携帯電話業界ブログ

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NTTドコモ、防戦一方 端末値下げ不発、iPhoneへの流出止まず

2012-07-07 |  NTTドコモ



 携帯電話の契約獲得競争でNTTドコモの苦戦が続いている。

 1~6月にドコモから他社へ乗り換えた契約者から転入を差し引いた数は58万件強。米アップルの「iPhone」を販売するKDDIとソフトバンクに流出した。

 ソフトバンクが新周波数を獲得して7月から通信品質を改善するなど、ライバルの攻勢にドコモの防戦は続く。


●iPhoneに対抗

 電気通信事業者協会は6日、2012年1~6月の携帯電話契約数を発表した。

 電話番号を変えずに通信会社を乗り換えられるMNP(番号持ち運び制度)による転出入は、KDDIがスマートフォンと光回線のセット割引などを追い風に34万7600件の転入超でトップ。

 ソフトバンクも、iPhoneの好調で24万2300件の転入超だった。

 一方、ドコモは58万4000件の転出超となった。11年は80万件超が転出しており、2年間で200万件の顧客が奪われる可能性もある。

 新規契約から解約を差し引いた純増数は、ソフトバンクが186万6800件と半期ペースで過去最高となった。KDDIは137万7100件、ドコモは77万1300件にとどまった。

 データ通信端末の2台目需要で各社とも契約数を伸ばしているが3年前に50%を超えていたドコモのシェアは6月末に48%とじりじりと後退している。

 ドコモは対抗措置として2月から販促費を積み上げ、スマートフォンの店頭価格を大幅に値下げした。他社から乗り換えると端末価格は0円、もしくは新機組でも1万円前後とした。

 今春から10年以上の契約者向けの端末割引も打ち出し、「多少改善傾向にあるが、解約に歯止めがかかっていない」(UBS証券の梶本浩平アナリスト)。

 ドコモは夏商戦でスマートフォンを17機種投入する。量販店では韓国サムスン電子製の「ギャラクシーSⅢ」が売れ筋との声も多く、「iPhoneに対抗できる」と加藤薫社長は期待をかける。


●雲行きに怪しさ

 しかし、下半期の雲行きには怪しさが漂う。

 7月25日にはソフトバンクが総務省から割り当てられた「プラチナバンド」と呼ばれる新周波数帯の連用を開始。弱みだった電波のつながりにくさが改善する見通しで、通信品質の高さが武器だったドコモヘの脅威となる。

 ドコモは他社に先駆けてLTEを10年12月に開始し、37.5Mビット~75Mビットという通信速度を売り物に先行優位を生かしてきた。

 しかし、9月ともいわれるiPhoneの新機種発売に備え、KDDIやソフトバンクが既存の高速データ通信サービスに加えLTEも年末にかけて一斉に始めるため、通信速度での優位性は薄まる。

 また、KDDIなどが進める固定回線と携帯電話のセット割引や一体営業も事実上不可能になっている。

 ドコモの強みは、遠隔設定など独自サービスや「ドコモショップ」の販売網。スマートフォンの普及によって今後は中高年などパソコンなどに詳しくない顧客層へ市場の広がりが予想されており、初心者層への訴求もカギを握る。

 「自社サービスを組み込めないiPhoneの導入は難しい」とドコモの山田隆持取締役相談役は繰り返す。しかし、今後も転出が止まらなければ、iPhoneの取り扱いや料金の大幅値下げなどドコモがこれまで渋ってきた選択も現実味を帯びる。




【記事引用】 「日本経済新聞/2012年7月7日(水)/3面」


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