クロスボーダー取引といっても摘発されるのは結構単純なケースが多いし、
実際に複雑な取引は発覚しているのが氷山の一角という可能性もある。次
のケースはやや複雑だが、基本的なパターンは同じなので2つ同時に
ケース2
--------------------------------------------------------------------
欧州大手金融のクレディ・スイス(CS)日本法人の元部長が、海外で
行使したストックオプション(自社株購入権)の利益にかかる約1億30
00万円を脱税したとして、東京国税局から所得税法違反の 疑いで東京
地検に告発されたことがわかった。
また、グループ2社の社員ら約100人が同局から計約20億円の申告
漏れを指摘されたことも判明。 海外でのストックオプション行使を巡り、
金融機関社員による申告ミスが大量に発覚するのは異例だ。
告発されたのは、CS証券(東京都港区)債券本部外国債券営業部の元
部長(46)。
関係者によると、元部長は、2007年までの2年間で、親会社から付与
されたストックオプションの 権利行使で得た利益約3億5000万円を
申告せず、所得税約1億3000万円を脱税した疑い。 CSのスイス口座
で行使して現金化、シンガポールの銀行に送金させて資産運用を委託して
いたという。 同局は、元部長が資金を他国に移動させていることなどから
意図的に納税を免れた疑いがあると 判断したとみられる。
元部長は07年8月に退職し、現在、カナダ・バンクーバーに在住。同局に
「申告義務がないと思った」 などと犯意を否認しているとされる。既に
修正申告し納税を済ませているという。
一方、申告漏れを指摘されたのは、CS証券とCSプリンシパル・インベス
トメンツ東京支店の社員ら 約100人。時期は07年までの数年間で、権利
行使で取得した株式を現金化していないことや、 海外口座で行使しているこ
となどから、申告義務はないと思っていた例が大半だという。
追徴税額は過少申告加算税を含め数億円とみられる。
--------------------------------------------------------------------
ケース3
--------------------------------------------------------------------
米国の親会社から付与されたストックオプション(自社株購入権)を行使し
て得た所得を隠し、約6千万円の所得税を脱税したとして、東京国税局が
所得税法違反容疑で、米医療用品大手「ジョンソン・エンド・ジョンソン
(J&J)」日本法人の広瀬光雄元代表(72)=東京都渋谷区=を東京
地検に告発していたことが7日、分かった。
関係者によると、広瀬元代表は日本法人「ジョンソン・エンド・ジョンソ
ン・ジャパン・インコーポレイテッド」や他のグループ企業に役員として在
籍した当時に、親会社のJ&J社から役員報酬としてストックオプションを
付与された。
その後、権利行使して取得した親会社株を運用したり、市場で売却したり
して得た2005年と07年の2年分の所得約1億6千万円を隠し、所得税
を免れた疑いが持たれている。
株の運用は米国の証券会社の取引口座で行い、売却益は海外口座に預金し
ていたという。
隠した所得の一部が米国から別の国に開設した口座に移し替えられるなど
複雑に移動していたことから、国税局は仮装隠ぺいを伴う悪質な所得隠しと
判断したもようだ。 広瀬元代表は01年~08年度に経済同友会の幹事を
務めていた
--------------------------------------------------------------------
二つのケースは細かい部分をのぞけば下の絵図の通りになる。事例としては
単純そのもの。
ストックオプションを海外口座で行使してそのまま海外に滞留させ、国内
に戻さない。CS元部長のケースは確信犯だな。退職後、日本に戻らず今でも
バンクーバーにいるというのはガッツがあるというか、税金減らすぞという
意気込みも感じられ、ある意味あっぱれ。行使したオプションはさらにシン
ガポールに移すという周到さもまあ、褒めてあげるべきか悩むところだが、
その努力だけは買っておこう。これもケース1と同様vesting dateがいつなの
かという点だけが気になるが、恐らく退職するまで売却せずに株で保有して
いた可能性が高い。退職すると気分が大らかになるのだろうか。ケース3は
経済同友会理事ともあろう方がという気もするが.....CS元部長のケースでは
海外在住にも関わらず、何故あげられたかという点だが、これは想像だが、
恐らく、国内に自宅を保有している。毎年、日本に何度か戻っているなど、
実質の居住地が日本である可能性がある。ガッツ見せるなら、日本の不動産
全て売却して骨を埋める覚悟じゃないと駄目だろう。
仮にvesting dateが海外移住後で、売却して現在もバンクーバーに在住と
いうのであればCS元部長は脱税ではない。租税回避行為かどうかも日本に仮
にほとんど戻っていないのであれば、税務署の判断は別にして微妙だ。でも
まあ、多分、vesting dateに申告してなかったんだろうと想像できるけど。
J&Jのケースはまあ、クロですな。あまりにも単純。しかも見事にパターン
にはまっている。弁解の余地なし。「申告義務はないと思っていた」という
言い訳は苦しい。分かっていてやったとしか思えない。
でまあ、問題は「悪は必ず倒される」的な結論に持っていこうなんて気は
さらさらなく。海外に口座を保有し、国内に還流もさせてもいないのに
「なんでバレたのか」という点だ。興味あるでしょう。そう、そこの外資系
金融機関勤務のあなたですよ。退職して晴れて自由の身となり、溜め込んだ
ストックオプションを換金する日がやってきた。準備は万端。パスポートよし
住民票移動よし。海外でのすむ所も手当てした。証券会社の口座とまた別の
国にも証券会社の口座を開き、銀行口座も複数の国に開設した。後は売却し
日本にはまあ数回戻るけど、ほとぼりが冷めるまで海外に住むつもり。
そんなあなたにまさかの税務調査!!!!
