から室生寺へと計画していたが、赤目四十八滝の魅力に取り付かれ、3時間の予定が6時間もかかってしまった
 そのために、室生寺への見学は断念せざるを得なく、やっと今回の訪れとなった。
 季節的には晩秋で、もみじなどの紅葉も終わりつげ、比較的静かな雰囲気の中での見学であったが、さすが全国に知られた「女人高野」としての名刹だけあって、全国から見学者が訪れている。
 金堂(国宝)の釈迦如来像(国宝)やそれを取り巻く多くの像(国宝・重文)など量感たっぷりで仏様や衣装なども少女のような愛らしさを感じ、女人高野として訪れてくる女性達を温かく見守ってくれているように感じる。
 また、全国で一番小さく愛らしい五重塔の姿を、石段の下から初めて見上げた時には、思わず感動が湧き、暫く見とれる程であった。
 台風による重大な損傷の痕も見当たらず、見事に復元され、女人高野室生寺の魅力とシンボル的な存在感を、以前以上に発揮しているように感じてならなかった。
 静寂な雰囲気漂う奥の院も、720段の石段を上っていかねばならないが、私達にとっては、上りきった時のさわやかな気持ちの方が大きく、暫く開放感に浸っていた。
 今回、念願であった室生寺にこられて本当に良かった。
 出来れば春の石楠花のシーズンに、再度訪れたいと思いながら下山して行った。
  

 

 

                      
              



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