一人想うこと :  想うままに… 気ままに… 日々徒然に…

『もう一人の自分』という小説を“けん あうる”のペンネームで出版しました。ぜひ読んでみてください。

墓標

2005-10-09 21:20:03 | 日記・エッセイ・コラム
bibi5-3
 僕が一人で外出するようになってからニ~三日たったある日、庭の片隅に変なものを見つけた。
一つは白樺で囲ってあり、もう一つはレンガで囲ってある。
白樺の方には菊が一輪、レンガの方にはトナカイのぬいぐるみが置いてあった。
なにかわからず、しばし眺めていた。
ただの置物ではなさそうだ。
何だろう?
思い出した。ご主人様と奥様が話していたことを。
僕がこの家にくる前に黒猫の先輩達が二匹いたそうだ。
二匹とも本当におりこうさんの猫だったらしい。
僕とは段違いだ。
しかし、二年ほど前に相次いで亡くなった。
死因は白血病。
猫の白血病は人間とは違い感染するらしい。
母子感染もあれば、猫同士喧嘩してちょっとした傷でもうつるらしい。
また、白血病のウイルスを持っていても、生涯発病することなく一生を終える猫もいるという。
本当にやっかいな病気だ。
 僕は墓前の前で目を閉じ合掌した。
この土の下に黒猫が二匹、眠っている。
ご主人様と奥様に可愛がられた黒猫が・・・
そう思い、閉じた目を開けた時だった。
背後に強い視線を感じた。
振り向くとトラ模様の野良猫がいた。
僕と目が合うと「フーッ!!」と言いながら全身の毛が逆立った。
僕も全身の毛が逆立っていた。
その時、奥様が「ビビー、ビビー!!」と叫びながら走った来た。
途中で木の棒切れを拾うと思いっきりトラ猫に投げつけた。
トラ猫はビックリして走り去っていった。
奥様はまだ毛が逆立っている僕を抱っこすると頬すりしながら言った。
「だから言ったでしょう、一人で出ちゃ危ないって」
やっと僕は一人で出してもらえなかった理由がわかった。
野良と喧嘩してまた白血病にかかったら・・・
それが奥様の一番の心配だった。


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