何故だ。何故バレた。同じ釜の飯を食ったわけでもないけれど、私も昔外資
系企業にいたよしみ(何の?)でお教えしましょう。普通の人は税務署はもの凄い
調査能力を持っていて海外でも執拗に追求する能力があると思っている人がい
るようですが、そんなことはありません。税務署といってもやっぱり役所です。
生産性が高いわけでもなく、むしろ面倒くさい作業なんて遂行できる能力はそ
れほどないと考えたほうがいいです。では何故なんでしょうか。
答えはとても簡単です。あなたが勤めていた会社が税務資料を提出したから
です。海外に上場している企業が日本にオフィスを構えているのであれば日本
のオフィスもまともな会社です。税務署から照会がくれば正直に答えます。あ
なたは嘘をつくかもしれませんが、あなたが働いていた会社は嘘をつきません。
税務署はさっき言ったとおり、大した調査能力があるわけではありません。だ
から日本法人にこんな照会状を出すんです。「過去3年間の従業員に対して付与
されたストックオプションの実績を提出してください」
海外上場企業の日本法人なら当然、従業員の給与に関することですから、全て把握
しています。税務署から要求されれば当然提出します。拒む理由はありません。
あなたと違って。貰った資料を基に申告書と照らし合わせると差額がわかります。
源泉徴収表は既に提出済みなので付与されている人が源泉徴収表と同じ額しか
申告していなければ、当然マークされます。
最近、外資系企業の脱税話が増えてますが、理由があります。税収が減ってい
るんです。ストックオプションというのは調べるのが簡単で、しかも延滞税や
加算税も取れるんで税務署に取っておいしいんです。まさに税務署にとって「豚
は太らせて食う」という状況が現在なのです。外資系企業は今が旬ですが、撤退
も増えているので、一段落すれば自営業者、中小企業に目がいくでしょうね。税
務署は能力が高いという訳でなく、取りやすい所から取っているというのが正解
です。
(つづきます)
実際に複雑な取引は発覚しているのが氷山の一角という可能性もある。次
のケースはやや複雑だが、基本的なパターンは同じなので2つ同時に
ケース2
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欧州大手金融のクレディ・スイス(CS)日本法人の元部長が、海外で
行使したストックオプション(自社株購入権)の利益にかかる約1億30
00万円を脱税したとして、東京国税局から所得税法違反の 疑いで東京
地検に告発されたことがわかった。
また、グループ2社の社員ら約100人が同局から計約20億円の申告
漏れを指摘されたことも判明。 海外でのストックオプション行使を巡り、
金融機関社員による申告ミスが大量に発覚するのは異例だ。
告発されたのは、CS証券(東京都港区)債券本部外国債券営業部の元
部長(46)。
関係者によると、元部長は、2007年までの2年間で、親会社から付与
されたストックオプションの 権利行使で得た利益約3億5000万円を
申告せず、所得税約1億3000万円を脱税した疑い。 CSのスイス口座
で行使して現金化、シンガポールの銀行に送金させて資産運用を委託して
いたという。 同局は、元部長が資金を他国に移動させていることなどから
意図的に納税を免れた疑いがあると 判断したとみられる。
元部長は07年8月に退職し、現在、カナダ・バンクーバーに在住。同局に
「申告義務がないと思った」 などと犯意を否認しているとされる。既に
修正申告し納税を済ませているという。
一方、申告漏れを指摘されたのは、CS証券とCSプリンシパル・インベス
トメンツ東京支店の社員ら 約100人。時期は07年までの数年間で、権利
行使で取得した株式を現金化していないことや、 海外口座で行使しているこ
となどから、申告義務はないと思っていた例が大半だという。
追徴税額は過少申告加算税を含め数億円とみられる。
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ケース3
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米国の親会社から付与されたストックオプション(自社株購入権)を行使し
て得た所得を隠し、約6千万円の所得税を脱税したとして、東京国税局が
所得税法違反容疑で、米医療用品大手「ジョンソン・エンド・ジョンソン
(J&J)」日本法人の広瀬光雄元代表(72)=東京都渋谷区=を東京
地検に告発していたことが7日、分かった。
関係者によると、広瀬元代表は日本法人「ジョンソン・エンド・ジョンソ
ン・ジャパン・インコーポレイテッド」や他のグループ企業に役員として在
籍した当時に、親会社のJ&J社から役員報酬としてストックオプションを
付与された。
その後、権利行使して取得した親会社株を運用したり、市場で売却したり
して得た2005年と07年の2年分の所得約1億6千万円を隠し、所得税
