HIMAGINE電影房

《ワクワク感》が冒険の合図だ!
非ハリウッド娯楽映画を中心に、個人的に興味があるモノを紹介っ!

武闘派アイドルあらわる『中国功夫少女組』

2005年10月31日 | 中華圏映画
 ネタ一発勝負の映画って、別にキライじゃない。むしろこういうのに限ってチャレンジ精神が沸いてきてパッと購入してしまう。惨敗なときもあるけど、結構いいじゃんって作品も少なくない。今回はタイトルからして企画物くさい『中国功夫少女組』を紹介します。

 大手音楽事務所ではアイドルユニットのメンバー選考オーデションが行われていた。そこで選ばれた4名の一クセもある少女たちにこのユニットの企画者である事務所のダメ女性マネージャーは彼女たちに中国武術を習わせるべく山奥の武術道場へと連れて行く。この"歌って戦える"アイドルユニット《中国功夫少女組》の企画は彼女にとっても生き残りをかけた企画で、なんとしても成功させるべく彼女たちにつきっきりで指導していた。しかし、終わりは突然やってきた。休憩時間に少女たちが読んでいた雑誌のなかに、彼女の事務所からデビューする"歌って戦える"男性アイドルユニット《跆拳道男少組》の記事が出ていたのだ。パクられた!事の真相を確かめるべく彼女たちは急いで会社に戻った。事務所で聞いた話は悲惨な物だった。ソロでデビューさせるからと甘い言葉で釣って、4名の少女の一人にスパイさせ動向を探っていたというのだ。これで女性マネージャーはクビになり、《中国功夫少女組》は自然解散となる。しかし、スパイ役の少女がソロデビューの話がウソだと《跆拳道男少組》に聞かされ、他のメンバーの信頼を失ってしまった彼女は悔しさのあまり彼らに戦いを挑む。しかし4対1では勝ち目がない。最初は冷ややかな目で見ていた他のメンバーも一緒に苦労した仲間同士、耐え切れなくなって彼女に加勢し、見事彼らを倒すことができた。するとそこへなぜか大勢の報道陣が取材にやってきた。状況が飲み込めない彼女らに、女性マネージャーは説明した。実は道場から帰省したとき、倉庫を襲った強盗団を彼女らが撃破していて、その一部始終が防犯カメラに記録されていていたのだという。この偉業により晴れて彼女たち4名は《中国功夫少女組》として芸能界デビューを飾ることができたのだった。

 まるで『ASAYAN』でのモー娘。のオ-デションがネタのようなこの映画。タイトルの《功夫》に惑わされるとあまりのヘナチョコさ加減に肩透かしを食う(編集技術で、見られるレベルの物にはなってはいるが)。やっぱこれはアイドル映画として話の種としてワイワイ鑑賞するのが一番ベターかも。

温泉じゃないよ『鬼怒川』

2005年10月28日 | 武侠映画
芳賀書店の『香港電影百科』は、結構香港映画(クンフー映画や武侠映画)コレクターへの入り口になってるんですね~、いろんなHPやブログを呼んでいてそう思った。あの本には未公開香港映画のポスター・新聞広告集のページがあって、情報の少なかった当時はブルース・リー、ジャッキー・チェン以外の香港映画を知ることのできた数少ない窓口だった。私もこの色取りどりのポスターを見て「いつかは本編を観てやる」と思ったものだ。現在はインターネットやビデオ・DVDの普及によりかなりの本数が日本でソフト化、または輸入ソフトで購入できるようになったが、いまだに最初期のゴールデン・ハーベストのクンフー映画や武侠映画はソフト化がされていない状況だ(大陸版では多少出てるみたいだが)。今回はそんなハーベスト製の武侠映画のなかでも、字面のすごさで一番気になっていた作品『鬼怒川』(70)を紹介します。

