未明の月
2月5日
母 97歳 母97歳死去、捨そこなった駄犬である次男の想い.乱気流、裏切り。
続きです。
夜明けの蒼い薄闇のなかで
ベッドで目覚めようとしていた。
母の声がした。
存在しないはずの低い声で母ちゃんが僕を呼ぶ声だ。
枕に頭を横たえまま左右を見回す。
母ちゃんはいない。
僕はカーテンを開いた。
ベッドに仰向けで未明の空とショッピングセンターの明かりを傍観した。
南洋樹の扇の葉は垂れ下がり休んでいる。
月が雲間からこちらを覗いている。
直ぐに雲が邪魔して隠した。
母ちゃんの声が再び。
「なあ、お前、そんなに母ちゃんを虐めるな」
「悪口書かなくもいいだろう」
僕は お袋の次の言葉を待った。
未明の静寂では人は静かに囁くように喋る。
母ちゃんの言葉を探し続けた。
しかし 囁きはない。
僕はかすれ声で静かに言った。
「大丈夫だよ」
「最後の結末は虐めはないよ」
「もう少し待ってね」
「もう少し書かせてね」
僕は75歳になったんだ。
母ちゃんの気持ちも分る年になった。
お空で見えない母ちゃんに
自分の気持ちを伝えたい。
僕は葬儀の場で泣けなかった。
母 97歳 母97歳死去、捨そこなった駄犬である次男の想い.乱気流、裏切り。
続きです。
夜明けの蒼い薄闇のなかで
ベッドで目覚めようとしていた。
母の声がした。
存在しないはずの低い声で母ちゃんが僕を呼ぶ声だ。
枕に頭を横たえまま左右を見回す。
母ちゃんはいない。
僕はカーテンを開いた。
ベッドに仰向けで未明の空とショッピングセンターの明かりを傍観した。
南洋樹の扇の葉は垂れ下がり休んでいる。
月が雲間からこちらを覗いている。
直ぐに雲が邪魔して隠した。
母ちゃんの声が再び。
「なあ、お前、そんなに母ちゃんを虐めるな」
「悪口書かなくもいいだろう」
僕は お袋の次の言葉を待った。
未明の静寂では人は静かに囁くように喋る。
母ちゃんの言葉を探し続けた。
しかし 囁きはない。
僕はかすれ声で静かに言った。
「大丈夫だよ」
「最後の結末は虐めはないよ」
「もう少し待ってね」
「もう少し書かせてね」
僕は75歳になったんだ。
母ちゃんの気持ちも分る年になった。
お空で見えない母ちゃんに
自分の気持ちを伝えたい。
僕は葬儀の場で泣けなかった。
未明の空を見上げて
今、僕は嗚咽もせずにとめどなく涙垂れ流した。
今、僕は嗚咽もせずにとめどなく涙垂れ流した。
酒は涙か溜息か フォレスタ Foresta