を免れた疑いが持たれている。
株の運用は米国の証券会社の取引口座で行い、売却益は海外口座に預金し
ていたという。
隠した所得の一部が米国から別の国に開設した口座に移し替えられるなど
複雑に移動していたことから、国税局は仮装隠ぺいを伴う悪質な所得隠しと
判断したもようだ。 広瀬元代表は01年~08年度に経済同友会の幹事を
務めていた
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二つのケースは細かい部分をのぞけば下の絵図の通りになる。事例としては
単純そのもの。
ストックオプションを海外口座で行使してそのまま海外に滞留させ、国内
に戻さない。CS元部長のケースは確信犯だな。退職後、日本に戻らず今でも
バンクーバーにいるというのはガッツがあるというか、税金減らすぞという
意気込みも感じられ、ある意味あっぱれ。行使したオプションはさらにシン
ガポールに移すという周到さもまあ、褒めてあげるべきか悩むところだが、
その努力だけは買っておこう。これもケース1と同様vesting dateがいつなの
かという点だけが気になるが、恐らく退職するまで売却せずに株で保有して
いた可能性が高い。退職すると気分が大らかになるのだろうか。ケース3は
経済同友会理事ともあろう方がという気もするが.....CS元部長のケースでは
海外在住にも関わらず、何故あげられたかという点だが、これは想像だが、
恐らく、国内に自宅を保有している。毎年、日本に何度か戻っているなど、
実質の居住地が日本である可能性がある。ガッツ見せるなら、日本の不動産
全て売却して骨を埋める覚悟じゃないと駄目だろう。
仮にvesting dateが海外移住後で、売却して現在もバンクーバーに在住と
いうのであればCS元部長は脱税ではない。租税回避行為かどうかも日本に仮
にほとんど戻っていないのであれば、税務署の判断は別にして微妙だ。でも
まあ、多分、vesting dateに申告してなかったんだろうと想像できるけど。
J&Jのケースはまあ、クロですな。あまりにも単純。しかも見事にパターン
にはまっている。弁解の余地なし。「申告義務はないと思っていた」という
言い訳は苦しい。分かっていてやったとしか思えない。
でまあ、問題は「悪は必ず倒される」的な結論に持っていこうなんて気は
さらさらなく。海外に口座を保有し、国内に還流もさせてもいないのに
「なんでバレたのか」という点だ。興味あるでしょう。そう、そこの外資系
金融機関勤務のあなたですよ。退職して晴れて自由の身となり、溜め込んだ
ストックオプションを換金する日がやってきた。準備は万端。パスポートよし
住民票移動よし。海外でのすむ所も手当てした。証券会社の口座とまた別の
国にも証券会社の口座を開き、銀行口座も複数の国に開設した。後は売却し
日本にはまあ数回戻るけど、ほとぼりが冷めるまで海外に住むつもり。
そんなあなたにまさかの税務調査!!!!
何故だ。何故バレた。同じ釜の飯を食ったわけでもないけれど、私も昔外資
系企業にいたよしみ(何の?)でお教えしましょう。普通の人は税務署はもの凄い
調査能力を持っていて海外でも執拗に追求する能力があると思っている人がい
るようですが、そんなことはありません。税務署といってもやっぱり役所です。
生産性が高いわけでもなく、むしろ面倒くさい作業なんて遂行できる能力はそ
れほどないと考えたほうがいいです。では何故なんでしょうか。
答えはとても簡単です。あなたが勤めていた会社が税務資料を提出したから
です。海外に上場している企業が日本にオフィスを構えているのであれば日本
のオフィスもまともな会社です。税務署から照会がくれば正直に答えます。あ
なたは嘘をつくかもしれませんが、あなたが働いていた会社は嘘をつきません。
税務署はさっき言ったとおり、大した調査能力があるわけではありません。だ
から日本法人にこんな照会状を出すんです。「過去3年間の従業員に対して付与
されたストックオプションの実績を提出してください」
海外上場企業の日本法人なら当然、従業員の給与に関することですから、全て把握
しています。税務署から要求されれば当然提出します。拒む理由はありません。
あなたと違って。貰った資料を基に申告書と照らし合わせると差額がわかります。
源泉徴収表は既に提出済みなので付与されている人が源泉徴収表と同じ額しか
申告していなければ、当然マークされます。
最近、外資系企業の脱税話が増えてますが、理由があります。税収が減ってい
るんです。ストックオプションというのは調べるのが簡単で、しかも延滞税や
加算税も取れるんで税務署に取っておいしいんです。まさに税務署にとって「豚
は太らせて食う」という状況が現在なのです。外資系企業は今が旬ですが、撤退
も増えているので、一段落すれば自営業者、中小企業に目がいくでしょうね。税
務署は能力が高いという訳でなく、取りやすい所から取っているというのが正解
です。
(つづきます)