 お話はとある門派の兄弟弟子が、敵対する門派の手によって次々と殺されていき、ついには頭領までもが敵の手にかかってしまうこの映画の主人公である頭領の娘は、父を蘇生させることのできる魔法の薬草を求めて、幽霊や怪物が跋扈する魔境へと向かう。かろうじて薬草を入手した彼女だが、その代償として内功を失ってしまう。薬草を狙ったさまざまなトラブルを彼女の協力者のおかげで、回避し家路につくことができたが時すでに遅く、彼女のいない間に敵の門派の攻撃に遭い全員殺されてしまったのだ。怒りに燃えた彼女は薬草を食べ内功を回復させ、家族の仇をとるべく敵の門派の本拠地へと向かう…

日本でも今でも根強いファンがいるアンジェラ・マオの初主演作であるこの映画、彼女の魅力を十分に発揮すべく製作されていて、剣戟場面などの勇ましい姿や、内功を無くしてしまい“普通の女の子”になってしまった時の可愛らしい姿など、すべてが味わえるようになっている。当時のトレンドであったリアルアクションの新派武侠片に、魔物や超自然的な題材が売りの神怪武侠片の要素がミックスされた、ゴールデン・ハーベスト最初期の傑作の一つである。

フィーリングカップル3対3『Kinnaree』

2005年10月24日 | タイ映画
タイ映画ってのはホントに男のロマンを判っている。ひと昔前は香港映画がその立場だったが、今や男性向娯楽映画の本場はタイにあり!といってもよい。血みどろホラーあり、燃えるアクションありと私みたいな高尚な芸術・文芸作よりも通俗娯楽が大好きな人にとってはもう天国のようだ。今回の紹介作品は、そんな健全な男子なら誰だって燃える“ソフトコアポルノ”風タイファンタジー映画『Kinnaree』だ。

タイの、とある森林の奥にある川では、女性型の天使たちが水浴びにやってきていた。そこに天使の羽根を狙うハンターが現れたので天使たちは一目散に天上に戻っていってしまうが、羽根をつけ忘れた一人の天使が逃げ遅れてしまう。ハンターに追われ疲れて倒れた彼女は、ちょうどこの山でオフロードを楽しんでいた青年たちに助けられる。彼女は青年たちにに事のいきさつを語り、彼等に救いを求めた。その頃、心配になって川に戻ってきた二名の天使は、そこで待ち構えていたハンターに捕まってしまい、羽根を奪われてしまう。そこへちょうど青年たちが登場、ハンターとの戦いの末、天使たちと羽根を取り返すことに成功する。天上界に帰れるようになった天使たちは、青年たちに“身体で”お礼をすると、彼等の見守るなか空に向かって帰っていくのだった…

いやぁ~、男にとって都合のいいハナシだわ、こりゃ。冒頭から全裸のお姉さん(天使ね)が川で水浴びしている場面から始まり、主演女優は最初から最後まで露出度高いし(天使たちは頭に羽根飾りをつけていて、外すと全裸になっちゃうのだ)、最後はお礼とばかりに青年たちとHしちゃうし、男のロマン大爆発だ。しかし、全裸といっても出しているのはオシリとバックショットとバストショットだけで、いい所で障害物に隠れて乳首が見えない(見せない?)のがチト不満だが、ソフトコアということでご勘弁を。
 あまりにも頭悪そうな内容なのでこの映画、一回見れば十分です。ちなみに私は倍速モードで観ました(あまりにもトホホなので…)。


扉を開いたこの1冊

2005年10月23日 | ひまじん秘宝館
 いろんな趣味の道に入る前、私はいつもその道の“師匠”の著作を読んで基本的な知識を勉強することにしている、というか、その人の著作が趣味の入口になっている。クンフー映画は日野康一氏や知野二郎氏、非ハリウッド娯楽映画系は大畑晃一氏、ルチャリブレは清水勉氏、そしてSF・ホラーを含む超現実映画は聖咲奇氏である。怪獣映画が好きだった幼少時代から数えるともう随分、聖氏の監修・著作本は読ませてもらったけど、今から紹介する彼が監修した子供向け書籍『世界の大怪獣ものしり大百科』(桃園書房)が今現在の私の嗜好を形成したのではないかと考える。

