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抗生物質が効かなくなる日

2017-02-23 10:42:22 | 健康・医療
先日タイトルのように「抗生物質が効かなくなる日」という動画を見ました。

これは耐性菌の出現で抗生物質の濫用を警鐘する動画のようですが、私はこのブログでも書いていますように、耐性菌の出現と濫用はほぼ無関係であるという、少数意見の持ち主です。

たぶん医師だけではなく医療関係者のほぼ全員が、抗生物質を使うから耐性菌が出現するという因果関係を信じていると思われます。ここでは耐性菌問題の私の考えをまとめなおしてみます。

まず細菌が耐性菌となるメカニズムは、抗生物質を修飾して活性をなくすような酵素を持っているためです。例えば最も頻繁に使われるβ-ラクタム系といわれる、ペニシリンやセファロスポリンは、β-ラクタマーゼという酵素で活性の中心であるβ-ラクタムを分解してしまいます。

またマクロライド系といわれるエリスロマイシンは、核酸塩基転移酵素によってグアニル化という反応が起こり、活性がなくなります。こういった耐性菌の持つ酵素類を不活化酵素と総称されています。

こういった不活化酵素は特別なものではなく、細菌が生存するためにもともと持っている酵素の一部が変異したものと考えられます。例えばβ-ラクタマーゼという名前はついていますが、これはタンパク質を消化するためのプロテアーゼの基質特異性が広がっただけのものです。

酵素が反応する相手を基質といいますが、プロテアーゼはタンパク質やペプチドを基質としており、通常はペニシリンを取り込むことは有りません。それがチョットした変異により、ペニシリンも基質とすることができるようになっただけです。

問題はこのチョットした変異がなぜ起きるかですが、これはあくまで突然変異です。自然界には数字で表せないほど多くの微生物が存在し、かなりの頻度で変異を起こしています。この変異は増殖時の遺伝子の複製時の何らかの刺激や、ミスによってランダムに生じているわけです。

細菌だけでなくすべての生物は、意図して変異を起こすことはできませんので、大部分は何の意味もない変異を起こしているわけです。その中にはたまたまプロテアーゼの基質特異性が広がるような変異も存在するわけです。これがβ-ラクタマーゼを持つ耐性菌になるわけですが、これはあくまで偶然であり、抗生物質がなくとも発生することになります。

このように自然界には、抗生物質耐性酵素を持つ細菌が少ないですが存在しているわけです。新しい抗生物質が出てくると2年もたたないうちに耐性菌が出現するなどといいますが、これはもともと自然界には少数存在する細菌が、病原菌として体内で検出される確率の問題だけといえます。

長くなりましたのでこの辺りで終わりにしますが、「抗生物質が効かなくなる日」は絶対に来ないと考えています。

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