ごっとさんのブログ

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免疫型にこだわらないiPS細胞

2018-07-12 10:38:40 | 健康・医療
iPS細胞による再生医療をめぐり、免疫の型の一致にこだわらない治療法を計画する企業や研究機関が出てきました。

細胞を提供する京都大学iPS細胞研究所は、拒絶反応を減らすため、多くの人と免疫の型が合う細胞を備蓄する「ストック事業」を進めています。

iPS細胞は患者自身の血液などの細胞からつくれるため、拒絶反応の心配がないことが当初大きな利点とされてきました。理化学研究所などが2014年、世界で初めて目の難病「加齢黄班変性」の患者に、iPS細胞から作った網膜組織を移植した手術は、患者本人から作ったiPS細胞を使っています。

しかしこのように患者一人ひとりに合わせるやり方は、培養や品質管理に莫大な費用(数千万円とされています)と長い期間が必要でした。この再生医療が画期的なものであっても、この様な費用と時間がかかってしまっては通常の治療に使うことは難しくなってきます。

多くの人に安価にiPS細胞を提供するための取り組みがストック事業というわけです。多くの人と免疫の型(HLA型)が合って、拒絶反応が起きにくい型を持つ人から血液の提供を受けてiPS細胞を作り備蓄しておき、希望の研究機関や企業に配っています。これにより患者から作るより費用や時間を抑えられることになります。

iPS研究所のストック事業は、国が毎年数十億円を投じています。山中所長は昨年12月の文部科学省の作業部会で、3年後に日本人の5割をカバーする方針を伝え了承されています。実際病気や体の部位によって、HLA型を一致させない臨床研究や製品開発の計画がいくつも進んでいます。

6月5日付けで厚生労働省が正式に了承した、大阪大学のグループによる重症心不全の臨床研究は型を合わせていません。一致させても心臓だと拒絶反応が起こるため免疫抑制剤で抑える予定のようです。

現在開発中の12製品のうち免疫型を合わせる予定は4種で、他は一致させないか未定とのことでした。脊髄損傷など中枢神経系の病気を軸に開発を進める企業では、「中枢神経系は拒絶反応が起きにくい免疫寛容といわれています。会社の事業としてはHLA型にこだわらない方法で試験を進めていきたい。」と述べています。

iPS研究所などが昨年暮れに再生医療を目指す29機関に行ったアンケートでも、型を一致させないが半数を占めています。型を合わせない再生医療が主流になれば、多大なコストをかけて多くのHLA型をそろえるストック事業の意義が揺らぐことになります。

この再生医療が一般的な治療法となるには、如何に時間とコストを下げるかが問題ですので、型をそろえるべきかの議論より安価な方法論の確率が望まれます。