 この本を最初に買ってもらったのはのは6~7歳頃だったと記憶している。ケイブンシャの怪獣怪人大百科や小学館の怪獣図解入門は当時から読んでいて、結構怪獣好きだったが、この本は海外の怪獣までが紹介されていて今思うとかなり進んだ本だった。金星ガニやイーマ竜を覚えたのはこの本が最初じゃなかったかな?だんだん歳を重ねるにつれこういう本はボロボロになり、いつしかなくなってしまったが、この頃に得た知識は大きくなってからも役にはたった。いろんな特撮関係の書籍を読んだが、いつかもう一度入手したい本ナンバー1だった。それが3~4年前、偶然に古本屋で出てたのを見かけた時、すでに本のタイトルも覚えていなかったが表紙を見た瞬間、数十年前の記憶がパァッと戻って本能が「この本だ!」と叫んだので即ゲットした。帰りの電車の中でパラパラとめくってみると、記憶に残っている本の内容とドンピシャリ!おぼろげではあったがレイアウトまで憶えていたのは自分でもビックリした。とにかくこの本が数十年ぶりに手元に戻ってきたのはすごくうれしかった。

 いろんな趣味を経験し、再び読んでみると、海外の怪獣映画やマイナー系の日本特撮映画まで網羅していたのには驚かされた。メリエスのトリック映画や50年代に大量生産された怪獣映画、日本の新東宝、大映の怪人ものなど、当時はおろか今でも絶対会話には出ないであろうものばかり。そして怪獣以外にもアッカーマン邸紹介やドン・ポスト社のモンスターマスクの紹介など子供向きを遥かに超えた、超現実映画の基本を押さえるうえでの最良のテキストとなっている。咲奇さん、小学校に上がる前の子供にこんな煽情的な内容の本を読ませちゃ駄目だって!でも、未知の世界への指針をつけてくれてホント感謝しています。

ジミーさん、倭寇に出会う『戦神灘』

2005年10月22日 | 武侠映画
 その昔、東シナ海を荒らしまわった日本・中国混成の海賊集団、倭寇のことは社会科の授業でも習ったと思うが、そんな面白そうな材料を香港映画の製作者は見逃すはずもなく、過去に何作も彼らを悪役にしたアクション映画が製作されている。その中でも有名なのがキン・フー監督作、若き日のサモ・ハンが倭寇の親分・博多津を演じた『忠烈圖』(75)だが、"天皇巨星"ジミー・ウォングも自らの主演・監督で倭寇を題材にした武侠映画を撮ってモノにしている。それが今回紹介する『戦神灘』(73)である。

 強い潮風が吹き続ける戦神灘の近くの小さな町では、海を渡ってきた倭寇の襲撃で住人は苦しい生活を強いられていた。そんな町にフラリと立ち寄ったジミーさん演じる白装束の剣士は、倭寇たちの暴挙を目の当たりにし、襲われていた住民を自分の武術で追い払ってしまう。倭寇たちが復讐に攻めてくるのは必至だ。援軍がやってくる数日の間にこちらも戦力を整えておかないと皆殺しである。ジミーさんは倭寇討伐隊のリーダーとなり、対抗しうる人材確保のためヨソに行ってスカウト活動をする。結果、大太刀使い、飛刀使い他、計4名の武芸家がジミーさんの元の集結した。そして町の周りに罠を張り巡らせ、住人に戦い方を教え、迎え撃つ準備が整い始めたとき、何百という援軍を引き連れて倭寇たちが戻ってきた。こうして町の運命をかけた死闘の幕が切って落とされた…!

