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アップル、中国市場で全面攻勢 販売網強化、iPhone販売2社体制へ向け交渉

2011-10-16 |  アップル



 米アップルが中国市場で全面攻勢をかける。

 2011年4-6月期の中国における売上高は、前年同期の6倍の38億ドル(約2900億円)。66%増の15億ドルだった日本を抜き去り、同社にとって米国に次ぐ最重要市場になった。

 売上高、純利益ともに過去最高を更新するアップル。この勢いを保つには、中国市場の攻略が不可欠。アップルは中国を舞台に”神話”を続けることができるのか。


●週末だけで10万人来店

 「週末だけで10万人が店舗に来訪した。まさに完全に素晴らしいことであり、アップルだけに可能なことだ」

 カリフォルニア州のアップル本社で4日開かれたスマートフォンの新機種「iPhone4S」の発表会。スティーブ・ジョブズ氏から最高経営責任者(CEO)職を引き継いだばかりのティム・クック氏は冒頭、9月に上海で開店したアジア最大の直営店「アップルストア」の画像をパックに胸を張った。

 アップルのおひざ元ともいえるロサンゼルス市の店舗でも、10万人の顧客獲得に1カ月かかっており、中国でのアップル製品の人気の高さを印象づけた。

 上海と同時期に開いた香港の店舗も取り上げ、「初日の売り上げはどの店の初日よりも多かった」と力を込めた。

 発表会の冒頭で取り上げるほどアップルの中国事業は急成長している。中国での売上高はアップル全体の約13%を占めるほどに育った。

 中国のIT(情報技術)調査会社、易観国際によると、4-6月期の中国の多機能携帯端末の販売台数シェアで、アップルは74.3%で1位を独走する。

 レノボ・グループ(聯想集団)系のファンドが出資する北京壹人壹本信息科技(E人E本)の15倍に相当するシェアの高さ。


●ノキア・サムスンを猛追

 スマートフォンでも急激に販売を伸ばしている。米ガートナーの調査によると、4-6月期の中国でのスマートフォンの販売台数シェアでアップルは13.3%の3位。

 中国当局は09年まで携帯電話に無線LAN「Wi-Fi」の搭載を原則として認めなかったが、その規則を緩める際に先行したフィンランドのノキアや韓国サムスン電子を猛追する。

 易観国際によると、これまでに中国で販売されたiPhoneの累計は119万台に達するが、香港などから流入する並行輸入品も多い。

 中国のシリコンバレーと呼ばれる北京市の中関村では香港からの流入品などが平然と売られ、その数量を含めると中国でのiPhoneは200万から300万台に達するとの見方もある。

 人気の秘密について、中関村の販売店店主は「デザインが良くブランドイメージが高いためだ」と分析する。

 海賊版も横行し、アップルの今回の発表会が「iPhone5」に関する内容だとの噂が出回ったため、福建省では最近「iPhone5」と称する端末が出回り、地元当局が61台を押収したばかり。

 ニセ端末は広東省深川から出荷されており、地元当局が「デザインや質感などの類似度は90%に達する」とコメントしたという笑い話もある。

 さらに、浙江省、四川省、雲南省ではアップルストアのニセ店舗が出現し、地元当局の摘発を受けた。

 その熱狂的な人気ぶりは中国政府系のIT大手、レノボ・グループの首脳を震憾させたほど。同社の4-6月期の中国売上高は、28億ドルにとどまる。同社幹部は「まさか中国でアップルに抜かれるとは思わなかった。中国でアップルに追いつくことが喫緊の課題だ」と漏らす。


●中国当局からの制限も

 アップルも2の矢、3の矢を放つ。香港を含め6店舗の中国国内の販売網を年内をめどに4倍強の25店舗まで増やす方向で準備中。

 携帯電話会社も現在の中国聯合網絡通信集団(チャイナユコム)だけでなく、中国電信集団(チャイナテレコム)も加える方向で交渉している。

 6億人を超える利用者を持つ世界最大の携帯電話会社、中国移動通信集団(チャイナモバイル)も、次世代携帯電話サービス「LTE」でアップルとの協力を求めて話し合いを続けている。

 外資系証券アナリストは、「技術力があるアップルと世界最大の顧客を抱える中国移動が組めば、両社に大きなメリットが出る」との見方を示す。

 アップルは、年内にiPhone4Sを中国市場に投入して事業拡大を目指すが、中国は外資のIT企業に強い警戒感を持つ。08年にはIT製品の設計情報の開示を要求。ネットでも検閲を巡って米グーグルと対立する。

 昨年にはアップルの生産委託先の工場で連続自殺が起き、中国メディアはアップルの責任を追及する姿勢を見せた。

 中国のIT企業幹部は、「アップルの存在感が著しく高まれば、様々なサービスで当局から制限を受ける恐れがある」と指摘。中国特有のリスクをいかに回避しながら収益を高めるのか。

 クック氏の舵取りは容易ではない。




【記事引用】 「日経産業新聞/2011年10月6日(木)/20面」


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