日本の「ケータイ」が巻き返しをかけて世界市場に挑もうとしている。
スマートフォン開発に出遅れた日本の携帯電話メーカーは、国内市場で海外勢の攻勢にさらされ、海外展開でも韓国サムスン電子などに大きく後れを取っている。
世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス2012」に世界戦略機種を投入、反攻への足掛かりを探るNECカシオモバイルコミュニケーションズの田村義晴社長に戦略を聞いた。
――スマホ生産を埼玉の工場から海外に切り替えるなど、大規模なリストラを実施した
埼玉で作り続けた場合の生産コストを試算したところ、とてもではないが世界向けには売れないということになった。海外での共同開発・生産に切り替えることで生産コストを約4割削減できる。
――世界市場開拓のカギは何か
基本的には『他にはない」商品を出すということが大事だ。
ただ、過去の海外の通信会社との商談では、製品の反応が良くても『じゃあいくら?』と言われ、『その値段では売れない』と断られることが多かった。いくら商品力が強くても、価格競争力で一定の水準に入っていないと戦えない。
4月からはタイでのスマホ販売を始めるが、もっと早く海外生産に踏み切っていれば、早い時期により多くの案件を取れたと思う。
――「モバイル・ワールド・コングレス2012」には2画面を備えたスマホなど世界仕様のモデル3機種を出展したが、海外での販売戦略は
旧カシオ計算機の販路がある北米市場の開拓が最優先の課題だ。(すでに取引のある)ベライゾンに加えて、AT&Tなどにも積極的に売り込んでいきたい。中南米などの新興国市場にも注目している。
――日本市場も米アップルの「iPhone」など海外製品が席巻している
通信会社の製品調達戦略自体は、メーカーがどうすることもできない。海外の製品よりもいいと言わせればいいだけだ。
スマホの技術はまねしようと思えばいくらでもできる。だからこそ先行することが大切だ。iPhoneの登場で、スマホの形はiPhone型で定着した感もあるが、まだまだ様々な進化の形があると思っている。
――現在の状況が続けば、さらなる業界再編の可能性があるのでは
NECとカシオ日立モバイルコミュニケーションズの事業統合から2年がたち、まずは統合効果がようやく出てきたところだ。次の考えもあるが、一息ついたところでまだちょっと踏み込むという状況ではないのではないか。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年3月5日(月)/3面」