 倭寇というよりか侍っぽい格好をした姿形や、鎖鎌などの間違った武器の使い方を気にしなければ、ヘタな日本製時代劇よりも面白い《時代劇》になっているこの映画、日本映画好きのジミーさんの趣味が前面にでていて好感が持てる。さすが『新座頭市、破れ!唐人剣』(71)に出ているだけの事はある。今作は黒澤明の『七人の侍』をモチーフにして製作されたようだが、ジミーさん以下の武芸者はあまり目立つことはなく、一人『七人の侍』状態なのはちょっと残念だ。この時代には多くの反日アクション映画が製作されていて、この映画もそのなかの一本なのだが、この映画ほど日本について(っていうか日本映画について)研究された作品はちょっと思いつかない。
           

超貴重!カンボジアの怪奇映画『Snake Girl』

2005年10月21日 | 非ハリウッド娯楽映画
 およそ映画なんてないだろう、と思っていた地域で製作された映画を観ることができた時は、なんだか自分がトレジャーハンターにでもなった気分になる。それが娯楽映画のジャンルであればなおさらだ。今回、以前にタイのオンラインショップ・Thai Net Cityに掲載されていて、ずっと気になっていた映画を入手することができたのでここで紹介したいと思う。

 映画のタイトルは『NG GENG GONG』、蛇女を扱った怪奇映画だ。まぁ別にタイ映画で蛇女を扱う映画なんて珍しくも無いのだが、実はこれ、カンボジア製作の怪奇映画だったのだ。四方田犬彦・著の『アジア映画の大衆的想像力』(青土社)にリメイク版の紹介がなされていて、オリジナルがあるのなら是非観てみたいなぁと思っていたのだ。私は面白いことを期待ししつつ早速観賞してみた。
 
 結果は"まぁまぁ"で、全体的には怪奇映画というよりは、人間の女性と蛇との交いで生まれた頭がメドゥーサ状態の少女と、その母親を追い出した大富豪のイジワル妻の息子との間で生じる恋愛模様を描いた『ロミオとジュリエット』風メロドラマだったのだ。せっかく怪奇な姿をしてるんだから何かしてくれれば面白かったのに。しかし、ラスト近くで霊媒師たちに殺されかかったとき、彼女を守るため何十匹という蛇が現れる場面は痛快だった。現場は大変だっただろうなぁ…
 この映画、蛇少女よりも怖いのは彼女を殺そうとする霊媒師たちだった。儀式のシーンで自分の頬に長い串を突き刺したり、舌をナイフで傷つけたり、生きたウサギの首を特撮でなく本当にハネてみたりと、こっちの方が怪奇じゃないか!とツッコミの一つでも入れたくなる。

 あとでリメイク版はどうなっているんだろう?と調べてみたら、こちらはさすが2001年製作らしくCGなんかを使って今風の映画になっているようだ。今度はリメイク版でも探して観てみようかな…?

ロケット背負ったニクい奴『月からのレーダーマン』

2005年10月20日 | 連続活劇
 昔、『SF怪獣と宇宙戦艦』という子供向けSF特撮映画紹介本があった。そこのヒーローを紹介するページにロケットマンことコマンド・コーディがでていたのを今でも覚えている。ケイブンシャの怪獣怪人大百科で日本の特撮ヒーローは教わったけど、外国の、しかも連続活劇のヒーローを紹介するなんてどういう本なんだ?この本のおかげで海外の特撮ものにも目を向けるようになったことを思えば、実にいい教材であった。ありがとう!聖咲奇さん。

ロケットブースターを背負い、甲冑みたいなヘルメットで顔を覆っているヒーロー像といえば最近の映画ファンならば『ロケッティア』を思い浮かべるだろう(日本じゃコケたからそっちの方が難しいか?)。じつはこのロケッティアのアイデアの源流、1949年に製作された連続活劇『ロケットマンの王』に登場するヒーロー、コマンド・コーディなのだ。私自身はこの第1作はまだ未見なのだが、続く2作目『月からのレーダーマン』(52)は輸入DVDで鑑賞することができた。
 月からやってきた悪い科学者は、大型レーダー砲を地球の(アメリカね)ギャング団に使わせ、破壊の限りを尽くして人々を震え上がらせていた。地球の平和は俺が守る!と科学者にして《宇宙の保安官》を名乗るコマンド・コーディが、地球と月を行ったり来たりしながら月人+ギャング団の悪事を阻止する、というのが大まかなストーリー。月面のシーンやロケットが月に向かうシーンは、低予算のためピーカンの中での野外撮影だったのはガッカリしたけど(連続活劇にリアリティを求める方がバカだった)レーザー砲による破壊場面のSFXは今観ても十分迫力あるし、なんといってもコーディの実物大の人形を使って屋外で撮影した飛行シーンは一番の見せ所だ。

