ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

腸内ウイルス由来の酵素で原因菌を破壊

2020-08-08 10:35:55 | 健康・医療
腸内細菌のウイルス感染状況を網羅的に調べることで、偽膜性大腸炎の原因菌を破壊する抗菌物質を見つけ出す方法を開発したと、大阪市立大学と東京大学の研究チームが発表しました。

腸内には無数の細菌やウイルスが存在しますが、東京大学のスーパーコンピュータを使って初めて全容の解析に成功しました。他の疾患に広く応用が可能で、原因菌を特定して破壊することで腸内細菌のバランスを崩さない治療法の開発が期待されます。

腸内ウイルスは、細胞数が約100兆個とされる腸内細菌よりはるかに数が多いため、これまで網羅的に解析されていませんでした。

腸内にこれほど多数のウイルがいるということは知りませんでしたが、研究チームは腸内ウイルスの解析パイプラインを独自に作成したようです。近年は肥満や糖尿病、ガンなどの病気と腸内細菌の乱れとの関係が明らかになってきました。

研究チームは腸内でウイルスに感染した細菌に着目し、細菌の細胞を破壊するウイルス由来の「溶菌物質」と呼ばれる酵素が、治療薬として使えると考えました。

101人の健康な人の便を採取し、その中に無数にある腸内細菌と腸内ウイルスについて遺伝子を詳細に分析しました。さらに腸内細菌の遺伝子に残された痕跡から、どんな腸内ウイルスに感染するか(感染関係)を初めて明らかにして、データベースにまとめました。

続いて偽膜性大腸炎を引き起こす腸内細菌「ディフィシル菌」に注目し、この細菌に感染するウイルスをデータベースから探し、そのウイルスの遺伝子から溶菌作用がある酵素を見つけ出しました。実際にこの酵素をディフィシル菌に感染したマウスに投与そると、生存率が向上したとしています。

その他腸内細菌の大半を占める腸内ファージゲノムと腸内細菌ゲノムを組み合わせて解析することで、腸内ファージの宿主が特定でき、その情報を基に難病を引き起こす腸内常在細菌の新しい抗菌物質を複数同定しています。

腸内細菌が原因の疾患の治療には抗生物質が使われていますが、原因菌以外にもダメージを与えるため、腸内細菌のバランスを乱す恐れがあります。また海外では、抗生物質を使い続けると効かなくなる多剤耐性菌の出現が社会問題となっています。

今回の腸内ウイルス由来の酵素を用いた治療は、新しい方法として重要な位置付けになると期待されています。今回は偽膜性大腸炎の原因菌のはなしになっていますが、この研究は膨大な腸内ウイルスのゲノム解析という技術を確立できたことが重要なようです。

こういった研究が進展することで、暗黒部分が多かった腸内細菌叢や腸内ウイル研究に新たなツールができ、進展することを期待しています。