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尿路結石のもとを分解菌に運ぶ分子の構造を解明

2023-06-22 10:37:22 | 健康・医療
世の中に知られている激痛を起こす原因として、痛風、虫垂炎、群発頭痛、心筋梗塞、尿路結石などがあります。

いわゆる「3大激痛」といわれるものにどんな組み合わせがあるかを調べると、尿路結石は必ずそのひとつを占めているようです。私が若いころ大学の後輩が尿路結石で痛みが出て、病院に運んだことがありますが本当にひどい苦しみかたでした。

尿路結石は食事で摂取したシュウ酸が腸で吸収されて腎臓に送られ、尿路でカルシウムなどと結晶化してできるといわれています。

この尿路結石の原因となるシュウ酸を分解する腸内細菌に届ける、「シュウ酸輸送体」の立体構造を岡山大学の研究グループが解明したと発表しました。シュウ酸を軟らかく包み込み、効率よく菌内に運んでいました。

この働きを生かして腸内のシュウ酸を吸収・分解できれば、尿路結石症を防ぐことが期待されます。シュウ酸輸送体はアミノ酸421個からなるタンパク質で、シュウ酸分解菌の細胞膜に埋まったような形で存在します。

これはシュウ酸を選択的に菌内に取り込み、ギ酸に分解して外に吐き出します。研究グループは輸送体の結晶化に挑戦し、大型放射光施設スプリング8でX線結晶構造解析を行って構造を解析しました。

電荷や輸送体中心部に柔軟性の高いアミノ酸であるグリシンを有することで、小さなシュウ酸だけを選んで取り込める構造になっていました。

菌内にシュウ酸を取り込み、取り込んだシュウ酸を分解してできたギ酸を外に出すという菌の働きから、菌内に向けて空間が開いている「内開き構造」やギ酸が結合した「閉じた構造」をした輸送体も別にあると考えられています。

このシュウ酸はホウレンソウをはじめとする葉物野菜や茶、ナッツなどに比較的多く含まれています。シュウ酸が水溶性であることを利用して野菜などを湯がいて食べれば摂取量が減るし、あるいはシュウ酸と結びつきやすいカルシウムを一緒に食べれば体外へ出やすくなります。

それでも血中のシュウ酸濃度が高く、高シュウ酸血症を患う人もおり、それを改善する方法としてシュウ酸分解菌の経口摂取が米国などでは検討されているようです。

研究グループは今回の研究で、シュウ酸分解菌にある輸送体が柔らかくて壊れやすいことや、菌の働きを抑える条件などの知見が溜まってきたとしています。

こういった研究が分解菌を利用しながら尿路結石症の原因を治療する方法を探るうえで基盤的な知見になると考えられます。具体化にはまだ時間がかかりそうですが、激しい痛みが出る尿路結石の予防法を早く確立してほしいものです。


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