 このコマンド・コーディもの、じつはあと1本あり、1953年に製作された『成層圏ゾンビ団』というのがそれである。『ロケットマンの王』の方は幸いDVDが近々リリースされるようなので(アメリカでの話ですよ)いいとしても、『成層圏ゾンビ団』はビデオも廃盤になってしまったことだしDVD化してくれないだろうか?観てみたいんだけどなぁ。 

刺激が欲しけりゃここへおいで!『チャンネル69』

2005年10月19日 | 韓国映画
 いろいろ新作・旧作が劇場公開やビデオなどで紹介されいる韓国映画だが、「これがまだじゃないの?」とか「この映画、もうちょっと注目されてもいいのに」と思う映画は実にたくさんある。今日紹介するそんな韓国映画は『天国の階段』でおなじみのシン・ヒョンジュンが主演の『チャンネル69』(96)だ。

 ヒョンジュン演じるテレビの報道カメラマンは、ある日大物議員のスキャンダルを盗撮、それをニュースで流そうとするが、上からの圧力で潰されてしまう。真実を報道して何が悪い!ヒョンジュは町で出会った女優志望の女の子と、ゲイカップルのエンジニア、そして《黒い救世主》と名乗る天才ハッカーの青年とで海賊テレビ局『チャンネル69』を立ち上げて、表で流せないスキャンダル映像を次々と放映していく…

 頭脳アクションとでも言ったらいいのか、ヒョンジュン+ゲイのエンジニアと《黒い救世主》とのハッキング対決はコンピュータが苦手な私にもハラハラして楽しめたし、『チャンネル69』の注目を集めるために自身の番組に裸になってニュース原稿を読む女優志望の女の子にはドキッとさせられたし(彼女の裸を病院のロビーで見て、動けなかった患者が起き上がって拍手を浴びる、という小ネタあり)、十分面白い映画なのだけど、未だに劇場・ビデオ公開の予定はなし。『アウトライブ』や『ガン&トークス』は公開されたが、この映画ももっと注目を集めても良さそうなもんだけどなぁ。

ああっ、シュ・ネイさま!

2005年10月18日 | 中華圏映画

 昔の映画を観ていて、当時の女優さんなんかを好きになってしまったことは映画ファンなら一度や二度はあるはずだ。グレース・ケリーとか、マリリン・モンローとかね。本人はさておいて、フィルムには一番輝かしかった状態が真空パックされているので、時代が変わろうともその彼女らが持つ魅力というのは変わらず、絶えず画面から発散している。それで当時を知っている人には甘酸っぱくも懐かしく、知らない人にはとても新鮮に感じるのだ。 私の場合は古い武侠映画を観ていてそのような状態になってしまった。一人お気に入りの女優さんが決まると、他の作品が観たくなりVCDを注文してしまったりと、かなり入れ込んだ思い出がある。そんな武侠映画で見つけたお気に入りの女優さんを紹介しようと思う。  紹介するのは、一番のお気に入りであるシュ・ネイ(雪妮)だ。『別冊太陽 香港映画スター'40s~'90s』(平凡社)よりプロフィールを引用しよう。 

 
  1945年生まれ。主に武侠映画を中心に活躍した。美しい目と口元がきりっとして気丈そうだが、お月様のようにまん丸い顔に愛嬌があり、「甜美人(甘い美人)」や「甜姑娘(甘いお嬢さん)」と呼ばれ親しまれた。初主演作は『碧血金釵』(64)。ほかに『雪花神剣』(64)、義侠アクション『女黒侠木蘭花』(66)、女性版片腕剣士もの『獨臂神尼』(68)など多くの代表作がある。熱心にクンフーを学んだ努力家であり、出演作の多くで美しい立ち回りを披露。可愛くて強い、独特のキャラクターで人気を集めたが、著名な武術指導の唐佳と結婚後は映画界を離れる。  

