十津川村の「ゆっくり散歩道」
紀伊半島の南部に位置し、奈良県の3分の1以上の面積を占める十津川村ですが、十津川温泉郷として人気を集めています。
しかし、温泉街を一歩踏み出すと、どの地域もかかえている過疎高齢化が進んでいるのです。特に日本一長いとされる吊り橋で知られている谷瀬集落もこの問題に直面しています。
・十津川・ゆっくり散歩道で活性化
十津川村谷瀬集落には、日本一長い297mの生活には欠かせない吊り橋があります。そしてこの吊り橋は「谷瀬の吊り橋」として広く知られているのです。そのため、この吊り橋を目当てに年間何万人という観光客が訪れるのです。
この橋は昭和29年(1954年)に、集落の人たちがお金を出しあって完成させた吊り橋で、総工費は当時の金額で800万円(現在の価値で1億円以上)だったそうです。
吊り橋が建設される前は、丸太橋が架けられていたのですが、大雨のたびに流され、また、雨の日に通学している子どもが足をすべらせ川に落ちるといったことが多くあり、村の人たちの話し合いで吊り橋を架けようとなったとのことです。
ところで、2014年4月に「ゆっくり散歩道」ができるまで、国道168号から吊り橋を渡った先にある谷瀬集落は静かだったのです。
このとき集落の人たちは、過疎高齢化が進み、いつか集落が無くなってしまうと思っていたらしいです。
ゆっくり散歩道とは、吊り橋を渡った後、谷瀬の集落内の家々や畑・沿道の花を眺めながら歩き、吊り橋を山から一望できる展望台を目指す片道40分のコースなのです。
この道は、2011年の紀伊半島大水害が契機となり、集落を知ってもらい交流人口を増やし、集落を外にひらくことでしたが、集落内に観光客が入ることへの不安などがあったそうです。
しかし、いざ観光客を招き入れて見ると大きなトラブルもなく、集落に活気が溢れまた、集落に移住する若い世帯も増えたのです。
・散歩道の整備は住民の技術と学生の企画力
散歩道の整備の大半は、集落の住民の手で行われているのです。
展望台に至る山道の木を伐採して、伐採した木を使ってベンチを作りまた、立派な水車まで造りあげているのです。
集落には、元林業関係者や大工など、技術を持った住民が多くいるのです。そのため、村の人が数人集まればなんでもできる頼もしい集団なのです。
この谷瀬の集落の一連の活動には、奈良女子大学の学生が集落住民と一緒に村づくりに取り組んでいるのです。
散歩道には現在、学生の手書きのイラストで製作された看板と、十津川産杉の木製看板の2種類を場所に応じて設置されています。
・自家製お茶の味わい
谷瀬集落の多くの家の敷地内には、お茶の木が栽培されていて、家ごとに1年間の自家用のお茶をつくっているのです。
毎年、ゴールデンウイーク頃がお茶づくりの季節なのです。
お茶の新芽を摘み、熱した鉄鍋にお茶の葉を入れてしんなりするまで、軍手をはめた手でぐっと押しつけるのです。
その後、むしろの上で、しっかり揉みこむのです。そして後は、広げてしっかり乾燥させれば完成です。
この乾燥ですが、天日干しだと番茶に、太陽にあてずに乾燥させれば緑茶になるのです。
谷瀬集落では集落をひらく実践のひとつとして、お茶づくりなどの生活体験を「ゆっくり体験」として開催しているのです。
また、学生も関わる新たな特産品として純米酒「谷瀬」も販売しているのです。このように十津川村谷瀬集落では、集落の人たちと学生が共に取り組んで集落を盛り上げているのです。