 
  彼女を最初に見たのは、『天狼寒』(68)という作品だった。ちょっとプライドが高くて、気が強い女剣士の役がシュ・ネイだった。オレンジ色の衣装を身にまとい、長い黒髪を振り乱して悪い男たちを斬り倒すその姿に、私は釘付けになった。元々はラウ・カーリョン(劉 家良)が武術指導をしているというので観てみたのだが、結果的にシュ・ネイに転んでしまった形になってしまった。それから彼女の作品を何本か集めて鑑賞したのだが、彼女の魅力が一番発揮されていたのは夢のように楽しい舞踊的な雰囲気の粤語武侠片の時代で、のちの60年代後半から70年代前半にかけて大ブームとなる、男性中心で、リアリスティックなアクションが売りの新派武侠片ではない。『天狼寒』には新派武侠片の趣があって、シュ・ネイや同時代の女流スター、チャン・ポージュが主演にもかかわらず、目に付くのは男優陣であった。彼女は新派武侠片の流行と共にその活動を結婚(夫となった唐佳は、カーリョンと共にショウ・ブラザース武侠、クンフー映画を支えた人物)という形で終えたのだったのだ。クンフーを習っていたって話なので、もう少し続けていたらその方面でも傑作は生まれたんじゃないかと思えるのだが、ちょと残念かも。


中坊感覚をくすぐるパンナー師

2005年10月17日 | タイ映画
 『7人のマッハ!』(原題『ボーン・トゥ・ファイト』)の日本版予告編ができたので早速観てみました。いやぁ~、頭悪そうでいいっスね。アクションシーン中心に編集された映像に、まるで卒業式のような男性ナレーションがかぶさって、ホントいい味だしてますっ!前作『マッハ!』でトニー・ジャーが大ブレイクしたように果たして今回は、彼の師匠であり、この映画の監督であるパンナー・リットグライに注目があたるだろうか?ちょっと期待しているんだけどねぇ…

 写真とか見ると、何か人の良さそうなオッサンみたいな感じがするが、この人こそ独創的かつ決死的アクションを演出し、我々を興奮のルツボに叩き込んでくれる、タイ映画界が世界に誇れる偉大な"アクションマスター"なのだ。
 彼は1962年生まれで17歳のときに映画界に入る。そして裏方やスタントを経験し、86年に(83年製作説もあり)仲間たちと自主制作で"タイ・オリジナルアクション"を目指した『グート・マー・ルイ』を世に出す。興業成績こそ芳しくはなかったが、この映画を観て少年時代のトニー・ジャーが弟子入りを決意したのは有名な話。現在までに彼が監督・出演した作品は確認しているだけで40本以上あり、そのほとんどがタイの田舎を舞台にしたアクション映画である。

 彼の凄いところはそのアクションにおける"知識"であろう。前回の『PLUK MAN KUN MAA KAA』でも書いたと思うが、どんな動きでも出来るのだ。クンフー的アクションから始まり、ムエタイや中国剣術、タイ式剣術のクラビー・クラボーンなどなど、「どんな動きでもOK!」と言わんばかりだ。
 それと特徴的といえるのは"見ていて痛そうな受け"だろう。『マッハ!』を観た方ならわかると思うけど悪役のみなさんはもちろん、主役のトニーさえ凄い"受け"をするのだ。地面に叩きつけられるだけでなく、柱に当たって回転しながら落ちたり、障害物を壊しながら倒れたりともう、すげぇ!としか言えないのだ。今回の作品も、激走するトレーラーの上から人を落としてみたり、火がついたバイクを走らせトラックと衝突させたりとやりたい放題!

 昔ブルース・リーやジャッキー・チェンが人気だった頃、よくクンフーの真似事をして怪我したとかは聞いたことはあったけど、ここまで凄いことをやれば誰も真似することは無いでしょう。そういえば『マッハ!』を観てムエタイアクションの真似をして怒られたって人、いますか?